出世払いでリスキリング、「WorX(ワークス)」が1.5億円をプレシリーズA調達——経産省認定で個人負担がさらに軽減

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Image credit: WorX

転職決定後の後払い型(ISA=Income Share Agreement)のリスキリング転職プラットフォーム「WorX(ワークス)」を運営する WorX は8月31日、プレシリーズ A ラウンドで1.5億円を調達したことを明らかにした。このラウンドに参加したのは、XTech Ventures、ユームテクノロジージャパン、ナハト、長谷川創氏(ベクトル取締役副社長)。金額には日本政策金融公庫からのデットが含まれる。

これは、WorX にとって、2021年7月に実施したサイバーエージェント・キャピタル、日本スタートアップ支援協会などからの4,000万円の調達に続くものだ(シードラウンドとみられ、金額にはデットが含まれる)。同社では調達した資金を使って、マーケティング活動や組織体制の強化、サービス内容の拡充、新コースの設立に取り組むとしている。また、WorX は経済産業省の「リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業」の補助事業者に認定されたため、個人の費用負担が7割軽減される(2023年8月4日〜2026年3月30日)。

WorX はエン・ジャパンで新規事業責任者などを務めた藤原義人氏により2021年1月に創業。業界未経験の人がそれまでとは違った業界・業種に転職(WorX では「越境転職」と呼んでいる)できるよう支援するリスキリングプラットフォーム WorX を運営している。WorX が特徴的なのは、新たな知識を学ぶために必要な受講料を転職決定後にできる点だ。適職診断の後、3〜4ヶ月かけて200〜250時間(週あたり15〜16時間)のリスキリングを行う。プログラム終了後は、WorX が転職の可能性がある先への斡旋も行う。

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WorX は、2つの視点から見て興味深い。WorX がターゲットとする従来から成熟産業で働く人々の年収は、統計から推測する限りあまり高くない。仮に年収300万円未満の人は、その半数以上が貯蓄額が100万円未満または金融資産を持たないと回答している(金融広報中央委員会のデータによる)。高収入が得られる可能性がある業界に転職しようにも、スキルを身につけるための費用はなかなか捻出できないのだ。出世払いは、彼らのハードルを圧倒的に下げることになる。

もう一つの視点は、WorX のビジネスだ。転職が決定するまで受講料を受け取れないという点で WorX は一定のリスクを負うものの、転職が決定すれば、そこから向こう24ヶ月間、転職者から理論月収の10%を WorX が受け取る。年収の2倍の10%なので、相場から言って60〜90万円くらい。さらに、人材紹介業は一般的に年収の3割程度を紹介料として紹介先の企業から受け取ることが多い。この金額はおそらく100〜150万円といったところだろう。リスクと手間は伴うが、2つのルートから売上があり、一般的な転職エージェントより収益率が高い。

藤原義人氏

そうは言っても、そううまく業界未経験者が WorX で育ち、希望する職種へと巣立ってくれるものだろうか。藤原氏によれば、業界未経験者の可能性を一番閉ざしてしまうのは、彼らの「経験が無いけれど、そんな職種に就けるだろうか」という自信の無さだ。

転職に成功するには「経歴・適性・実績」「スキル・知識」「自己分析・転職準備」の3つの要素が必要だ。WorX ではプログラム期間中、リスキリングのトレーナーとは別にキャリア支援のトレーナーが並走し、週に一度のペースでコーチングを行う。

ブライダルから、保険業や不動産業といった職種に転職するというケースはままあるんですが、IT へ行く例はあまりない。「なんとなく難しそう」という意識が邪魔をするんですね。そこは、普通の転職エージェントでもなかなかサポートできない。

WorX のプログラムは、e ラーニングとリスキリングトレーナーへの 1to1 のアウトプットがベースですが、加えて、キャリア支援のトレーナーがつくことで、ご本人が転職活動を常に意識している状態を作っていくんです。

我々はリスキリングだけでやれることには限界があると思っています。ご本人のそれまでの経験と、リスキリングしたことの掛け算で何になれるかを導き出すことが、越境転職を成功させる上で重要だと思います。(藤原氏)

Image credit: WorX

WorX は毎月卒業生、つまり、転職成功者を輩出しているが、スムーズに進むケースが8割程度といったところだ。スムーズにいかなくてもプログラム参加者は引き続きフォローアップを受けることになる。参加者の立場からみればリスクフリーで、どこかのスポーツジムよろしく、WorX はまさに結果にコミットしてくれる存在なわけだ。WorX では「こんな職種から、あんな職種へ転身」といった事例を Web サイト「WorX STORY」で紹介することで、潜在層の取り込みにつなげたい考えだ。

WorX では現在、「Salesforce CLASS」「TECH SALES CLASS」「MARKETING CLASS」の3つのプログラムを展開しているが、今後2年程度の間に、キャリアアドバイザー、IT 系事務職、経営コンサルタント、IT コンサルタントなど、10ほどにまでバリエーションを増やしたいという。収入が増えることを目指すとはいえ、「人によって、なりたいものは違うので、なりたいものを目指してなれるよう選択肢を増やしていきたい」と藤原氏は語ってくれた。

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