月間3000万円がギフトされるアバターカラオケ「topia」、メタバースで広がるクリエイターエコノミー

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本稿は起業家や投資家にトレンドを聞くオンラインイベントTokyo  Meetupの公開収録から。来年1月19日に開催するBRIDGE Tokyoは現在限定の無料チケットを配布中

メタバースという広大な(個人的には「インターネット」を語るのと同じ印象)話題を取り扱う場合、その輪郭をここだと決めてしまうよりも、本質的に多くの人たちが同意する最大公約数的な要素を見つける方が理解が進みやすい気がしています。

本誌のメディアパートナー、VentureBeatも多数のメタバース考察を出していて、特に「Second Lifeに再来したメタバースの波:年間6億ドルを生み出す元祖・仮想世界(1)〜(3)」の記事はお気に入りです。この中にあって著者のDean Takahashiさんはメタバースの重要な要素を次のように記述しています。

「Second Life(2003年にデビューした仮想世界)の生みの親であるLinden Labは今でも健在だ。Linden LabはSecond Lifeで稼いだ仮想通貨を米ドルに換金できる 「Tilia Pay」 と呼ばれるクロスプラットフォームの決済システムを用意することで、現代におけるメタバースの役割を 果たそうと考えている。 これは、小説 「Snow Crash」「Ready Player One」 のように、すべての仮想世界が相互に接続された宇宙、メタバースにとって非常に重要な要素なのだ」。

現実世界と仮想世界をつなぐアバターのような存在がもうひとつの世界で仕事をし、そこで報酬を稼ぎ、そしてそれを現実世界に持って帰ってくるわけです。当然ですが、その稼ぎは現実世界で使えないといけません。Second Lifeにある決済プラットフォームTilia Payはそれを実現している、というわけです。

この仮想世界での経済活動は「クリエイターエコノミー」という文脈でも語られるようになりました。影響力のある個人が仮想世界で表現し、商品を紹介したり、ファンから支持してもらうことで経済が生まれるという流れです。

あるテーマについて投資家と起業家を招いて語る「Tokyo Meetup INTRO」では、先日、メタバースで広がるクリエイターエコノミーと題したセッションを実施しました。登壇してくれたのは博報堂DYベンチャーズの漆山乃介さん、博報堂ホールディングスの加藤薫さん、そしてアバターカラオケで急成長中のプラットフォーム「topia」を運営するアンビリアルの代表、前原幸美さんです。

ここではメタバースの現在地を整理しつつ、現在、topiaでどのような人たちが何を表現して経済活動を作っているのか、その実態を教えていただきました。

メタバースで広がるクリエイターエコノミー

まず、ざっくりとメタバースで起こっている経済活動の方向性について加藤さんから整理がありました。前述した通り、メタバースを定義することは広大なインターネットを語るような話になるので、ここでは特に経済活動に関する軸を整理していただいています。

メタバースに含まれる要素としてはソーシャルネットワークのような繋がり、Fortniteや Mincraftといったゲーム勢、身体的な体験を伴ったXR領域、そして既存の仮想空間で実施されているゲーム配信やライバー配信といったものがあります。現実世界と仮想世界のグラデーションで左右に対比し、縦にビジネスモデル、集客、モチベーションの三つで要素を整理したのがこちらの図です。

リアル世界(仮に実名の世界、としておきましょう)でのインターネットでは広告やコマースが経済活動として介在していました。ここでは注目(アイボール)を集めた人・企業がより大きな経済を作ります。自然とメガプラットフォーマーが成立し、Facebookや Twitterのような大きなインターネットが勝者になりました。これがリアルに根ざした世界観です。

メタバース(こちらを仮に仮想世界、もう一つの人格が存在する世界としましょう)ではそれが投げ銭や個人間売買に変化します。例えばRobloxでは子供たちがアイテムを作り、それを売買する世界が既に広がっています。注目を集めることで成り立っていた商売は、やや形を変えて「熱狂」という別の感情に移ります。目立っているから買うのではなく、共感したから参加する(結果的に何かを支払う)、という世界です。

重要なのはここで言うクリエイターとは、決して大きな影響力を持つインフルエンサーのような存在ではなく、普段何気なく会話している身近な存在が重要である、という点です。これを実現しているひとつのケースがtopia、というわけです。

ユーザーの半数以上が配信者

topiaは、ユーザーがカラオケやざつだんをしながら配信する、ファンコミュニティサービスです。2018年10月のサービス開始(β版)以来、毎月配信者(ライバー)が増加しており9月時点で5,000人を突破、ユーザーが利用する投げ銭アイテムなどの利用で、事業は月商3,000万円ほどに成長しているそうです。

特徴はやはりカラオケ配信です。ゲーム実況のMirrativなどと同様にトークに不安があっても作業配信系は間が持つという安心感がありますし、実際に離れて友人とカラオケするという文化的な慣れもあるため、敷居が低くなっています。

結果としてか配信者の比率もやや面白く、通常、こういったユーザー参加型の配信プラットフォームでは1割前後の人たちが配信者として存在し、それを視聴するその他ユーザーという構造になるのですが、topiaではMAUの半数以上が配信者としても参加しているそうです。利用平均時間は3時間ほどで、Z世代が多く利用しているとのことでした。

配信者と視聴者の比率が拮抗するということは、自然とコミュニティの形も変わります。前原さんは「スター型」と分析していましたが、一人のインフルエンサーに集まるその他多数、という構造ではなく、小さいけれど身近な存在を応援する多数のクラスターが発生しているようです。学園祭のようなノリと表現されていましたが、その辺りに心地よさがあるのでしょう。実際、topiaで得られた収益はそのままそのアプリ内でまた別の推しにギフトをするなど、このコミュニティの中で流通している割合が6割(出金するケースは3割)というお話でした。

参加者の半数が配信者でもあるtopia

クリエイターエコノミーと聞くとどうしてもプロのコンテンツを消費するその他多数、という図を想像してしまいます。もちろんその構造はそのままありますが、topiaのように手軽にもう一人の自分を作り、スマホひとつで仮想世界に送り込むことができるようになったことで、もう少し小さなクラスターに心地よい居所を見つけた人たちが増えているのかもしれません。

topiaでは今後、こういった小さなクラスターで生まれた楽曲を実際のカラオケ配信に載せる取り組みも進めているそうです。お店のカラオケで自分たちが推している友人の楽曲を歌う。そうすることで、またそのクリエイターに還元される仕組みを作る、そういう世界観を目指したいというお話でした。

セッションではそれ以外にも前原さん、漆山さん、加藤さんと一緒にtopiaで広がるクリエイターエコノミーに関する話題を提供していますので、ご興味ある方は今日、17時から配信開始するオンラインイベントTokyo  Meetupをチェックしてみてください。

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