PDFの中身を「聞いて答えて」くれるーーAdobeが会話型AIアシスタント機能を追加

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Image Credit : DALL-E made by BRIDGE

Adobeは本日(原文掲載は現地時間の20日)、AcrobatおよびReader製品向けに新しいAIアシスタントを発表した。これは世界中の企業や消費者が利用する、数兆件にもおよぶPDFファイルを解析したり、要約してくれる会話型の生成AI機能だ。

OpenAIや Anthropicのようなスタートアップの新たなAIシステムが同じような機能を提供する恐れがある中、この動きはAdobeは数十年前に自らが開拓したPDF市場でトップを維持しようとしていることを示している。

現在ベータテスト中のAIアシスタントは、ユーザーがPDFの内容について質問し、要約された回答を受け取ることができる。また、PDFから抽出した情報に基づいて、プレゼンテーションや電子メールなどの書式付きテキストを生成することもできる。

AcrobatとReaderに搭載された新しいAIアシスタントは、PDF文書との自然言語による対話を可能にし、コンテンツに関する質問に答えたり、要約を生成したりする。(出典:Adobe)

この機能は、Adobe Acrobatのリキッドモードをベースにしており、すでにモバイルデバイス上でレスポンシブな閲覧体験を提供している。PDFの構造とコンテンツを理解するAdobe独自の機械学習モデルを活用したもので、ドキュメントの要約を生成し、質問に答え、さらには電子メール、レポート、プレゼンテーションで使用するための情報にまとめ直してくれる。

人気のLLMと歩調を合わせる

Adobeの大規模なユーザーベースにとってこの意味は大きい。AIアシスタントは何兆ものPDFドキュメントを、インタラクティブで応答性の高いナレッジベースに変えることを意味する。機能には質問のサジェスト、生成的な要約の作成、インテリジェントな引用などが含まれ、AIが生成したコンテンツの出所や正確性がますます重視される時代には極めて重要な機能になることは間違いない。

Adobeは、AIアシスタントが顧客データを危険にさらすことはないと強調しており、厳格なデータ・セキュリティ・プロトコルを遵守し、AIトレーニングにおける文書コンテンツの使用には同意を求めている。このようなプライバシーへのコミットメントは、データの機密性が依然として最重要課題である企業領域において、競合他社に対する優位性をもたらすかもしれない。

生産性の未来

AIを文書管理に統合することで、特に長大な契約書や報告書、調査書を日常的に操作するナレッジ・ワーカーの生産性が再定義される可能性がある。AIアシスタントによって様々なドキュメントの種類やソースから洞察に容易にアクセスでき、AIを活用した提案によってオーサリングや編集が簡素化されるようになるだろう。AdobeはAIがフィードバックを分析・合成する能力によって共同レビューが強化される未来を描こうとしているのだ。

AcrobatとReader用の新しいAIアシスタントは、長い文書の要約された概要を素早く生成し、重要な情報を消化しやすい形式まとめてくれる。(出典:Adobe)

同社の戦略は、PDFフォーマットの牙城を維持するだけではない。進化するユーザーニーズに応え、OpenAIのChatGPTのようなLLMベースのアプリケーションに対抗するための当然の動きだ。既存のプラットフォームにAIを統合することで製品を強化するだけでなく、個人や企業のワークフローにより深く組み込まれることになる。

同社は、ベータ期間が終了した後、アドオン・サブスクリプションを通じてAIアシスタントの全機能を提供する準備を進めており、業界の新たなベンチマークとなり得る強力なツールを提供する態勢を整えている。この動きは、ドキュメントの消費と作成方法のシフトを促進し、デジタル時代のドキュメント・インテリジェンスの中心的ハブとしての同社の地位を強化する可能性がある。

競争が激化する中、同社が新たに提供するこのサービスはAIを活用し、地味なPDFに新たな実用性と革新性を加えることで、Adobeをデジタル文書業界の最前線に押しやることになるだろう。

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