ストレスを定量的に評価「バイオピリン」働く人のメンタル不調を未然に防ぐ/明治アクセラレーター2022

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RESVOの志村 正俊さん

本稿は明治アクセラレーター2022のデモデイ(最終成果発表)のレポートの一部。採択された各社の共創活動をご紹介します。

精神疾患の問題解決に向けて設立された創薬・バイオマーカーの研究開発企業がRESVOです。2015年1月に、現在島根大学で特任教授を務める大西新氏を中心に設立されました。島根大学との共同研究により発見されたのが、「バイオピリン」というストレスに関連するバイオマーカーで、同社ではその検査サービスを提供しています。

国内では2015年から50名以上の事業所には労働者が自分のストレスがどのような状態にあるのかを調べるため、年一回の検査(ストレスチェック)の実施が義務付けられるようになりました。高ストレス者は、医師による面接指導を受けることができるようになっていて、必要な場合には職場の改善や労働時間の短縮などの就業上の措置を講じる必要があります。

RESVOが研究を進めるバイオピリンは尿中に存在する代謝産物で、ストレスによって脳や神経にダメージを与えると増加することがわかっているものです。このバイオピリンの濃度を測定することで、潜在的なストレスやメンタル不調のリスクを定量的に評価することができる、というわけです。一般ユーザー向けにも「バイオピリン検査サービスパック」を販売しており、2022年には神奈川県が未病改善に繋がるブランドとして推進する「ME-BYO BRAND」にも認定されています。

登壇した志村さんはバイオピリンとメンタル不調の関係について次のように説明していました。

「メンタル不調、あるいは精神疾患というものは、過度なストレスによって引き起こされるということが、数々の研究で知られております。しかし、弊社はこのストレスというもの全てが悪いものとは思っておりません。と申しますのも、ストレスは適度な緊張感となって体に良い影響を与えることもあるからです。このストレスが脳神経系のダメージになったときだけ、メンタル不調ですとか精神疾患を引き起こす。すなわち、メンタル不調の予防の鍵を握るのは、脳神経系のダメージということになります。つまりストレスの総量を測っているだけではなくて、脳神経系のダメージを測るということが、メンタル不調にとって重要ということです」(志村さん)。

この状態を手軽に尿検査から知ることができるのがバイオピリンなのですが、一般的な問診型ストレスチェックサービスは数百円で実施できるのに対し、同社の検査サービスでは5,000円という価格がネックになっていました。

また学術的な注目度が上昇する一方、まだまだ一般向けの認知は不足しているのが現状です。さらに測定した後にどのようなケアをすればよいか、この点についても同社ではソリューションを用意しきれていない状況がありました。そこで今回のプログラムで両社はまずニーズの検証から開始し、一般消費者ではなく、ターゲットを法人に向けることにしました。

「今回のプログラムで明治グループ各社の協力を得てヒアリングを実施し、特に、一般的なストレスチェックでは見つけることが難しい高リスク者の発見において大きなペインを抱えていることがわかってきました」(志村さん)。

ストレスによる就業リスクが高い場合、企業としてはそれを定量的に評価し、未然に防ぐことは大きなメリットがあるからです。今後、両社では測定後のケアのソリューションを含め、検証を続ける予定です。

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