事業開発の苦労、高かったハードル:Ginco 取締役副社長 房安 × ACV唐澤・村上(7)

本稿はアクセンチュア・ベンチャーズが配信するポッドキャストからの転載。音声内容をテキストにまとめて掲載いたします

アクセンチュア・ベンチャーズ (ACV)がスタートアップと手を取り合い、これまでにないオープンイノベーションのヒントを探るポッドキャスト・シリーズです。旬のスタートアップをゲストにお招きし、カジュアルなトークから未来を一緒に発見する場を創っていきます。

ポッドキャストで語られたこと

  • 企業が自前でNFTマケプレを作る理由
  • カストディアル vs. ノンカストディアル
  • ウォレット開発から始めた理由
  • 〝繋がるコールドウォレット〟が誕生するまで
  • 暗号資産業者の求めに応えた高いセキュリティ
  • 非Web3企業がWeb3を始める上で重要なこと
  • 事業開発の苦労、高かったハードル
  • インフラ・ウォレットを開発するユニークな存在
  • あらゆるチェーン&トークンへの対応
  • 「経済の巡りを変えていく」ためのアプローチ

事業開発の苦労、高かったハードル

村上:高いセキュリティを求められるこの領域は、スタートアップがやるにはハードルが高いのではないかというイメージを持つ人もいるのかなと思っています。今のところまで行くにあたって、苦労されたこととか、もしあればお聞きしてみたいです。

房安:苦労はいっぱいありましたね。一番最初に暗号資産交換業者様に対してソリューションを提供したときにハードルが高かったのは、業界の特殊性ですね。ドメインの知識とか、暗号資産ももちろんですが、「金融のお作法」を吸収しながらソリューションに落としていくのは非常に難易度が高くて苦労しました。

村上:それこそ金融庁とかと折衝しながらですか。

房安:我々が直接当局とというより、お客様が当局と話す上でどういう説明があるべきか、どういうサービスであるべきかを考える必要があるので、最初にまず金融庁が出している事務ガイドラインの読み込みから始めました。何が制約で何が課題かという仮説を立てて、お客様に聞いてというのは、ググっても出てこないので、自分で考えてぶつけていくしかない状況だったので、そこのクリアをしていくのは一番最初ハードルでした。

唐澤:案件を本当にデリバリしていく際に、その辺りのチャレンジはすごくあったと思うんですけど、信頼コストじゃないですが、元々、日本では暗号資産自体がちょっと怪しいと見られがちですね。最近はWeb3という表現である意味うまくパッケージングしたと思うんですが。

房安:良い言葉ですよね。個人的には好きです。

唐澤:それまでは何か怪しい暗号資産でアングラな雰囲気を出していたのにWeb3という言葉が出てきてからいきなり陽キャになってきましたよね。

房安:最近はWeb3も若干「Web2が下なのか」みたいに言われる空気もあるので難しいなとは思いますが、個人的にはWeb3って良い言葉だなと思います。「ブロックチェーンゲーム」とか言ってた時代と比べるとかなり伝わりやすくなりました。

唐澤:やっぱりスタートアップとしてセキュリティの要求が非常に高いような領域をやっていく際に、信頼してもらう難しさというか、例えばちょっとしたNFTのコラボやNFTのプロジェクトであれば、大企業もとりあえずスタートアップとイノベーションの一環としてやりますか、となるんですが、(Gincoのビジネスは)基幹システム側にも入ってくる話じゃないですか。そこはどうクリアされたんですか。

房安:最初の一社が入るまではやっぱりハードルは高かったですね。交換業者様の場合ですと、一社でも導入しているということは、当局まで含めてその事実を見てるということになるので、二社目以降はすごくお話はしやすくなりますね。なので、一社目との信頼をどう作るかというところが大変でした。

あとは入れた後もすごく大変でして、金融システムとなると、止まるだけで大問題で、お客さんが口座からお金が引き出せなくなり大変なことになります。ウォレットからお金が盗まれてしまうというだけではなくて、ブロックチェーンのノードからデータが取れないといった状況でも非常に大きな問題に発展するので、ウォレット以外のインフラも含めて、いかに高品質なものを提供するかというのが信頼に繋がります。

海外のサービスだとSLA(Service Level Agreement;サービス品質保証)が不安だという声があって、止まったときにサポートが英語だし、時差もあるから翌日対応だし、短文で帰ってくるし、これだと報告書も書けない。交換業者様以外でもそういった海外のサービスを使う上での心理的ハードル、サポートの不安があったりだとか、そういう中で弊社はそれを国内で高品質に、かつ日本語で、例えばSlackをお客様と作ってすぐに対応するとか、そういうところで品質で満足していただくことは重視してサービスを提供しています。

それに関連してなんですが、よく最近、海外サービスを使うときに、マネージドサービスとかAPI型のサービスが多いですね。例えば、管理画面からブロックチェーンのインフラを立ち上げて、ノードを立てて、データが取れるようになりますとか、そういうサービスが多いんですが、やっぱりリージョンの問題とか、日本法人が無いとかの問題で法務から止められるとか、そういうケースも大企業さんの中ではあります。

日本でインフラを、ウォレットをやっているところはどこだろうと言った時に、わりと弊社が候補にあがりやすいです。同じ領域でやっているベンチャーさんはあまり多くないので。

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