コーヒー農家とロースターの直接取引を実現する「TYPICA(ティピカ)」が正式ローンチ、サステナブルなコーヒー流通を目指す

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TYPICA 創業者の後藤将氏(左)と山田彩音氏(右)。山田氏は、オランダからリモートで記者会見に参加。
Image credit: Masaru Ikeda

日本とオランダを拠点に、コーヒー農家と自家焙煎事業者(ロースター)の直接取引を可能にするスタートアップ TYPICA(ティピカ)は6日、都内で記者会見と試飲会を開き、生豆流通の直接取引プラットフォームの正式ローンチを発表した。昨年のプレローンチから1年3ヶ月を経て、ロースター500軒以上が登録し、200軒以上が TYPICA 経由でコーヒー生豆を購入しているという。日本全体にあるロースターのうち、かなりのシェアをつかんでいるようだ。

TYPICA は2020年、バリスタやロースターなどコーヒー業界で18年間の経験を持つ山田彩音氏と、社会起業家の後藤将氏により創業。山田氏らは TYPICA 以前にも、大阪・南船場を拠点に、自家焙煎スペシャルティ・コーヒー豆のオンライン販売や、焙煎機の時間貸しサービスなどを提供してきた。TYPICA では、コーヒー流通の最上流であるコーヒー農家と、消費者に最も近いところにいるロースターをつなぐことで、コーヒー生豆流通の DX(デジタルトランスフォーメーション)を目指す。

コーヒーの世界需要は毎年2%のペースで増加しているが、生産量はそれに追いついていない。その背景には2つの構造的な問題があるそうだ。コーヒーは昼夜の寒暖差が大きく標高が高い地域が生産に適しているが、気候変動により収穫量が減少に転じる農地が増えている。また、コーヒーはコモディティ商品として先物市場で取引されるほか投機対象にもなっており、価格変動がもたらす生産農家への影響が小さくない。生産量が上がれば価格が下がり、農家が品質を向上させても価格には反映されない。

記者会見は、東京・本所のロースター「Leaves Coffee Roasters」で開かれた。同ロースター代表の石井康雄氏が、TYPICA で購入した豆でコーヒーを淹れてくれた。
Image credit: Masaru Ikeda

これらの課題を解決する手段として生まれてきたのが、コーヒー農家とロースターが直接取引するダイレクトトレードと、コモディティ品種だけに頼らずコーヒーの生産地特性を楽しむスペシャルティコーヒーを楽しむ文化だ。アメリカ西海岸のカフェに端を発したサードウェーブも追い風となり世界中にユニークなコーヒーが流通していったが、その恩恵に預かったのは一定以上の経営規模を持つ店舗が多く、コーヒー流通の複雑さから中小規模の生産者やロースターはこの波から取り残されてしまった。

中小業者にとって障害となるのは、生豆を直接取引する際の最小単位だ。生豆は最小で1コンテナ単位(重さ18トン、生豆麻袋で300袋)の取引が求められるため、一度の収穫でそれに満たない生産量しか無い農家や、大量の豆を捌けないロースターは直接取引ができなかった。TYPICA では農家から収穫・発送予定の「ニュークロップ(新豆)」のリストを集めて掲示、ロースターはそれを麻袋1袋(60kg)単位で購入することができる。農家とロースターが直接つながり、フードトレーサビリティも担保される。

コーヒーの直接取引においては、生産国の輸出や日本輸入時の手続、サンプルとは品質が違うものが届いてしまった場合のリカバリなど面倒な手順や想定外の出来事も生じるが、TYPICA ではこれらの問題解決も担うことで、日本中のより多くの中小ロースターにスペシャルティコーヒーを届けることを目指している。同社は日本でのコーヒー生豆の流通から着手するが、今後、台湾や韓国のほか、ヨーロッパのロースターにもサービスを提供していく可能性があるとしている。

試飲会で振る舞われたコーヒーとペアリングスイーツ。
Image credit: Masaru Ikeda

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