Snapchatが「モバイル版ChatGPT」My AIを公開、広がるサービスへの活用

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ピックアップ:Say Hi to My AI

ニュースサマリー:「Snapchat」を運営するSnapは2月末にチャットAIの「My AI」を発表した。有料サービス「Snapchat Plus」向け機能としてリリースされる予定だ。Snapchat Plusはカスタム通知音やカラフルなカメラ枠、ストーリーの有効期限をカスタマイズする機能を月額3ドル99セントで提供している。The Vergeが伝えている内容によると初期はSnapchat PlusでのみMy AIを利用できるが、最終的には7億5,000 万人の月間ユーザー全員が利用できるようにしたいという。

話題のポイント:先日、とある取材(こちらはまた後日公開)で「GPT-3、ChatGPTの勢いは技術面というよりソーシャルメディアの掛け合わせで予想以上のものになった」というコメントをいただいたのですね。機械学習やディープラーニングの技術進歩が目覚ましいのはこれまでにもずっと言われていたことであり、例えば私たちメディアの身近なところでは音声書き起こしAIのPixelシリーズや翻訳のDeepLなどがすでに実用のレベル(というか必須)になっています。

ChatGPTの凄さはこういったある仕事に特化された使い方ではなく、言語での自然な対応を幅広い分野に対応させた点だと思います。特に懸念されていた「多数の人にとって不利益かつ有害な回答」を高い精度で排除した点はどの方にとっても衝撃的だったようです。

で、こうなると次に始まるのがAPI活用です。すでにNOT A HOTELはオンラインコンシェルジュを開発中ですし、顧客対応メール共有の「yaritori」もGPT-3を使った文面自動作成機能をリリースしました。このAPI活用は加速度的に広がる可能性があります。

Snapはこれまで面白ソーシャル(一番最初は「消える」コンセプトでした)で一気に知名度を獲得し、世の中のソーシャルメディアに「ショート」という概念を持ち込むなどうまく第三極を作ってきましたが、TikTokの躍進やAR機能に手を出し始めたあたりから少しネタ切れ感もありました。まあ、これはソーシャルメディア全般に言えることかもしれませんが。

今回リリースしたMy AIは「モバイル版 ChatGPT」みたいなサービスで、文章で話しかけて天気を聞いたり親友への誕生日プレゼントのアイデア出し、週末のハイキング旅行を計画したり、夕食のレシピを提案したりといった使い方ができるようです。しばしば簡単な調べ物を人に聞いたら「ググれカス」という汚い言葉を返された、なんてケースがありますが相手はAIです。どんなささやかな質問にも嫌な顔せず答えてくれます。これこそAIの良さですね。

Snapのバージョンは応答できる内容がより制限されているようで、悪口や暴力、性的に露骨なコンテンツ、または政治などの危険なトピックに関する意見には応答をしないようにトレーニングしているとのことです。あと学生がよく使うということもあり、一部の学校でChatGPTが禁止されていることを背景に学術的な論文などの執筆も禁止しているみたいです。ただ、この辺りはあくまでサービスとしてのポリシーなので、ツールは使う側のリテラシにどんどん委ねられることになるんでしょうね。

ちなみにSnapはOpenAIの「Foundry」を利用しています。このFoundryはGPT-3.5(現在の3の次のバージョン)などの新しい機械学習モデルを実行できるコンピューターリソースと開発者プラットフォームのことで、「大規模なワークロードを実行する最先端の顧客」向けに2023年2月から提供されています。Snapがスマートフォン上でGPT技術をベースとしたチャットボットを動作可能にしているのは、このOpenAIのFoundryを利用しているからなのだそうです。

さて、国内でもGPTベースのサービスがどんどん出てくると思います。倫理懸念や間違いなどのリスクはありますが、それを上回るメリットの方が大きいです。次はどこが動くのか楽しみですね。

共同執筆:佐々木俊

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