
ここまではミツバチを守ること(Beewise)、またミツバチの送粉(植物の授受分を昆虫などが媒介すること)昆虫としての役割を定量化、最適化する(BeeHero)アプローチで関わるスタートアップを紹介してきました。最後は蜂蜜を使って新しい技術を研究・開発するスタートアップを取り上げます。
SweetBioはテネシー州メンフィスに拠点を置く、蜂蜜を使った創傷ケア製品で応急処置に革命をもたらすことを目指す医療機器のスタートアップです。2021年8月にはRacial Equity and Justice Initiative(REJI)という黒人およびラテン系の人々によるビジネスに総額5,000万ドルを投資するプログラムを通じて、Appleからも投資を受けています。
人間が蜂蜜を治療目的で使い始めたのは古代エジプトや中国で紀元前2,000年~1,000年頃と言われているそうですが、実は現在でも医療現場で用いられることがあります。ミツバチの学名「Apis mellifera」から名付けられ、SweetBioによって開発された創傷被覆材APISもその一種です。糖尿病性潰瘍などの慢性、急性どちらの創傷においても優れた結果が出ることが証明されていて、静脈性下肢潰瘍、モース皮膚がん手術などの手術部位など、さまざまな創傷に適応でき、さらに手頃な価格で処方箋治療として患者に届けることができるのがメリットだそうです。
市販の創傷ケア製品は様々な段階の創傷に対応できるわけではありません。特に糖尿病により生じる創傷治癒遅延にも対応できることからも、多くの症状や創傷レベルに広く対応できる点がAPISの最大の特徴と言えます。SweetBioが公表しているケースによれば、糖尿病持ちで不意に足に傷を負い、足を失う可能性があった患者が5回のAPIS創傷治療によって驚異的な回復を示した事例が報告されています。使用方法はとても簡単で、傷口を消毒し、コラーゲン誘導体、マヌカハニー、ヒドロキシアパタイトを含む液体を被覆材に塗布して貼るだけです。
現在2022年末までにアメリカ全土で利用できるように製品拡大に注力しているとのことで、ミツバチの可能性を広げる事例として日本でも声が聞こえてくる日がやってくるかもしれません。
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