アドビ、ブランドが生成 AI を使いやすくする「GenStudio」発表

SHARE:
Credit: VentureBeat made with Adobe Firefly

Adobe は、独自の商用利用可能な Firefly AI 画像生成・編集モデルを、ほぼ1年前の2023年3月にリリースし、大手企業の中でいち早く生成 AI の波に乗った。

そのFirefly のリリースから1周年を迎え、Firefly 2 のリリースから数カ月が経過した今、クリエイティブソフトウェアの大手企業である Adobe は、企業ユーザーやブランドがキャンペーン用の生成 AI アセットを作成し、オンラインまたはデジタル配信チャネルに公開するのに役立つ、全く新しい「GenStudio」アプリケーションを発表した。

さらに、ユーザーにさらなる制御を提供し、AI 画像を生成する理由をより多く与えることを期待している新機能も導入されている。

「Structure reference」と呼ばれるこの新機能では、Adobe Firefly のスタンドアロンのテキスト・ツー・イメージ・ジェネレーター・アプリのユーザーは、画像をアップロードして、スタイルやコンテンツではなく、画像内のオブジェクトやキャラクターの 配置 をガイドとして、後続の画像生成を行うことができる。

これらの機能は、ラスベガスの Venetian Convention and Expo Center で今週(2024年3月25日〜28日)開催される年次カンファレンス Adobe Summit で初めて公開された。

Adobe の新しい GenStudio の仕組み

GenStudio は、ブランドのための中央ハブとして機能するように設計されており、マーケティング/広告/プロモーションキャンペーンの計画、コンテンツの作成と管理、チャネル全体でのデジタルエクスペリエンスのアクティベーション、パフォーマンスの測定のための包括的なツールスイートを提供する。

Adobe のこの新しいアプリ(Creative Cloud サブスクリプションスイートの一部)に対するビジョンは、コンテンツ生成を簡素化し、合理化できるということだ。

ユーザーはキャンペーンを追跡・表示し、ブリーフを管理し、割り当てられたタスクを確認することができ、Adobe のプロジェクト管理ソフトウェアである Adobe Workfront と統合されている。

ユーザーは、様々な配信チャネルに向けてマーケティングアセットのバリエーションを生成し、コンテンツが視聴者中心でブランドに沿ったものであることを確認できる。また、GenStudio は、コンテンツがブランド基準から逸脱した場合にユーザーに警告し、整合性のための提案を行う。

さらに、コンテンツハブとしても機能し、Adobe Experience Manager Assets に接続し、ユーザーがアセットを検索し、Adobe Express 内の Firefly でパーソナライズされたバリエーションを作成できるようにする。

GenStudio に加えて、Adobe は Adobe Experience Platform AI Assistant を発表した。これは、Adobe のエンタープライズソフトウェア内の会話型インターフェースで、チームの生産性を高め、イノベーションを促進することを目的としている。

このアシスタントは、技術的な質問に答え、タスクを自動化し、新しいオーディエンスとジャーニーを生成することができる。

Adobe の生成 AI 機能の統合へのコミットメントは、Adobe Experience Manager のバリアント生成や Adobe Content Analytics など、特定のアプリケーションにも及んでいる。これらのイノベーションにより、ブランドはマーケティングアセットのパーソナライズされたバリエーションを即座に作成し、AI で生成されたコンテンツをパフォーマンス目標に合わせることができる。

Adobe は、デジタルエクスペリエンスプラットフォームのグローバルリーダーであり、世界中の企業にとって信頼できるパートナーであるという役割を担っているだけに、これらのアップデートの重要性は過小評価できない。業界を超えて 1万1,000もの世界的な顧客を抱える Adobe は、生成 AI ツールを幅広いユーザーに提供することを目指している。

新しい Adobe Firefly structure reference 機能の仕組み

Adobe Firefly の新しい structure reference 機能を示すビデオデモ(訳註:原文ではGIFアニメーションが確認できる)。Credit:Adobe

Adobe の生成 AI および「sensei」担当バイスプレジデントの Alexandru Costin (アレクサンドル・コスティン) 氏と、Firefly グループプロダクトマネージャーの Jonathan Pimento (ジョナサン・ピメント) 氏は、昨日のビデオ通話で「structure reference」についてVentureBeatに説明をしてくれた。

