コロナ禍が追い風、日本のオンライン診療はどう変わるか?【業界解説・MICIN 原聖吾氏】(後半)

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本稿はKDDIが運営するサイト「MUGENLABO Magazine」掲載された記事からの転載

全産業デジタル化の流れが不可避と認識される中、大きな構造の変化がいろいろな場所で発生しています。MUGENLABO Magazine編集部では業界のダイナミックな変化をゲームチェンジャーたちの解説と共に紐解くシリーズを開始しています。

前回に引き続き、MICIN 代表取締役の 原聖吾さんに登場いただき、広がりゆくオンライン診療の最前線についてお話を伺います。

編集長
前回はサンドボックス制度に(※)エントリーし、感染リスクのあるインフルエンザ診療の現場にオンライン診療の活用を促した事例を紹介いただきました。そう考えると、新型コロナの感染拡大は MICIN の事業に追い風になっているのではないですか?

※革新的技術・サービスを事業化する目的で、地域限定や期間限定で現行法の規制を一時的に停止する制度。

はい、大きな変化のきっかけになりました。新型コロナウイルス感染症が広まってくると、患者さん側は持病があると、「今は医療機関に行くと感染リスクがあるから行きたくないよね」と思い、医療従事者側は診察時に感染リスクを負うのは望ましくないだろうということで、急速にオンライン診療が活用される兆しが出てきました。

ここで、いくつかの厳しい制限が緩和されることになりました。オンライン診療の対象疾患の制限がなくなり、診療報酬点数が増やされ、初診もオンラインでいいですよということで、オンライン診療が進みました。全国にある医療機関10万軒のうち、当社の「クロン」はコロナ前は2,000施設に満たなかったのが、現在では5,000施設超にまで導入が進んできました。

当初、制度緩和は特例的な措置とされていて、コロナが落ち着いたらどう恒久的な形にするかは決まっていませんでしたが、いくつかのポイントで引き続き制度が緩和された形がとられるようです。オンライン診療で初診ができるようになるというところが出てきていたり、他にもいくつか、もともと制度上の制約になっているところは緩和されるようになってきています。

編集長
オンライン診療にとって、ハードルのひとつだった規制緩和は、新型コロナが追い風になって進んでいることがわかりました。他にはどんな課題がありますか?
まだまだ患者さんの認知が必ずしも大きくない。医師側は認知も進んで、導入する医療機関も増えてきていますが、患者さん側がこれをやってみるというところにまだあまり至っていないのが現状です。そのため、オンライン診療を知ってはいるんだけど、やった結果どういう利点があるのか、どういう医療機関で受けられるのか、それを伝える取り組みを進めています。

たとえば、KDDIさんとは「auウェルネス」というアプリと連携させていただき、オンライン診療につなぐサービスを展開しています。我々としては「toC」の広がりをここで広めることで、消費者が最初にオンライン診療に触れてみるというタッチポイントを作り出したいと考えています。一度始めた方は、だいたい、7割ぐらいオンライン診療を継続していると思います。

編集長
医療は、お医者様に診察してもらって終わりではないですよね? その後のフォローについては、サービスを提供されているのでしょうか?
はい、その部分についても「クロン」ではサポートしています。薬局向けのサービスとして「curonお薬サポート」というのがあり、大手薬局チェーンから個店の薬局さんまで、現在2,500以上の薬局店舗に導入いただいています。診療後に薬局でオンラインにて服薬指導をしてもらい、患者さんは薬を自宅で受け取れるようにするサービスを薬局向けに提供しています。

また、将来的にはオンライン診療や薬局向けのサービスを通じて、ビジョンに掲げている「すべての人が、納得して生きて、最期を迎えられる世界」の実現を目指しています。医療へのアクセスを高めるのに加えて、さまざまな医療データが蓄積されることで、病気になる前にアプローチをする価値を提供していきたいと考えています。

KDDI とMICIN、ホワイトヘルスケアとの協業により、「auウェルネス」 ではオンライン診察後のオンライン服薬指導も実現
編集長
高齢化社会になっていく時代、MICIN の需要はますます高まっていくと思います。6年に及んだ苦節を経て、医療側、患者さん側の双方が受け入れるようになってきたオンライン診療の可能性をぜひ応援していきたいと思います。ありがとうございました。

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