CESで発見「生活を変える」注目13デバイス(前編)マイノリティの課題解決

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CESで見つけた「マイノリティの課題解決」目指すデバイスたち

年初に米国ラスベガスで全米民生技術協会(CTA)主催の「CES 2024」が開かれた。その原型となる、1967年にニューヨーク市で始まった家電市は今年で100周年を迎えたという。4,300超の出展者数のうちの1,400をスタートアップが占め、過去最多に及んだ。

国連の「人間の安全保障基金(UNDP)」と「世界芸術科学アカデミー」と共にCTAが取り組む世界的なキャンペーンに、「人間の安全保障(HS4A:Human Security for All)」がある。昨年2023年には経済、環境、食糧、健康、政治、個人、コミュニティーの安全保障に新たにテクノロジーが加わった。

実際現地で取材してみると、今年のCESでは健常者の生活をより豊かにするプロダクトのみならず、基本的な生活に不便があるマイノリティの人々を支えるテクノロジーの活用が際立っていたように思う。本記事では、スタートアップばかりが集まる展示エリア「Eureka Park」で出会った、私たちの生活にインパクトを与えてくれそうなサービスを前後編に分けて紹介する。

ホットフラッシュを探知するウェアラブル「Amira」

Photo by Yukari Mitsuhashi

40代後半くらいから女性を苦しめる更年期。北米では更年期は平均7.4年間に及ぶと言われ、10人に1人が更年期障害を理由に仕事を退職している。更年期障害の代表的な症状の一つがホットフラッシュ(ほてりや発汗)だ。ブレスレットとマットレスから成る「Terra」システムは、ホットフラッシュが起きる直前にAIがそれを探知し、ものの数秒で15度冷却してくれる。寝苦しくて目が覚めてしまっていた夜を過去のものにしてくれる。

更年期障害にまつわるアドバイスを提供してくれるAIコーチのAmy(エイミー)も、女性の生活をそばでサポートしてくれる。出荷予定は2024年4月で、予約販売価格は699ドルだ。

脳卒中後のリハビリデバイスを開発する「Neurolutions」

Photo by Yukari Mitsuhashi

脳卒中後は、神経がダメージを受けているため、手や腕が思うように動かせない運動麻痺の状態に陥ってしまう。米国食品医薬品局(FDA)クリア済みの 「IpsiHand」は、脳卒中後の上肢機能をリハビリするために開発されたデバイスだ。IpsiHandのEEGヘッドセットが脳の正常な部分から使い手の意思を認識し、「手を動かしたい」という意思に反応して手につけたデバイスが開閉する仕組み。リハビリを繰り返すことで、脳の正常な部分との連携が強化され、運動機能を改善してくれる。

アプリでカスタマイズできる補聴器「ConchaLabs」

Photo via. ConchaLabs

視覚と聴覚。どちらも大事な五感の一つだが、メガネがファッションの一部として広く楽しまれているのに対して、補聴器には障害の印象がつきまとい、あまり見かけない。補聴器に対するスティグマを変えようとするのが「ConchaLabs」だ。

自分の聴こえ方に応じて設定をカスタマイズできる「Soundscope」テクノロジーを搭載した補聴器は、約57グラムと軽量で安価。幼稚園から難聴が始まった創業者を含め、チームの3分の1を難聴者が占める。大手では、同じ課題の解決に「エシロールルックスオティカ」の補聴器機能つきのアイウェアがある。

AIの力で視覚障害者用ステッキを過去のものにする「PHINIX」

Photo by Yukari Mitsuhashi

Ximira社が開発する「PHINIX(Perceptive Helper with Intelligent Navigation and Intuitive Experience)は、盲者の安全な歩行をサポートするバックパック(またはベスト)とヘッドセットがセットになったウェアラブル。コンピューターやカメラを搭載したバックパックを着用すると、カメラがその場の環境を3Dで視覚化し、AIが状況を解析する。曲がり角や歩道、車、歩行者、信号や歩行者案内サインを含む街中の物を読み取り、その情報を音声または触覚フィードバックとして盲者に伝える。

サービスの実用化と改善を加速するため、PHINIXのコアシステムは、大部分がオープンだ。同様の視覚障害者の歩行補助サービスには、ロボット型の「Glidance」もあった。

舌で操作するハンズフリーのタッチパッド「Augmental」

Photo by Yukari Mitsuhashi

毎年、脊髄損傷に苦しむ人々は世界中で25万〜50万人に及ぶと言われる。従来、彼らはペンを口に加えるなどしてPCなどを操作してきたが、前歯の損傷などのトラブルがあった。「Augmental」が開発するのは、歯科矯正用のマウスピースのようなデバイスだ。口の中の小さな魚の骨を触り当てる繊細な舌、また顎や呼吸を使ったデバイス操作を可能にしている。サンフランシスコで開発されるデバイスは、現在はアーリーアダプターによる試験段階だ。

後半:CESで発見「生活を変える」注目13デバイス(後編)ヘルスケアとサステナビリティにつづく

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