秋田県がスタートアップ創出に本腰、支援プラットフォーム「AKISTA」始動へ

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冒頭挨拶した秋田県副知事の猿田和三氏
(イベントのライブストリームから)

秋田県は27日、秋田市内でスタートアップ交流イベントを開催し、令和6年度から本格化する「秋田県スタートアップエコシステム創出」の基本方針を発表した。人口減少と高齢化に直面する県が、スタートアップ企業の集積による新たな産業創出を目指す。席上、秋田県産業労働部商業・貿易課 商業・創業支援チーム チームリーダーの長谷部達也氏から基本方針の骨子が説明された。

秋田県は長年、「課題先進県」と呼ばれてきた。少子高齢化や中山間地域の過疎化など、典型的な地方の課題が山積する県の実情を皮肉ったものだ。しかし県は、これらの課題を前向きに捉え、基本方針では「課題を解決の場とし、その解決方法をスタートアップが実証し、ビジネスとして展開できる場所」とし、「課題解決先進地」を目指すとした。

現状分析として、秋田県内のスタートアップ企業は数が少なく、成長段階も概して初期にとどまっていると指摘された。加えて、支援機関による支援の連携体制が不十分で、リソースも不足しているという厳しい実態が明らかになった。一方で、県内には農林水産業や伝統工芸などの潜在的な地域資源が存在し、「秋田のために…」という思いを持った人材ネットワークも存在することが評価された。

秋田県発表資料から

こうした現状と課題を踏まえ、基本方針には2つの大きな柱が設けられた。県内スタートアップの成長段階に応じた切れ目のない伴走支援、支援機関の連携強化とスタートアップへの統一的な相談窓口の設置だ。

具体的な施策として、令和6年度から秋田県と民間企業・支援機関が参画するプラットフォーム「AKISTA」を始動する。プラットフォーム参加者による伴走支援のほか、県内外のスタートアップイベントの開催や機運醸成、有望なスタートアップへの集中支援なども行う。さらに、県外から秋田に来訪し実証プロジェクトを行うスタートアップに対する支援制度も新設する。

AKISTA の運営にあたっては、有識者として、寺田耕也氏(Local Power 代表取締役)、伊藤慎一氏(秋田大学 産学連携推進機構 准教授 総括 URA)、小松由氏(そしきのコーチ 代表取締役社長)、本間光昭氏(秋田銀行 地域価値共創部 海外ビジネスサポート室長兼地域振興室長)、三浦怜氏(秋田銀行 地域価値共創部)、藤田豪氏(MTG Ventures 代表取締役社長)、高田克彦氏(秋田県立大学 木材高度加工研究所所長 教授/森林資源バイオエコノミー推進機構 代表取締役)らが協力することが明らかにされた。

パネルディスカッションの様子
(イベントのライブストリームから)

「秋田県なくなりますよ」——今回の基本方針の立ち上げを力強く呼びかけたのが、MTG Ventures の藤田氏だ。秋田出身で、東京や名古屋で長年スタートアップ支援に携わってきた同氏は、故郷の現状に危機感を抱いていた。「スタートアップなんてものが生まれる環境にない。このままだと本当になくなってしまう」と訴えた。有識者らは、「高い志と熱い誇りを持ち、汗を流そう」(秋田県立大学の高田教授)、「秋田の可能性しか感じていない」(Local Power の寺田氏)などと抱負を語った。

基本方針の発表に引き続き、秋田県副知事の猿田和三氏、JR 東日本スタートアップ 代表取締役社長の柴田裕氏、高齢者の生活の困りごとを学生メンバーが支援するサービスを提供する LibertyGate 代表取締役の菅原魁人氏、行動認識 AI による警備システムを開発するアジラの取締役 CTO 若狭政啓氏がパネルディスカッションに参加し、「今、秋田でスタートアップする理由」などについて議論した。モデレータは、前出の MTG Ventures 藤田豪氏が務めた。

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