XR映画スタートアップのCinemaLeap、インキュベイトファンドから6,000万円をシード調達

SHARE:
「SEN」
Image credit: CinemaLeap, Psychic VR Lab

XR 映画の制作や XR 映画祭の運営などを行う CinemaLeap は17日、シードラウンドでインキュベイトファンドから6,000万円を調達したと発表した。同社では、調達した資金を使って、採用強化による業務拡大、XR 映画のユーザ層拡大のために新規事業開拓を進める計画だ。現時点ではニッチながら、広く XR 映画が普及する将来を展望し、CinemaLeap が持つ仮説の検証を行うとしている。

大橋哲也氏

CinameLeap は、テラモーターズや国際短編映画祭を運営するパシフィックボイス出身の大橋哲也氏により2019年4月の創業。XR 映画とは、その名の通り、VR(仮想現実)、AR(拡張現実)、MR(複合現実)、SR(代替現実)など、さまざまな XR 技術を取り入れて制作された映画の総称だ。

ライブで行うもの、謎解きの要素が含まれ作品を体験しながら解凍していくもの、AI が搭載され視聴するたびに内容が変化していくものなど、XR 映画の作品フォーマットもさまざまだ。これまでは撮影や配給(配信)方法の制約から2次元の映画が多く流通してきたが、XR が普及すれば、映画も部分的または全体的に、それに最適化したものに変化していく、と考えるのが自然だ。

最も大きな XR 映画部門を持つ映画祭はベネチア国際映画祭で、毎年、島を丸ごと貸し切り(Venetia Immersive Island)、数々の XR 映画作品が紹介されている。また、モントリオールでは「Space Explorers(The Infinite)」が入場料数十ドルで7万人を動員、「Spheres」はサンダンス映画祭で100万米ドルで落札されるなど、XR 映画にはモメンタムが来ている。

CinemaLeap は、日本を代表する XR 国際映画祭「Beyond the Frame Festival」を主催するほか、XR クリエイターをネットワークした XR コンテンツ制作、世界の配給ネットワークとの連携を通じた XR 映画の制作や配給に強みがある。世界の3大映画祭(ベルリン、カンヌ、ベネチア)にはこれまでに制作した6作品がノミネートされるなど、存在感を高めている。

「周波数」
© Ellie Omiya

BRIDGE の取材に対し、大橋氏は将来、CinemaLeap を「XR におけるピクサーのような存在にしていきたい」と語ってくれた。

今年の第80回ヴェネチア国際映画祭 XR 部門「Venice Immersive」では、CinemaLeap が制作した XR 映画作品として、Psychic VR Lab と共同制作した VR アニメ「SEN」と、大宮エリー氏が監督した VR 映画「周波数」の2つの作品がノミネートされた。同社では、両作品の日本国内における近日中の上映を前向きに検討したいとしている。

Members

BRIDGEの会員制度「Members」に登録いただくと無料で会員限定の記事が毎月10本までお読みいただけます。また、有料の「Members Plus」の方は記事が全て読めるほか、BRIDGE HOT 100などのコンテンツや会員限定のオンラインイベントにご参加いただけます。
無料で登録する