育児ストレスの解消に挑むスタートアップなど8社登壇ーー採用CRMやAI電話などMonthlyPitch全社ご紹介

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創業期の起業家向けピッチステージ「Monthly Pitch」は7月12日に72回目となるイベントを開催しました。これまでに登壇した企業は537社で、今回は8社が新たにステージに登壇しています。会場とオンラインに集った投資家に向け、起業家たちはサービスのプレゼンテーションを披露しました。

本来は投資家と起業家のみの招待制・非公開イベントですが、本誌BRIDGEではメディアパートナーとして参加しております。本稿では登壇したスタートアップの内、公開できる7社の情報をお届けいたします(一部のピッチ内容は非公開となっています)。

メタバースに設置できる街頭ビジョン「Ad-Virtua」by アドバーチャ

水野征太朗さん

Ad-Virtua(アドバーチャ)は、メタバースのゲームやアプリにバーチャルな街頭ビジョンを設置することで、広告収益のマネタイズを可能にするプラットフォームです。広告の設置が容易で、開発者や広告主の双方にとって便利なサービスになっています。Gartner の推計によれば、2026年には25%の人が1日1時間メタバースで過ごすとされており、メタバース内での広告ニーズも増加すると考えられるので、その需要に応えるような提案を行っています。

ビジネスモデルとしては、広告主から広告費を受け取り、その一部をメタバース開発者に収益として還元する形態を採用しています。ユーザーに嫌われない広告を提供することを重視しており、ユーザーはゲームプレイを中断することなく広告を表示することができます。当面は、個人開発者やインディーズゲーム開発者へのアプローチを重視し、ブラウザやスマートフォンゲームの獲得に力を入れていく予定です。将来的には、大企業や有名タイトル、VRデバイスなど他の用途にも拡大し、広告主の獲得を目指しています。

ITで育児をDX、一時保育・習い事・どこでも保育園を提供「あすいく」by grow & partners

幸脇啓子さん

あすいくは、「育児を自由で楽しいものにする」ことをビジョンに掲げる一時保育の検索予約プラットフォームです。アンケート調査では、親が1人の時間を持てないことが育児の最大のストレスであることがわかりました。しかし、子供を預けることに罪悪感を感じる母親も多く、この問題を解決するために保育を子供のための時間にするプログラムを提供しています。

同社はJR東日本と協力し「駅いく」というプロジェクトを行いました。駅は子供たちにとって最高のアミューズメントパークであり、子供たちは駅員や保育士と過ごす3時間を楽しんでいます。また、東京メトロと協力して室内型のプログラム「メトいく」を提供しており、子供たちは遊びながら色や形を学んでいます。さらに、月面探査ベンチャーとの「月いく」では、子供たちは月面探査ローバーを操作しながら科学について学んでいます。

一時保育の検索予約プラットフォームとしてスタートしましたが、現在はそれに加え、習い事・体験保育やどこでも保育園といったプログラムも提供しています。保育士が保育する安心感や、長時間にわたり親が自分の時間が確保できることで評価を得ており、親の満足度も高いそうです。また、これらは一時保育よりも高い利益率を上げています。

また保育園ネットワーク、保育士のネットワーク、魅力的なコンテンツ、使いやすいプロダクトを持つ強みを持っています。子供の人口は減少傾向にあるものの、教育市場は拡大傾向にあり、今後のニーズはさらに拡大すると考えられます。あすいくでは今後、AIを活用してオペレーションを効率化することで、さらなる成長を目指しています。

データとLINEで新卒採用を変革する採用CRMツール「Onn」by ワークサイド

秋山貫太さん

インターンシップの普及や採用の早期化などを背景に新卒採用は年を追うごとに困難になっており、新卒採用は年中忙しく、採用計画の達成が難しい状況にあります。また、学生の数が減少し、複数の内定を持つ学生が増えたため、内定辞退が頻発しています。さらにコロナ禍によりオンライン面接が増え、内定を承諾した学生が辞退するケースも増えています。 学生側の力が強くなり、企業側にとっては不利な状況です。

ワークサイドはこの問題を解決するために採用CRM「Onn」を開発しました。採用CRMは、企業と学生がLINEでやり取りできます。また、リレーションを強化する機能を備え、リスクを可視化して承諾率の向上を図ることができます。さらに、属性ごとにコンテンツ配信が可能で、個別のメッセージが送れます。企業は学生にURLのリンクやQRコードを提示し、学生は氏名、メールアドレス、パスワードの設定だけでサインアップが完了します。

学生にとっては、普段使っているLINEだけでコミュニケーションが完結するため、電話やメールを多用しない現在の学生ともスムーズなコミュニケーションが可能です。また、LINE画面にリッチメニューを設け、学生の属性に分けて画面の出し分けも可能です。今年3月からPoCを開始し、主に大企業で利用されていて電話が必要無くなった、内定辞退の低減や承諾率の向上、ATSから移行したいといった意見が寄せられているそうです。

