「ChatGPT」第一次ブームは終了?——サイト訪問者が前月比1割も減少した理由とは

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昨年11月、OpenAI が「ChatGPT」を発表すると、AI の波が次々と押し寄せただけでなく、Microsoft 創業者 Bill Gates 氏に「人生2度目の技術革命」と称賛させるきっかけにもなった。

しかし現在では、1億ユーザという最速記録が Threads によって破られただけでなく、アクセス解析会社 Similarweb によると、ChatGPT の世界からの訪問者数は、5ヶ月間にわたって毎月減少してきたのに続き、6月には初めて9.7%減少し、アメリカでは iOS アプリのダウンロード数は6月に38%も激減した。同様の状況は、Microsoft の「Bing」や Google の「Bard」でも見られる。

専門家によると、ChatGPT の回答品質が低下していること、多くの企業が従業員の利用を禁止していること、機密漏洩を恐れていることなどが要因だという。

ChatGPTの回答品質の低下、多くの企業が利用を禁止していること等が利用者減少の一因となっている。

ChatGPT のトラフィック推移

今年6月、ChatGPT は初めて9.7%のマイナス成長となった。アクセス解析会社 Similarweb の統計によると、世界からの ChatGPT 訪問者数の月間成長率は、131.6%(1月)、62.5%(2月)、55.8%(3月)、12.6%(4月)、2.8%(5月)と、今年最初の5ヶ月間で減少している。また、Bank of America のアナリストは、iOS 向け ChatGPT の6月のアメリカでのダウンロード数が5月に比べ38%急減したと指摘している

Similarweb によると、OpenAI だけでなく、Microsoft の「Bing」、Google の「Bard」、そして新たに誕生した Character.AI も、訪問者数が徐々に減少している。確実に言えることは、ChatGPT はもはやヒットしていないということだ。

UBS のレポートによると、ChatGPT はサービス開始からわずか2ヶ月で月間利用者数が1億人を突破した。複雑な会話を行い、詩を書き、プログラムを作成し、専門的な試験に合格する能力で、チャットボットは一般ユーザと AI の専門家の両方に感銘を与えた。技術専門家の間では、ChatGPT は史上最も急成長したコンシューマ向けアプリとみなされており、その後、Google と Micosoft のトップが AI をコンピュータサイエンスの次の革命と位置づけ、ビッグテック間の拡大競争に火をつけた。

しかし、Washington Post によると、利用者数の減少が目立つのは、アメリカやヨーロッパでは学年が終わり、宿題や小論文のために利用していた学生たちが夏休みに入ったからだと考えるアナリストもいるという。データサイエンティストの Sam Gilbert 氏も、学業や宿題は ChatGPT の最も一般的な利用の一つだと述べている

客観性に欠ける回答

ChatGPT がローンチされた時は素晴らしかったとしても、ここ数ヶ月でジェネレーティブ AI の問題点が明らかになってきた。ChatGPT はしばしば偽の情報を正解として捏造するだけでなく、これを生産性向上のため取り入れたユーザの中には、「ChatGPT の回答は時間が経っても改善されず、特にプログラムの記述に関しては悪化している」と言う人もいる。

専門家によれば、OpenAI などの企業は、これ以上の誤った情報を生み出したり、テクノロジー製品にバイアスを注入したりしないように、チャットボットの機能をダウングレードしているという。しかし、回答の質の低下は、単に OpenAI がチャットボットの運用コストを削減しようとしているだけだと考える人も多い。

それだけでなく、Washington Post は、チャットボットに会社の社内情報を入力すると機密漏洩につながるという懸念から、サムスンを筆頭に、多くの企業が従業員が職場で ChatGPT を使うことを禁止していると指摘している。

高い運用コスト、ブームを脱する AI

Engadget は、ユーザ数の減少の理由にかかわらず、OpenAI はパニックに陥っておらず、むしろ喜んでいるかもしれないと指摘した。CEO の Sam Altman 氏は以前、ChatGPT の運用コストは「気の遠くなるようなもの」だと語っていた。

Google の AI 研究者 François Chollet 氏によると、過去にインターネットが普及したり、iPhone が発売されたりしても、夏休みなどの季節要因で利用者が停滞することはなかったという。ChatGPT の成長が季節要因で鈍化するのであれば、そもそもブームが起きていないのかもしれない。

【via Meet Global by Business Next(数位時代) 】 @meet_startup

【原文】

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