9億人の顔を学習、ネット上から4秒で写真を探し出す「PimEyes」——盗撮追跡サービスに寄せられる賛否両論

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Image credit: PimEyes

盗撮された写真を追跡できないという問題を解決するため、スタートアップの PimEyes は Googleの 画像検索機能よりも精度が高く、写真で人を検索することに特化した検索エンジンを開発した。関係者によると、現在、検索システムの精度は90%とのことだが、画像検索ができる便利なサービスであるものの、個人情報の流出や技術的な悪用など賛否両論があるようだ。

我々の周りの誰もが何らかの形で写真を盗撮された経験があるが、さらに悪いことは、盗撮さえたことにすら気づいていないということだ。

ポーランドに拠点を置くスタートアップ PimEyes は、AI 技術を使って、インターネット上に散らばるすべての写真を4秒で見つけ出し、それらを削除するための文書の作成を支援する。CNN の Rachel Metz 氏は、10年前に友人の結婚式で撮った写真を PimEyes のおかげで見つけることができ、それには彼女の横顔だけが映っていて、写真の所有者を正確に特定できたという。

インターネット上の写真を効果的に検索できるツールがないことがわかり、顔認識技術を使った逆引き写真検索エンジンを作ることにした。(PimEyes 創業者の Lukasz Kowalczyk 氏と Denis Tatina 氏)

Kowalczyk 氏と Tatina 氏は当初、写真が簡単に流通するようになったことで、自分たちの知らないところで、自分たちの写真がインターネット上のどこかに掲載されていないか、ということに興味を持った。例えば、Kowalczyk 氏は、金髪で、青眼で、細長い顔の少年だ。画像検索すると同じ特徴を持つ写真が多数表示されるが、その中に Kowalczyk 氏の姿はない。

PimEyes の関係者によると、同社の画像検索システムの精度は90%に達している。Google の画像検索では無関係な画像が見つかることが多いが、PimEyes ではこの問題を改め、アメリカを中心に世界中の画像付きの人物検索が可能だという。

なぜ、4秒で人物写真を検索できるのか?

PimEyes は、1億5,000万のウェブサイトから9億人の顔を集めた大規模なデータベースを構築、顔を含む公開写真を継続的に検索し、1日あたり最大1TBの画像を処理している。

自分の写真がどこに散らばっているかを調べるには、自分の写真をプラットフォームにアップロードするだけだ。PimEyes の検索エンジンは、ユーザのアップロードした写真と PimEyes が過去にオンラインで見た写真が一致すると、その写真や写真へのリンクとともに、PimEyes が最もユーザに似ていると考える画像をユーザに表示する。

Image credit: PimEyes

どうマネタイズしているのか?

PimEyes では、無料で利用している場合、検索結果の一部しか見ることができない。通常、一部の写真を見てしまうと、他にもどこかで自分の写真が掲載されているのではないか、と気になるはずだ。有料サービスでは、次のような機能が提供される。

  1. 無制限検索
    無料機能では、1日に25回しか写真を検索できないため、Web 上に散在する写真をすべてカバーするには不十分かもしれない。
  2. アクティブ検出通知
    PimEyes が、ユーザの顔と一致する新しい顔を Web 上で発見した場合、メールでユーザに通知してくれる。
  3. 取り下げ依頼の作成と代理送信
    Web 上に掲載された写真を見つけた後、ユーザが削除を希望する場合、PimEyes が80件までの DMCA および GDPR に沿った通り下げ依頼を作成し、代理で送信する。
  • DMCA はアメリカの著作権法で、著作権者またはその代理人から侵害の疑いのある通知を受けた後、直ちに不適切なコンテンツを削除した場合、プラットフォーム(Facebook や通信事業者など)は著作権侵害の責任を免除される。
  • GDPR は EU のデータ保護規則で、ユーザは自分の写真を所有する当事者に、自分に関するすべての情報を削除するよう要求できるため、ユーザは Google や Apple などのテック大手に自分のデータの完全削除を要求できる。

写真で人物検索、利便性をめぐる4大論争

PimEyes は画像検索の利便性を提供する一方で、転職先の新しい雇用主があなたの過去を調べたい場合、偏執的な元カレがあなたをストーキングしたい場合、あるいは道行く見知らぬ人があなたの写真を撮り、オンラインであなたを見つけた場合にも利用できてしまう。PimEyes は、以下の点でも議論を呼んでいる。

  1. 個人情報の流出
    PimEyes がインターネット上で写真を見つけるためには、ユーザが自分の写真をアップロードする必要があるが、これらの写真が PimEyes によってアクセスされ、今後の PimEyes 検索の参考データとされているかどうかは不明だ。
  2. 逆ブラックメール
    PimEyes の検索結果から自分の画像をすべて隠すことを望むユーザは、PimEyes のサービスを使って他人が自分を見つけられないようにするプランに加入する必要がある。女性ユーザの中には、PimEyes がリベンジポルノを排除すると言いながら女性からお金を強奪していると感じる人もいる。
  3. 技術的な悪用
    EU の 現行 の GDPRでは、顔認識データの利用を本人以外の写真に限定することが明示されているが、PimEyes のプラットフォームでは、規制の存在を示すウィンドウが表示されるだけで、誰でも簡単に回避できるため、抑止効果はない。さらに、PimEyes は、1ヶ月に最大1億回の検索を行うユーザもいるとしているが、一般人が1ヶ月に1億回以上自分の写真を検索するとは考えにくく、おそらく多くの人が PimEyes の技術を使って他人の写真を探していると思われるが、PimEyes はこれに対して何の制裁を加えることもできない。
  4. 東洋人の顔認識の精度
    PimEyes の技術は90%の精度を誇っているというが、実際に記者が自分の写真をアップロードしたところ、PimEyes のシステムは記者と同じ髪型の写真しか見つけることができず、検索結果も日本人の顔が中心だったが、西洋人の顔をランダムに取り込んだ場合は格段に精度が高かった。PimEyes の顔検出システムは、東洋人の顔を検出する能力が低いと推測される。

こうした懸念に対して、PimEyes は、ユーザの自分に関する情報を検索・監視・保護できるようにしているだけで、決してユーザに自分以外の情報を探すよう促すことはなく、技術の誤用はユーザ個人のものであると主張している。写真に付けたタグだけを保管し、一致する写真が出たときにデータベースから写真を検索するために使用し、写真のあるページへのリンクだけを提供しており、写真に映っている人の個人情報を提供することはないとしている。

PimEyes は我々に技術を提供してくれるが、プラットフォームがプライバシーを保護できない場合、ユーザはネット上で自分の写真を見つけるためにどれだけのリスクを負うことになるのか、よく考える必要があるだろう。

【via Meet Global by Business Next(数位時代) 】 @meet_startup

【原文】

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