Facebookが放つ「仕事向け」メタバース:本当に必要なの?(2/4)

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Image Credit: Facebook

職場のためのVR

(前回からのつづき)バーチャルな世界に身を置くことで「Zoom疲れ」を解消するというコンセプトは別に新しいものでもないし、実践しているのはFacebookだけではない。Microsoftは3月に「Mesh」を発表している。これはARを使った仮想空間で同僚がアバターと対話し、「オブジェクト」を渡すこともできるというものだ。また、ホログラムやアバターなどを使って仮想ミーティング市場の一角を占めようとしているプレーヤーとして「Holopod」や「Imverse」、「Spaceform」などもある。「Spatial」も競合で、Oculus Quest 2でホログラムスタイルのバーチャルミーティングを可能にする製品を提供している。

今年初めにエリクソンは、2030年までに「非物質化されたオフィス(dematerialized office)」が定着するというレポートを発表している。これは、人々が仕事上のやり取りをすべて仮想空間で行うようになることを意味する。また、IDCは最近、ARとVRに対する全世界の支出が、2020年の120億ドル強から2024年には728億ドルに拡大すると予測している。この数字には仕事用アプリ以外のものも含まれているが、世界のAR・VRへの支出のうち、商業的なユースケースが占める割合が高まっていることがわかる。アジア太平洋地域では商用のVR/AR技術への支出が、すでに消費者向けの支出を上回っている。主なユースケースはトレーニングや産業用メンテナンス、小売店でのショーケースだ。

ザッカーバーグ氏は説明会の中で、Facebookの従業員は約半年前からWorkroomを社内会議に利用していると明かしている。一方で、Facebookの従業員のほぼ5分の1にあたる約1万人がVRやAR関連のプロジェクトやテクノロジーに取り組んでいるものの、一般の人々はそれほど興味を持っていないというデータもある。ソフトウェアスタジオ「Myplanet」が最近実施した調査によると、職場でのVR利用は最も受け入れられていない用途のひとつで、回答者の49%がこのアイデアに不快感を示しているという。

一方でゲームや映画、教育、旅行、友人や家族との通話などにVRを利用は賛同者が多い。また、Cuban氏が言及している通り、たとえVRを愛している人であっても必ずしも長期的に常用するとは考えていない。

HashiCorpのイベント・体験型マーケティング担当ディレクターであるJana Boruta氏はVentureBeatの取材に対し、同社が最近実施した従業員サミットのために、ミーティングエリアやアクティビティを備えた仮想世界を作成したことを明かしている。そこで彼女は「デザインされた世界を従業員たちは、2Dのアバターとして実際の顔をスクリーンに映し出しながら歩き回ることができた」と説明していた。

しかし「お互いの近況報告も終えた1、2日もすればログインしなくなってしまった」とその結末を語る。彼女のチームは、人々がこの体験を楽しんでいることはわかったものの、お互いがつながるための永続的な手段としては使えないことも理解したのだ。その上で彼女はWorkroomへの疑問をこう語る。

「FacebookのHorizon Workroomsに対して私が抱いている疑問は次のようなものです。まず、同僚と一緒にVR環境で会議に参加することで、実際に何ができるのか?次に実際の顔や特徴を見るのと比べて、その人のアバターで意味のあるつながりをつくることができるのか?そして最後はこれはただの楽しいツールであっても、実際には気が散ってしまうなどのマイナスの結果をもたらす可能性があるのではないか、ということです」。

機械学習を手がける「Hypergiant」の創業者、Ben Lamm氏もまた、この製品に対して同様の直感的な反応を示している。

「現在、市場に出回っているコラボレーション・ビデオツールに比べて、本当に付加価値があるのかどうかわかりません。この製品の核心はOculus 2のハードウェア販売を拡大し、人々をFacebookの世界にもっと夢中にさせるための販売ツールでもあります。Facebookはこれまで歴史的に数々の失敗をしてきました。私は仕事人生をも支配される覚悟はありませんね」。

次につづく:Facebookが放つ「仕事向け」メタバース:Facebookが抱える問題(3/4)

【via VentureBeat】 @VentureBeat

【原文】

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