大学研究室や研究機関の活動をDXする「Wizdom」運営、ジェネシアVから4,700万円をシード調達

SHARE:
CC0 Public Domain

大学の研究室や研究機関の研究活動を DX(デジタルトランスフォーメーション)するプラットフォーム「Wizdom」を開発・提供する PRES は24日、シードラウンドで4,700万円を調達したと発表した。このラウンドに参加したのは、ジェネシア・ベンチャーズと名前非開示の個人投資家複数。

大学の研究室や研究機関の活動成果は、論文という形でアウトプットされるが、一つの論文を生み出すまでに平均して500〜1,000ものログデータを取得する必要があるとされる。こういった成果物になる前の生データや中間データは、研究者のローカルの PC に保存されるなど、その形式も所在も属人的であることが多い。

結果として、別な研究者が同様の実験結果が必要な場合、他の研究者の実験結果を活用できなかったり、論文として最終成果物になるまで、上職や同僚の研究者が研究内容を把握できなかったりする不都合が生じる。データが適切な形でデジタル形式で集約されていれば、論文作成にあたっての作業を複数人で並行処理したり、編集したりする作業も効率化できるだろう。

そうして生まれたのが Wizdom だ。あらかじめ用意されたテンプレートに沿って入力することで、情報の粒度が揃い、実験を直接担当した研究者以外の研究者が閲覧しても理解しやすく、また、そのデータを取得したプロセスについても、科学的な正当性を担保しつつ別の担当者が確認や承認を行えるので、データ作成途上における誤りや不正も起きにくい。

PRES では、研究室のワークフロー改善から着手し、ユーザの反応を見ながら、研究室全体の活動の効率化、研究業界全体の活動の効率化へと、Wizdom が解決を目指す対応範囲を拡大していく。将来は、研究資材の購入効率化などにも使える総合的なプラットフォームを目指す。料金体系は明らかになっていないが、研究室が作業効率化で抑制できる人的コストの一部を充当できるモデルのようだ。

研究データがデジタルで流通しやすいものになれば、よりセマンテックなものの方が扱いやすい。PRES がベンチマークの一つに置く Benchling は、ライフサイエンス分野でデータを構造化して扱うことで研究効率を向上させようとしている。Benchling は昨年のシリーズ E ラウンドで2億米ドルを調達し、時価総額40億米ドルをつけユニコーンとなった

電子ラボノート(ELN)や研究室情報管理システム(LIMS)といったデジタルツールはこれまでにもあったが、広く利用されているのは、比較的予算を多く持つ製薬会社の研究所などに限られ、大学研究室や研究機関に浸透しているとは言い難い。研究室のツールとしてマストハブなポジションを確立するには、研究者にとって DX 以上の決定的なメリットが求められているのかもしれない。

Members

BRIDGEの会員制度「Members」に登録いただくと無料で会員限定の記事が毎月10本までお読みいただけます。また、有料の「Members Plus」の方は記事が全て読めるほか、BRIDGE HOT 100などのコンテンツや会員限定のオンラインイベントにご参加いただけます。
無料で登録する