会話をサマリーしてくれるAI電話「ピクポン」by pickupon

小幡洋一さん

ピクポンは、AIが顧客の話した内容をSalesforceをはじめとするSFAに自動で入力し、分析するサービスです。営業活動の効率化によって情報共有の重要性が増し、入力作業の負担も大きくなっています。特にコロナの影響でこの問題はさらに深刻化しています。ある中小企業のインサイドセールス担当者が、業務の17%の時間をSFAへの入力に費やしているというデータがあるそうです。また、その入力内容や正確性に満足していないマネージャーもいます。

ピクポンのアプローチはシンプルで、人が行っていた入力作業を機械が代わりに行います。インサイドセールス担当者の会話内容は自動的にSFAに記録され、マネージャーはより質の高いマネジメントを行えるようになります。また、フォローアップするセールス担当者はヒアリング内容を把握した状態でクロージングに進められ、受注率の向上につながります。顧客の課題感はSlackなどに共有され、開発チームも顧客ニーズを把握しやすくなります。

現在、ピクポンのサービスはスタートアップ企業を中心に導入され、大手企業でも採用例が増えています。継続率は高く、課金ID数も急速に増加しているというお話でした。

競合他社と比較すると、ピクポンの特徴は営業セールスの分析に特化している点や顧客の発言分析に注力している点にあります。また、ピクポンは入力のインターフェースを提供している一方、他社は後処理に特化しています。そんな特性からピクポンは、営業活動の分析をしたいチームや顧客の意見を把握したいユーザーチーム、特に、ソリューションセールスや高額商材、新規事業を展開している企業にとって適しているそうです。

イヤホン型脳波計+ニューロフィードバックで、メンタル課題に寄り添う by VIE STYLE

今村泰彦さん

VIE STYLEは、ニューロテクノロジーとエンターテイメントの力で、感性に満ちた豊かな社会をつくることをミッションに掲げています。世界では5人に1人がメンタルの課題を抱える中、イヤホン型脳波計を開発し、脳波から最適化した音楽によって、集中力の向上やリラクゼーション効果の向上を提供しています。

これまで脳波計を医療現場など以外で一般の人々が利用できませんでしたが、イヤホン型の脳波計にすることでリアルタイムで脳情報の解析が可能となりました。医療、製薬、自動車、エンターテイメント、教育、eスポーツなど、さまざまな分野で活用されています。

4.5兆円規模とされるヘルスケア市場にも進出しました。今村さんがエンターテイメント業界出身ということもあり、VIE STYLEでは、健康増進や予防分野に、積極的にエンターテイメントの力を活用しています。プロダクトは生産性の向上やエンタメの分野での活用が評価され、大企業・医療機関・商業施設とのコラボレーションも増えているとのことでした。

スポーツ・エンタメ事業者向け、電子トレカを︎用いたファンシステム「ORICAL」︎ by ventus

梅澤優太さん

ventusは、ファンのニーズを可視化し、コンテンツIPの力を最大限に活用するスポーツとエンタメ領域のファンビジネス・スタートアップです。現在は、電子トレーディングカード(トレカ)「ORICAL(オリカル)」を主事業にファンのニーズに基づいた複数の事業展開を行っています。

これまでのスポーツやエンタメの領域には大きく、コンテンツホルダーとファンの2つの存在がありました。これまでもコンテンツホルダーからファンに何かを一方的に届ける動きはありましたが、そのファンがどういう人たちで、彼らがどういうニーズや要望を持っているかや、それに対応する取り組みは限定的だったそうです。

そこでORICAL はプロ野球チームや相撲協会、女子プロレス団体などの公式トレーディングカードを使ったアイデアを提供しています。ユーザーは公式トレカを購入することで、ユニークなユーザー体験を楽しむことができます。また、スポーツ団体などは、購入者のデータをファンクラブIDとの連携することで新しいビジネスを展開することもできます。

ventus のビジネスモデルはトレーディングカードの流通額のレベニューシェアで、売上は急速に伸びているそうです。どういったファンがどこにいるのかを可視化できるため、ECや物販との連携、他の球団とのアライアンスによって、より高単価の商品や新しいコンテンツを販売する機会を創出できることが期待できるとしていました。

知育玩具サブスク「トイサブ!」by トラーナ

志田典道さん

トラーナは、おもちゃのサブスクリプションサービス「トイサブ!」を提供しています。少子高齢化が進むにつれ、子育てに関する悩みが増えており、トイサブ!は子供の成長に合わせて、1800を超えるバリエーションの中から選ばれたおもちゃを定期的に届けることで、幸せな親子時間を増やすことを支援しています。

少子高齢化の一方、幼児期からの教育投資が注目されており、需要が増加しているとのことでした。子供に最適な刺激や教育を提供したいというニーズも増えている一方、従来の画一的な子供向け教材の需要は減少しており(コモディティ化)、一方で、トイサブ!のようなパーソナライズされたサービスが注目を集めているそうです。

また、トイサブ!は100万件以上のおもちゃの評価データを持っており、これまでの7年間で子供たちに合ったおもちゃを研究してきました。このデータを活用することで、個別のニーズに応じたサービスを提供しています。現在、トイサブ!のユーザー数は2万世帯を超えています。

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