世界最大のテックイベントCES 2024参加レポート【前編】ーーあらゆる業界のAI活用


本稿はKDDIが運営するサイト「MUGENLABO Magazine」掲載された記事からの転載。レポートはKDDIアメリカのサンフランシスコ拠点にてKDDI Open Innovation Fundの業務に携わる一色望氏が取材・執筆した。

KDDI Open Innovation Fundのサンフランシスコ拠点では、北米や欧州のスタートアップ企業への投資や事業連携を目的として活動しています。このコーナでは現地で発見した最新のテクノロジーやサービス、トレンドなどをKDDIアメリカの一色よりお送りします。今回は、1/9~1/12にアメリカ・ラスベガスにて開催された世界最大級のテックイベントCES 2024の参加レポートをお届けいたします。

一色望/KDDIアメリカ:本誌の記者。KDDIオープンイノベーションファンドのアメリカ サンフランシスコ拠点でスタートアップとKDDIの事業創造を目指し、ディールソーシング(投資先探し)と投資評価に取り組み、既存の投資先企業もサポートしながらMUGENLABO Magazineの制作に携わる。趣味は世の中のトレンドサーチと、美味しいお店巡り、旅行、ジム通い。

世界最大のテックイベント

世界最大のテックイベント「CES 2024」が今年も開催され、盛況のうちに幕を閉じました。イベントの主催であるCTAの統計によると、今年は4,300以上の出展企業と、135,000人以上の参加者が世界中からラスベガスに集まったそうです。2023年と比較すると、出展社数は約30%、参加者は1.5万人の増加となり、展示社数ではようやくコロナ前の2020年とほぼ同規模まで回復してきたと言えます。

今年もイベントの冒頭にCTAから主にメディア向けに、今年のTrend To Watch(注目すべきトレンド)が発表されました。今年フィーチャーされたメインのトレンドとして、昨年世間を席巻した生成AIのほか、サステナビリティ(持続可能性)やインクルーシビティ(包括性)が発表されました。

その他、追加の注目のテーマとしては、モビリティ、デジタルヘルス、ヒューマンセキュリティ(Human Security for All、HS4A)が挙げられました。

AI領域

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今年言わずもがな注目のトピックであるAIの領域については、生成AIを超えて、チップからロボットに至るまでさらに広範囲なエコシステムが形成されている、と説明されました。

AI:あらゆる業界での活用

過去一年間で急速に人々の生活に浸透した生成AIですが、この技術をあらゆるガジェットやハードウェアに組み込んだ製品が今年は大変多く登場しました。以下にその一例を示します。

AI×ガジェット

今回のCESの中でメディアやSNSで最も話題になったプロダクトの一つは「Rabbit R1」です。Rabbit R1は手のひらサイズのAI搭載ガジェットで、非常にコンパクトな外観であるにもかかわらず、タッチスクリーン、カメラ、そして画面を操作できるスクロールボタンを備えています。

Rabbit R1

Rabbit OSという独自のOSは、Chat GPTのような大規模言語モデル(LLM、Large Language Model)ではなく、大規模アクションモデル(Large Action Model)をベースとしており、ガジェットに搭載されているAIアシスタントに話しかけることによって、音楽の操作、日用品の購入、メッセージの送信、レストランの検索など、簡単なタスクをを行うことができます。これまでは、スマホを取り出し、ロックを解除し、目的に応じたアプリを開き、操作する必要がありましたが、このわずかでありつつも煩雑な作業を、音声一つでより直感的に早く操作することができるようになります。

先日、サンフランシスコ発のスタートアップHumane社が発表した「AI Pin」も似たようなコンセプトを掲げていて、大きな注目を集めました。Rabbit R1はまさにこの競合商品と言えますが、価格面ではAI Pinが799ドル+月額サブスクリプションモデルであるのに対し、Rabbit R1は199ドルのワンショットの価格設計となります。こうしたAI搭載ガジェットは、スマートウォッチのようなスマホ機能の拡充、あるいはスマホの代替商品として広まっていくとみられており、今後の売れ行きから目が離せません。

ちなみにRabbitは、発表からわずか1日で 10,000 個のプレオーダーが終了し、現在までに3度目のプレオーダー(計30,000個)を完了していて、反響が非常に大きくなっています。筆者もAI Pinは予約済みなのですが、Rabbit R1も購入してUI/UXを比較してみたいと思います。

プレオーダーが受付開始になっては即完売となっている状態で、消費者の期待の高さが窺えます(同社Xアカウントより)。CES会場では公式の展示はなかったので、早く触ってみたいです!

