オンライン教育ユニコーンGoStudentが9,500万米ドルの大型調達、積極的な買収で〝冬〟をどう乗り切るか?

GoStudent のユーザーインターフェース。GoStudent は、30以上の分野のオンラインコースを提供しており、生徒が選択できる。保護者からの購読料に加え、家庭教師からも手数料を徴収しており、1レッスンの価格は20〜32米ドル。
Image credit: GoStudent

オンライン教育にはまだ成長の余地があるのだろうか?

オーストリアのオンライン教育プラットフォーム「GoStudent」は最近、9,500万米ドルという巨額の資金調達ラウンドを完了したが、これは需要減退と景気後退に直面するなかでの目覚ましい業績だった。

GoStudent は2021年、主に1対1のオンラインコースを提供し、コロナ禍のリモート教育の需要により、ヨーロッパ初のオンライン教育ユニコーンとなった。この間、GoStudent はFox Education、Seneca Learning、Studienkreis などの放課後家庭教師プロバイダを買収したため、生徒、教師、両者の交流に関するデータをより多く得ることができ流ようになり、ヨーロッパ15地域にサービスを拡大し、生徒数は1,100万人を超えた。

おそらくGoStudentは、コロナ流行の終焉を予見していたのだろう。こうした補完的な買収が、同社の継続的な成長と成功の鍵となっている。

創業者 Felix Ohswald 氏は14歳で大学に入学、AI でオンライン教育の課題を解決

Felix Ohswald 氏

GoStudent 創業者 Felix Ohswald 氏は、14歳にして、飛び級でウィーン大学に入学し数学を学んだ「天才」である。その後、ケンブリッジ大学で学び、チューリッヒ連邦工科大学で数量ファイナンス(Quantitative Finance)の修士号を取得した。

Ohswald 氏は、「数学に魅了されたからこそ、それを極めることができた」のであり、彼の成功は学ぶことへの愛情を見出したことから始まったと考えている。祖父は Ohswald 氏の教育の師であり、Ohswald 氏はチェスを通じて数学の論理に触れ、一手一手の「どのように」「なぜ」を説明し、複雑な理論的概念をゲームという形で読み解いていった。やがて、ゲームの状況を分析することがOhswald 氏の趣味となり、その緻密な思考が学問的成功につながった。

卒業後、Ohswald 氏は、祖父のように理論を実践的な応用に変え、生徒が学習への情熱を見出せるよう手助けできる教師たちを集めたいと願い、GoStudent を設立した。

GoStudent の料金は、月4回または8回のレッスンに分けることができ、各レッスンの料金は20〜32米ドルである。登録後、ユーザは30以上の分野で1対1のオンラインレッスンを購入することができ、GoStudent は現在、毎月100万以上の1対1のオンラインレッスンを提供している。

しかし、GoStudent は過去にいくつかの論争に直面している。GoStudent は教師資格の質を保証するために厳格な審査制度を設けているにもかかわらず、指導を禁止された教師が偽名で教えることができたため非難を浴びた。また、オンライン学習は画面ベースで行われるため、生徒と教師が直接対話することができず、教師が生徒の表情や教室の雰囲気から授業のペースや効果を把握することが難しいという批判もある。

この論争に対し、Ohswald 氏は、将来的には生徒の感情をリアルタイムで分析する AI ツールが導入され、生徒の許可があれば、カメラを通して生徒の表情を検出できるようにすることを望んでいるという。そのデータは、GoStudent の教師が生徒の感情と学業成績の相関関係を理解し、指導の習熟度を向上させるためのトレーニングにも利用できる。

戦略的買収で投資家が注目、約7億米ドルの調達に成功

GoStudent は、生徒が教室で VR デバイスを通して直接現地の環境に浸ることができる語学学習プラットフォーム「GoVR」を発表した。
Image credit: GoStudent

2022年、GoStudent は Fox Education、Seneca Learning、その他オンラインおよびオフラインの放課後個別指導を専門とする教育機関を買収し、より多くの生徒と教師のリソースへのアクセスを獲得した。より多くのデータを手に入れた GoStudent は、生徒と教師をよりマッチングさせるために AI の導入を開始した。

また、GoStudentは、流行後も学校教育が基礎であることを理解しており、コロナ禍もオンラインとオフライン教育の統合を積極的に拡大してきた。GoStudent は最近、ドイツの民間教育プロバイダ Studienkreis を買収した。Studienkreis は、1,000以上の場所でオンラインとオフラインの家庭教師を提供し、ドイツ語圏で150万人以上の学生にサービスを提供し、グループコースに重点を置いている。

Studienkreis の買収により、GoStudent はオフラインの教育プロバイダと協力し、オンライン授業プログラムをカスタマイズする機会を得ることになる。また、同社の主力商品である1対1のオンラインレッスンに多くの人を惹きつけるため、受講生に無料のグループレッスンを提供する予定だ。さらに、同社は新たにリリースした言語学習プラットフォーム「GoVR」への投資も継続する。このプラットフォームでは、受講生は何千キロも離れた教室に通うことなく、VR デバイスを通じて直接、言語学習環境に身を置くことができる。

これらの買収により、GoStudent は2023年にもドイツ銀行、ソフトバンク・ビジョン・ファンド2、Tencent(騰訊)などの企業 VC を投資家に迎え、9,500万米ドルという巨額の資金調達を完了した。

未来は、ブレンド型学習になる。基礎としての学校教育と、補完的なツールとしてのテクノロジーが、最も効率的な学習につながるだろう。(Ohswald 氏)

Studienkreis の買収により、GoStudent は同社独自のオフラインおよびグループ顧客基盤を獲得した。GoStudent は、オンラインとオフラインの教育を統合するため、技術ツールの開発を続けていく。GoStudent は、今回調達した資金を AI 技術の開発に充て、プラットフォーム上の生徒と教師のマッチングを改善するだけでなく、教師が授業で使用する教材制作の最適化にも使用すると述べている。

【via Meet Global by Business Next(数位時代) 】 @meet_startup

【原文】

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