上のアニメーション GIF (訳註:原文ではGIFアニメーションが確認できる)で示されているように、ボタンをクリックして砂漠の岩の形やビュートの画像をアップロードし、「a castle found deep in the forest with moss growing on the stone walls」と入力すると、最初の岩の形に似た位置、形、サイズ、配置で城が生成される。

これが、structure reference の根本的な機能だ。1 つの画像を取り込み、スタイル的にはまったく異なるかもしれないが、内部の要素の 配置 と サイズ が最初の画像と似ているような新しい画像を生成するのである。

VentureBeat のデモでは、Adobe の幹部はリビングルームを選んだ。そして「cathedral」というテキストプロンプトを入力すると、AI モデルはステンドグラスの窓や豪華なソファを備えた、大聖堂のようなリビングルームのように見える新しい画像を生成した。

これは、画像ジェネレーターの出力をさらに制御したいユーザーにとって強力な機能だ。テキストや「style reference」を超えた機能だが、どちらも引き続き使用できる。(style reference 機能は、Firefly で生成された画像が、アップロードされた画像の配色と芸術的スタイルに沿うようにするもので、structure reference とは異なり、スタイルは採用せず、オブジェクトの配置とサイズのみを採用する)。

さらに、ユーザーは実際に、心の中にあるコンセプトのラフなプレーンな手書きスケッチをアップロードすることもできる。Adobe チームは、三日月の上にある小さな家のスケッチを同僚が描いたものを見せてくれた。Firefly はこれらを structure reference としても使用でき、ユーザーはコンセプトアートから、数秒で色鮮やかで陰影のついたより完成度の高いイラストレーションへと移行することができる。

Firefly structure reference の対象者は?

これらの属性は、クリエイティブエージェンシーで働くアーティストやデザイナー、クライアントのために独自に働く人、マーケティングや広告のキャンペーン、映画のストーリーボード、その他の企業のクリエイティブな仕事で、一貫性、再現性、精度が重要な場合に特に役立つだろう。

Midjourney から OpenAI の DALL-E、以前の Firefly まで、AI 画像生成モデル全般の大きな問題点は、その仕組み上、テキストプロンプトに同じキーワードを再使用しても、本質的に使用するたびに全く異なる画像を生成してしまうことだ。

他の AI 画像ジェネレーターでは、様々な方法で AI 生成物に対する人間のユーザーのコントロールを可能にしようとしてきた。例えば、Midjourney は最近、1 つの生成から複数の画像にわたってキャラクターを一貫して再現しようとする character reference 機能と、style reference パラメーターを追加した。

Adobe の structure reference は、この問題を解決するための新しいアプローチであり非常に有望なものに思える。

Firefly の機能の一部は、Adobe Photoshop、Illustrator、Express、Substance 3D など、様々な Adobe Creative Cloud アプリケーションにも組み込まれているが、残念ながら、新しい structure reference 機能は、今のところスタンドアロンの Firefly アプリに限定されている。

それでも、Firefly が商用利用に適していると Adobe が述べていること、そして、製品の使用に異議を唱えられたり訴えられたりした場合に、ある程度の法的支援を提供するという方針は、企業にとってこの AI モデルを特別魅力的なものにしている。Adobe は、Midjourney や DALL-E など、ウェブをスクレイピングして学習した他の AI モデルとは異なり、Adobe Stock からのライセンス済みの 4 億枚以上の画像のみを使用したと指摘している。

それでも、Adobe Stock のコントリビューターは以前、VentureBeat に対し、自分たちのイメージや写真が Firefly のトレーニングに使用されていることに失望と当惑を表明した。彼らは、Firefly が自分たちと競合していると考えているのだ。

VentureBeat では、この記事で言及したすべてのものを含む AI 画像ジェネレーターを使用して、記事のヘッダー画像やその他のアセットを作成している。

【via VentureBeat】 @VentureBeat

【原文】

Members

BRIDGEの会員制度「Members」に登録いただくと無料で会員限定の記事が毎月10本までお読みいただけます。また、有料の「Members Plus」の方は記事が全て読めるほか、BRIDGE HOT 100などのコンテンツや会員限定のオンラインイベントにご参加いただけます。
無料で登録する