ビッグテックを離れ、次々とChatGPT競合スタートアップを起業する中国のAI専門家たち

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左から:Wang Changhu(王長虎)氏、Jia Yangqing(賈揚清)氏、Kai-Fu Lee(李開復)氏

ChatGPT の世界的な大流行により、中国の AI 専門家やインターネット起業家の間で、ChatGPT スタイルのモデルの変革の可能性に取り組むと主張する独自のスタートアップを立ち上げる動きが活発化している。

本稿では、最近 AI 技術の新事業について発表した中国のテックエキスパートを紹介する。

Meituan(美団)共同創業者 Wang Huiwen(王慧文)氏

Meituan(美団)共同創業者 Wang Huiwen(王慧文)氏は、2月に Guangnian Zhiwai(光年之外)という AI スタートアップを立ち上げ、すぐに Meituan の現 CEO Wang Xing(王興)氏の支援を獲得した。このスタートアップが、AI インフラ企業である OneFlow Technology(一流科技)を株式交換により買収すると、現地メディアの Caixin(財新)が3月27日に報じた。

OneFlow は買収した会社の名前であると同時に、深層学習フレームワークの製品名でもあり、競合には Baidu(百度)の「PaddlePaddle(PArallel Distributed Deep LEarning)」や Facebookの「PyTorch」などがある。

この買収は、マイクロソフトが支援する ChatGPT の親会社である OpenAI の中国版を作ろうという、Wang Huiwen 氏の公然の野心を示している。

AI 分野への参入を公言してからまだ2カ月も経っていないにもかかわらず、Wang 氏はすでに、長年の盟友である Meituan の CEO Wang Xing 氏から、Guangnian Zhiwai のシリーズ A ラウンドへの出資と、同社の取締役に就任する約束を取り付けている。

Wang 氏は2月、「私は現在、AI 技術を理解しておらず、学ぼうとしている」とマイクロブログプラットフォーム「Jike(即刻)」への投稿で書いた。その後、彼はソーシャルメディア投稿を更新し、新しく立ち上げた会社には、インフラ出身の共同クリエイター、アルゴリズム出身の共同クリエイター、そして自分を含む3人の共同創業者がいるというニュースを発表した。

元 ByteDance AI ラボ(字節跳動人工智能実験室)代表の Wang Changhu(王長虎)氏

ByteDance AI ラボ(字節跳動人工智能実験室)の元ディレクターである Wang Changhu(王長虎)氏も、ジェネレーティブ AI のためのビジュアルマルチモーダルアルゴリズムプラットフォームを使って、ジェネレーティブ AI に特化した新ベンチャーを立ち上げると報じられている

ビジュアル関連の方向性は、Wang 氏の専門性と合致する。彼は ByteDance(字節跳動)在籍時にビジュアル、汎 AI、ビジネスソリューションを開発した経験があり、それらは同社のニュースアグリゲーションアプリ「Jinri Toutiao(今日頭条)」や短編動画プラットフォーム「Douyin(抖音)」「TikTok」に応用された。

また、北京にある ByteDance に在籍中、アプリ中の「下品なコンテンツ」に対抗するため、画像とテキストの認識をサポートする「Lingquan(霊犬)」という AI ツールの立ち上げに大きな役割を果たした。

ByteDance で4年間働いた後、2021年末に退職し、中国の大手不動産デベロッパ Longfor Group(龍湖集団)に入社し、AIoT AI エンジンチームを担当するジェネラルマネージャーに任命された。

元 Google China 社長 Kai-Fu Lee(李開復)氏

著名な AI 人であり起業家でもある Kai-Fu Lee(李開復)氏は、ChatGPT の中国版だけでなく、AI を搭載した生産性ツールのエコシステムを構築するために、「Project AI 2.0」という新しい AI スタートアップを設立した

Leee 氏は、ChatGPT をディープラーニングの大きなブレークスルーと捉え、AI がほぼすべての既存のアプリケーションを再構築する機会を提供すると考えている。

テック大手でチームを率いてきた複数の技術専門家が、Lee 氏が新たに立ち上げたプロジェクトへの参加に関心を示していると伝えられている。

元 Alibaba(阿里巴巴)の AI 専門家 Jia Yangqing(賈揚清)氏

AI 分野の著名人であり、深層学習フレームワーク「Caffe」の作者 Jia Yangqing(賈揚清)氏が、自身のスタートアップベンチャーを目指すため、Alibaba(阿里巴巴)の副社長を辞任した。Hua 氏の起業の方向性は、AI インフラに焦点を当てるとのことだ。

AI とクラウドコンピューティングの専門家として知られる Jia 氏は、Google と Meta に勤務した後、Alibaba に入社した経歴がある。また、Google と Meta の時代には「PyTorch」と「TensorFlow」の開発を主導した。彼はカリフォルニア大学バークレー校でコンピュータサイエンスの博士号を取得すべく勉強している間に、今や Adobe、Microsoft、Nvidia などテック大手複数社で広く採用されているオープンソースの深層学習フレームワーク Caffe を書いた。

Kuaishou(快手)の元リーダー Li Yan(李岩)氏

Kuaishou(快手)のマルチメディア理解部門の元リーダー Li Yan(李岩)氏は2022年、勤務を始めてから7年で Kuaishou を去り、Yuanshi Technology(元石科技)を設立して大型マルチモーダルモデルを開発している。Yuanshi Technology の存在は今月初め、地元メディアの 36Kr(36気)が確認した

Li 氏は当時 Kuaishou の AI 技術開発の中核と見られ、2015年末に当時の CEO Su Hua(宿華)氏の支援を受けてディープラーニングチームを結成した。

同チームの当初の目標は、アルゴリズムを使って海賊版や不快な動画コンテンツを検出することで、その後、音声、テキスト、画像などさまざまな種類のアルゴリズムモデルの開発へと焦点を広げていったという。

JD Cloud & AI(京東智聯雲)前社長の Zhou Bowen(周伯文)氏

JD Cloud & AI(京東智聯雲)部門の前社長 Zhou Bowen(周伯文)氏は、2月26日、自身のスタートアップ Xianyuan Technology(銜遠科技)に参加する「AI が世界を変える」という強い信念を持つ優秀な人材を探していると書き込んだ。

その3日後、設立から2年も経っていない北京の同社は、Qiming Venture(啓明創投)がリードしたエンジェルラウンドで数億人民元(数十億円)を調達したと発表した。

Zhou 氏は資金調達を発表した WeChat(微信)の投稿に次のように書いている。

ChatGPT に対する中国の答えは、必ずしも OpenAI の模倣者を必要としないが、AI 技術と業界のデジタルインテリジェンスの発展を加速させるための明確なビジョンを持つチームを必要とすることは確かだ。

【via TechNode】 @technodechina

【原文】

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