AI×モビリティ

▲BMWブース

モビリティの分野では、BMWやフォルクスワーゲンが生成AIを活用したチャットボット機能のデモを行いました。BMWは、Amazonとのパートナーシップにより、Amazon Alexaの大規模言語モデルをベースとしたボイスアシスタント機能を発表しました。これにより、ユーザーはハンドルから手を離さずとも車両システムをコントロールできるほか、マニュアルを読まずとも車載機能や設定について質問し、最適な機能設定を行うことができます。

▲BMWのデモの様子

またフォルクスワーゲンは、テクノロジーパートナーであるソフトウェア会社 Cerence.Incと協働し、ChatGPTを導入した車両を展示しました。2024年の第二四半期以降は、同社のIDAアシスタント機能を搭載したすべての車両にChatGPTを標準搭載していくそうです。

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一色ラスベガスの道をドライブするのに最適なドライブモードについて質問すると、おすすめのモードを教えてくれ、簡単に設定することができました。

AI×テレビ

LGやサムスンは画面が“透明”のテレビでCES参加者を沸かせましたが、両社とも商品に導入したAIについてもアピールをしていました。LGは、設定の検索や画質の最適化、問題の改善などを会話によって実行できるチャットボット機能を公開しました。対するサムスンは、新しいテレビを「AIスクリーン」としてブランド化しました。

▲透明テレビの展示

新たに搭載するAI関連の機能として、スポーツをテレビで視聴しているスポーツの種類を自動的に検出し、野球やサッカーなどの高速で動く物体を鮮明に目で追えるようにする機能や、音声と背景ノイズを分析し、テレビの視聴体験を最適化する機能などについて発表しました。

▲サムスン
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サムスンは「AI for All」をコンセプトに掲げ、テレビやロボットだけでなくあらゆる商品にAIを組み込み生活をアップデートさせていく方針を示しました。

AI×ロボット

LGとサムスンは、新しい家庭用のAIロボットの発表でも注目を浴びました。LGが発表した「Q9 AI Agent」は、白黒の配色で2本の車輪付きの脚が特徴で、家の中を自律的に動き回ることができます。カメラやスピーカー、センサーが内蔵されており、室内の温度や湿度などの環境データを収集したり、会話によってユーザーとコミュニケーションを取ったりすることができます。

主な利用用途として、ペットのモニタリングや、戸締りや消灯漏れなどの点検、服薬のリマインダーなどが紹介されています。同社によると、この製品を通じて“労働力なしの家”、つまりユーザーを家事の負担から解放することを目指しており、スマート ホーム市場でのリーディングプレーヤーの地位の確立を狙います。

▲両社のロボット

サムスンが発表したロボットは、鮮やかな黄色の球体型のロボット「Ballie」です。2020年のCESで発表された初期バージョンとは異なり、今回発表された最新モデルでは壁や天井に投影できるプロジェクター機能が搭載されました。主な利用用途としては、ビデオ通話やフィットネス映像のプロジェクター表示、ペットへの餌やり、エアコンや照明などの家電のコントロールなどが紹介されました。

家庭用ロボットはこれまで何度も開発されてきましたが成功と呼べる前例があまりない中で、これらのロボットが果たしてスマートホーム市場に革命をもたらせるのか、期待が高まります。

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両社ともロボットの展示は非常に注目度が高く、参加者が商品を一目見ようと列をなしていました。

後編では、モビリティやスタートアップ、基調講演についてお届けします!

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