ミツバチによる受粉の定量化、BeeHeroが養蜂家と農家にもたらす戦略的計画:期待のミツバチスタートアップたち(2)

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image credit:BeeHero

ロボット巣箱でミツバチの養蜂を自動化したBeewiseに続いて、2017年設立のカリフォルニア州にあるBeeHeroも同様に蜂の巣箱技術を開発するスタートアップです。2021年10月にシリーズAで1,900万ドルの資金調達を実施して、資金調達した総額は2,400万ドルになりました。

BeeHeroはも前回ご紹介したBeewise同様に養蜂家向けのスマート巣箱を提供しています。3Dプリントされたケーシング内に収容されたセンサーを養蜂箱に配置して、女王バチとコロニーの健康、ストレスをリアルタイムで監視します。人工巣箱によってミツバチの死亡する原因を減らすという点は、アプローチは違えどBeewiseと同様です。

BeeHeroが特徴的なのは、農家向け送粉サービスの精密化に取り組んでいる点です。

送粉とは植物の授受分を昆虫などが媒介することで、農作物も例外ではなく、植物によってその依存度は異なります。これをサービス化したのが「送粉サービス」で、野生の送粉に頼るだけでなく、農家が養蜂家から蜂の巣を借りて授受分を誘導するケースが一般的になっています。しかし難しい点があって、借りてくる巣箱の蜂が授受分を誘導するのにふさわしいのか、また必要な巣箱の量は経験則によるところで判断が分かれていたそうです。

そこでBeeHeroはこの人的な判断をシステム化したのです。

養蜂家の巣箱内にある BeeHero Sensorsは、畑、果樹園からダッシュボードにデータをストリーミングし、ミツバチの健康状態、授受分効率を可視化するだけでなく、リアルタイム受粉活動、受粉の進行状況を開花前から開花にかけてトラッキングする機能を提供しています。受粉活動を追えることで、ミツバチの受粉への貢献をリアルタイムで正確に評価できるのです。

同社によると、この可視性により1エーカーあたり2つの巣箱での受粉が可能になったと謳っています。各果樹園で1エーカーあたりのフレーム数を測定することで、必要なミツバチの正確な量を算出し、特定の受粉ニーズを最適化できた、というワケです。

そしてこの可視化は、収量の最適化と増加を目指す生産者にとって非常に都合がよいものになっているようです。つまりスマート農業への利活用ですが、適切な数のミツバチと木を一致させることによって根拠のある投資検討ができるようになったのです。

次につづく:Appleも支援する「ハチミツ再生医療」SweetBioが開発した創傷ケア製品とは:期待のミツバチスタートアップたち(3)

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