ギグエコノミーのためのWeb3【ゲスト寄稿】

mark-bivens_portrait本稿は、フランス・パリを拠点に世界各地のスタートアップへの投資を行っているベンチャー・キャピタリスト Mark Bivens 氏によるものだ。彼は、日本で Shizen Capital(旧 Tachi.ai Ventures)のマネージングディレクターを務める。本稿は Bivens 氏の許諾を得て翻訳転載した。英語によるオリジナル原稿は、BRIDGE 英語版に掲載している。(過去の寄稿

This guest post is authored by Mark Bivens. Mark is a Paris- / Tokyo-based venture capitalist. He is the Managing Partner of Shizen Capital (formerly known as Tachi.ai Ventures) in Japan. The original English article is available here on Bridge English edition.


Image credit: RudeVC

私は、Web3が、Uber、Lyft、Airbnb、Upwork、Taskrabbit、Fiverrなどのようなギグエコノミー・ビジネスをどのように変えることができるのか、そしてこれらの活動にトークンエコノミクスを適用することは合理的のか、ずっと考えてきた。

この1週間での2つの出会いによって、分散型モデルが、これらの既存プラットフォームの欠点のいくつかに対処できることを確信した。

一つ目は、世界最新のWeb3配車サービスプロジェクトのファウンダーとの出会いである。もう一つは、「抵抗の軌跡の拡大:ギグ・エコノミーにおける支配と抵抗の共構成を理解する(Expanding the Locus of Resistance: Understanding the Co-constitution of Control and Resistance in the Gig Economy)」という、ケロッグ経営大学院で経営と組織を教えるハティム・ラーマン助教授とウォートン・スクールのリンジー・キャメロン教授が発表したギグエコノミーにおける支配と抵抗のバランスを理解するための研究論文である。

ラーマンとキャメロンは、こうしたギグエコノミー・プラットフォームの顧客による5つ星評価システムが破綻していることを指摘している。彼らは、顧客による評価システムが過度に重要視され、ギグワーカーは本質的に「デジタル上司」に従わざるを得ず、評価が確定し公表されると、労働者はほとんど救済を求めることができないと主張する。これに対し、顧客は、ギグワーカーに比べ、ネガティブなレビューの効果を実感することはない。

その結果、ギグワーカーはこうした支配に抵抗する方法を考える。例えば、仕事を受ける前に顧客の行動や前評判を慎重に吟味する、高い評価を引き出すために仕事が始まったら割引をする、あるいはネガティブなレビューを避けるために仕事が完了する前にキャンセルする、といった方法が考えられる。

現在のWeb2の評価システムは、ギグワーカーのビジネスと利害関係のない人々に権限を委譲している。

分散化は、このようなプラットフォームのギグワーカーと顧客の利害関係を改善することができる一つの方法だと考える。

オンデマンドの配車サービスに注目してみると、このコンセプトが革新的でないことに異論はないだろうが、UberやLyftのようなビジネスは持続的な収益性を確保できてはいない。ドライバーの地位が独立したコントラクターではなく従業員であるとみなされるため、プラットフォームは実質的なベネフィットを提供する必要があり、このモデルの経済性は崩壊したのである。しかし、このような規制があるにもかかわらず、ドライバーは、稼ぎを最大化するためにすべてのアプリを常にアクティブにし、単一のプラットフォームに対するロイヤリティを下げながら、生活を維持するために奮闘している。

これらの分散型配車サービスプロジェクトのテーゼは、トークンエコノミクスが壊れたモデルを修復するというものである。具体的なトークノミクスに関する実験はまだ行われ、新しいモデルを検証しているようであるが、私が理解できるところでは、ドライバーとライダーの両方が、サービスを利用する際にプラットフォーム固有のトークンを獲得することになる。トークンの付与は、利用頻度と総利用期間の両方に報いるように構成することで、ドライバーとライダーの両方からのロイヤリティを得ることができる。例えば、プラットフォームで運転する権利がNFTに組み込まれている場合、この権利は譲渡可能で、かつてのタクシーメダリオンのように価値を高めることができる。

もちろん、このようなモデルの実現には、細部まで検証する必要がある。しかし、分散化は、ビジネスのエコノミックモデルに新しい観点をもたらし、再び実現可能なものにする可能性がある。

日本ではまだWeb3をキャッチアップしていないとはいえ、最新の流行としては、ややWeb3の人気が落ちている時期である。私の経験では、あるイノベーションにスポットライトが当たらなくなったときこそ、その変革の可能性を研究・考察する絶好の機会であることが多い。

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