ハリウッドの脚本家ストライキは、脚本における AI に対する新たな保護によって公式に終結したが、彼らのクリエイティブなパートナーである俳優たちには幸運はない。俳優組合である映画俳優組合-米国テレビ・ラジオ芸術家連盟（SAG-AFTRA）は12日声明を発表し、映画およびテレビ業界の CEO との協議が決裂したと述べた。SAG-AFTRA は、AI や3D スキャンによる俳優の似顔絵の使用を制限するセーフガードを提案していた。

SAG-AFTRA の Web サイトとソーシャル・メディア・チャンネルに掲載された SAG-AFTRA の声明には、次にようにある。

業界の CEO らが我々の最新の提案に反論することを拒否した後、交渉のテーブルから離れたことを報告することは、深い失望とともにある。これらの企業は、AI に取って代わられないようにパフォーマーを保護することを拒否し、インフレに合わせて賃金を上げることを拒否し、あなたの仕事が彼らにもたらす莫大な収益のごく一部を共有することを拒否しています。

AI による肖像権乱用が懸念される中、俳優に希望を与える新法案

同時に SAG-AFTRA は12日、4人の超党派上院議員が提出した新法案「NO FAKES ACT」の支持を発表した。NO FAKES ACT とは、「Nurture Originals, Foster Art, and Keep Entertainment Safe Act（オリジナルを育て、アートを育て、エンターテインメントを安全に保つ法律）」の略で、元大統領候補の Amy Klobuchar 氏（ミネソタ州選出、民主党）、Marsha Blackburn 氏（テネシー州選出、共和党）、Chris Coons 氏（デラウェア州選出、民主党）、Thom Tillis 氏（ノースカロライナ州選出、共和党）の4人が提出したものだ。

Deadline が報じた法案本文には、「複製される個人の同意なしに、映像や音声で出演する個人を AI が生成した複製を無許可で制作または配布することを禁止する」とある。

これにより、アマチュアやクリエイター志望者がAIを使って一流俳優のパロディを生成することはかなり難しくなるが、俳優が自分の肖像権を管理し、利益を得ることもできるようになる。しかし、この法案が法律として成立するには、共和党が支配する下院と民主党が支配する上院の両院で過半数の票を獲得し、バイデン大統領が署名する必要がある。それにはまだ時間がかかりそうだ。

3D スキャンと AI——ハリウッドは、急速に進歩する2つの技術の真っ只中にある

VentureBeat が以前、ハリウッドの AI と3D スキャンの歴史、現在、未来について深掘りした記事でお伝えしたように、AI と3D スキャンは根本的に異なる2つの技術だ。前者は業界にとってずっと新しい技術だが、後者は何十年も前から使われており、James Cameron 氏や David Fincher 氏をはじめとする作家的な映画製作者たちによって追求されてきた。

3D スキャンは最近まで、本物に見えるためには俳優の演技が必要だった。AI を使えば、生きている人間の作法を取り入れながら自ら演技をしたり、視覚効果スタジオの Digital Domain のような企業が研究しているように、完全に合成された人物を作成するために使用することができる。

さらに、The Information は、大物スターたちが、彼らの肖像をデジタル化して3D スキャンし、ライセンス供与するためのスタートアップ企業とも交渉していると報じた。そのようなスタートアップの1つである Metaphysic は、まさにこの目的のために独自の PROレベルを最近発表し、Tom Hanks 氏、Anne Hathaway 氏、Octavia Spencer 氏と仕事をしていると The Hollywood Reporter によって以前報じられた。

興味深いことに、Tom Hanks 氏とニュースキャスターの Gayle King 氏も自身のソーシャルアカウントに投稿し、彼らの肖像が（別々に）AI が生成した動画で、彼らの事前の知識も同意もなく商品を売り込むために使用されていることをファンに警告する声明を発表している。

しかし、Metaphysic 自体は、数年前にソーシャルネットワーク「TikTok」で流行した Tom Cruise 氏の無許可のディープフェイクレプリカを作るために使われた技術から生まれた。無許可のパロディとして始まったプロジェクトが、今や合法的なものとなり、まさにそれを揶揄するために設立されたスターたちのビジネスを獲得していることは、予想できたことではあるが、皮肉なことかもしれない。

SAG-AFTRA の狙い

脚本家を代表する組合である全米脚本家組合（WGA）と同様、SAG-AFTRA はストライキの当初から、映画やテレビで AI や3D スキャンの利用が拡大し、特に人間の労働力を代替する方法として使用されることを公然と懸念してきた。

SAG-AFTRA の法律顧問 Jeffrey Bennett 氏の書簡にはこうある。

SAG-AFTRA は、パフォーマーの声や肖像をデジタル複製してパフォーマンスを実質的に操作する権利、または新しいデジタルパフォーマンスを作成する権利は、強制的な交渉対象であると主張している。さらに、新しい映像、音声、または視聴覚コンテンツを生成するために設計された人工知能システムを訓練するために、実演家の声、肖像、パフォーマンスを使用することは、強制的な交渉対象である。

しかし、今年だけでも多くの俳優がエキストラとして1日か数日の仕事に対してのみ報酬が支払われ、追加の仕事日数を支払うことなく繰り返し使用できる3D 肖像のために全身をスキャンするよう求められたと名乗り出た。

作家の場合、OpenAI の「ChatGPT」や「（GPT-3で訓練された）Sudowrite」のようなプログラムが脚本の下書きに使用され、その素材をタッチアップまたは編集し、著作権で保護できるようにするために雇われた作家について懸念があった（アメリカ著作権局は、AI が制作した作品は著作権の対象外であり、著作権の対象となる作品には人間のクリエイターが関与していなければならないと繰り返し述べているため）。

ChatGPT や Sudowrite は一般に公開されているが、俳優の場合、3D スキャンの実際の技術は、今のところ、はるかにアクセスしにくい。Move AI を含むスタートアップは、スマートフォン1台で AI 主導の3Dモーションキャプチャーに取り組んでいる（Move AI はすでに、この機能を備えたアプリ「Move One」をベータ版として提供している）。

【via VentureBeat】 @VentureBeat

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