航空・鉄道会社も協業に前向き、航空券・切符の転売サイト「Fairlyne」は旅行業界を変えられるか

Image credit: Fairlyne

チケットや航空券、そして宿泊予約の転売はそう簡単ではない。予約した人の名前、座席の指定、ダフ屋的な値付けなどが関係するため、旅行者が面倒に思うだけでなく、旅行事業者側もこうした面倒なことに関わりたくないと思っている。

2021年に設立されたフランスのスタートアップ Fairlyne は、旅行商品の再販の可能性に気づいた。それは、旅行商品の「中古市場」を創出するプラットフォームだ。交通機関やホテルなどの旅行事業者は、Fairlyne 上で自社製品の中古取引の価格ルールを設定することができる。企業も消費者も、売りたいチケットや航空券、宿泊予約などをプラットフォームに掲載し、自由に売買することができる。

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2つのイノベーション:「透明性のある価格設定」と「二次的利益の創出」

2022年、Fairlyne はフランス国鉄の格安列車運行会社 OUIGO と提携し、そのサービスを利用する乗客が10万人に達した。Fairlyne が業界にとって魅力的なのは、「透明性のある価格設定」と「二次的利益の創出」と言う2つのイノベーションが大きな理由だ。

  1. 透明性のある価格設定

以前は、鉄道切符や航空券の再販は禁止されていた。これは、割り当て制限により、料金が割高になる可能性を鉄道会社や航空会社などの旅行事業者が懸念していたからだ。しかし、Fairlyne を使用すると、旅行事業者はバックエンドで取引ルールを直接設定できるため、価格設定において旅行事業者の優位性が確保される。

消費者は、web サイトやアプリを通じて、取引したい中古旅行商品を Fairlyne のプラットフォームに掲載することができ、システムには商品の再販価格が表示される。

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  1. 二次的利益の創出

Fairlyne の取引ルールは、旅行事業者が転売で損をしないようにポイント制度が設けられているため、見た目ほど単純ではない。これまで旅行事業者が損をしてきたのはなぜか? おおよそ3つのシナリオがある。

  • 旅行事業者が返金を処理しないため、元の購入者 A は再販品購入者 B に安い価格で売らなければならない。この場合、旅行事業者は収益を得られるが、A は不満を持つかもしれない。
  • 旅行事業者が返金処理し、商品を棚に戻して再販売する場合、旅行事業者は元価格の収益を得られる可能性があるが、その手続をするための人件費がかかる。
  • デポジット制の前売券の場合、旅行事業者は代金の一部を事前に請求できるが、デポジット券は直前にキャンセルされることが多いため、旅行事業者は商品を再度販売する時間がなく、結果的に利益が減少する。

Fairlyne のポイントシステムは、どのようにして利益を保証するのだろうか。

例えば、元の購入者 A が$60を支払って旅行事業者に$120相当の商品を注文したものの、A がその商品を利用できないと確信した時(旅行の中止など)、 Fairlyne のプラットフォーム上に旅程を掲載し、再販品購入者 B との取引に成功すれば、A は Fairlyne から同一金額のポイントを受け取ることができる。これにより、旅行事業者は$120相当の商品の販売に成功するだけでなく、B への再販価格と A のデポジットを足した金額が、元の販売価格を上回る可能性が高い。

 

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再販の仕組みは、旅行業界のエコシステムを変えられるか?

Fairlyne の共同創業者 Michael d’Eboli 氏、Gilles de Richemond 氏、Morgan Guérin 氏は、旅行商品の取引における最大の課題は、時間、人数、対象者の制限であることを理解している。ヨーロッパを代表するホテル会社 Accor(アコー)で要職を歴任した3人は、長年の経験からこの業界の取引パターンを熟知している。

エンジニア出身の Richemond 氏は、技術面でプラットフォームをサポートし、d’Eboli 氏と  Guérin 氏は、過去に旅行業界で築いた関係を活かして、チームのためにさらなる顧客を開拓している。2022年にフランス国鉄と格安列車を運行する OUIGO に加え、Rail Europeも2023年に Fairlyne との提携を発表している

Fairlyne の共同創業者。左から:Michael d’Eboli 氏、Gilles de Richemond 氏、Morgan Guérin 氏
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Fairlyne はすでに2社と提携し、最近300万米ドルのシード資金を調達した。鉄道事業者との提携で切符の再販を可能にしたほか、 2023年6月には Royal Air Maroc(ロイヤル・エア・モロッコ)のオープン・イノベーション・チャレンジで優勝し、格安航空業界に参入する機会を得た

将来的には、同社は同じ旅行業界の中でも、運輸分野に加え宿泊分野にも進出したいと考えている。再販の概念がプラットフォームとして旅行業界に応用されれば、旅行業界のエコシステムが変わるかもしれない。消費者は、旅行代理店のような仲介業者を通さずとも、可能な限り低コストで旅程を変更できるようになるのだ。

【via Meet Global by Business Next(数位時代) 】 @meet_startup

【原文】

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