電話DX SaaSのIVRy(アイブリー)、30億円をシリーズC調達——音声の複合AIシステム構築へ

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IVRy の皆さん。最前列左から5番目が代表取締役 CEO の奥西亮賀氏
Image credit: IVRy

対話型音声 AI のSaaSを提供する IVRy(アイブリー)は23日、シリーズ C ラウンドで30億円を調達したことを明らかにした。このラウンドは ALL STAR SAAS FUND がリードし、フェムトグロース・スリー、SMBC ベンチャーキャピタル、BRICKS FUND TOKYO(三菱地所の CVC)、Boost Capital が参加した。

これは IVRy にとって、2023年3月に実施したシリーズ B ラウンドに続くものだ。フェムトグロース・スリー(以前は、フェムトパートナーズとして)、SMBC ベンチャーキャピタル、BRICKS FUND TOKYO は以前のラウンドに続くフォローオン。今回の調達を受けて、IVRy の累積調達額は49.5億円に達した。

IVRy は、電話業務を自動化・効率化し、オペレーション集中や対応工数の削減を可能にする SaaS。自由な分岐設定や自動応答・SMS 返信・転送・録音・ブラウザ電話などの機能を活用することで、営業電話、顧客問い合わせ、注文、予約などのさまざまなシーンを自動化できる。2020年7月にβローンチ、2020年11月に正式ローンチした。

AI を活用した音声対話システムは、近年の深刻な人手不足を背景に、コールセンターの業務効率化や飲食店の無人営業、24時間体制での予約受付などの需要が高まっている。IVRy はそんな需要を追い風に創業わずか3年半で急成長を遂げ、47都道府県、80業界以上でサービスが導入されている。累計で1,900万件を超える通話実績を持ち、中小企業の人手不足問題の解決に大きく貢献してきた。

人手不足が深刻化する中、AI を活用して業務の自動化を進めることが急務です。我々は音声 AI で先行しているスタートアップですが、今回の資金調達を機に複合 AI の構築を加速させ、その対応力を飛躍的に高めていきます。(代表取締役 CEO の奥西亮賀氏)

今回調達した資金は、AI システムの高度化と事業の更なる拡大に充てられる。具体的には、海外で注目を集める「複合 AI(コンパウンド AI)システム」の構築が目標とされている。複合 AI とは、Transformer のような単一のモデルとは異なり、複数のコンポーネントが AI タスクに取り組むシステムのことだ。同社では SaaS として提供することで、高度な対話処理を実現する計画だ。

AI を最大限に活用し、最先端の技術をタイムリーに、しかも非対称性なく日本全国の企業に届けていきます。そして海外での展開も視野に入れています。(奥西氏)

同社では音声 AI で業務の自動化を進め、電話業務の DX(デジタルトランスフォーメーション)を強力に推進していく考えだ。AI の社会実装においては、ハルシネーション(幻覚、AI による事実に基づかない情報生成)への対策が欠かせない。同社ではハルシネーションを抑制しており、無人の予約代行など AI 活用フェーズに入っている。複合 AI の導入によりその対応力を一層高める。

調達資金の主な使途は、複合 AI システムの研究開発と、それを支える AI 人材の確保、そしてマーケティング強化にあてられる。同社には Google 出身の AI エンジニアらが在籍しているが、今後より多くの AI 専門家を採用する方針だ。またリクルートやビズリーチ出身者らも在籍し、事業やプロダクトを強力に支えている。

音声 AI の高度化とグローバル展開を見据え、さらに体制を強化していきます。ターゲットは中小企業を中心に業種や規模を問わず、電話受付の自動化ニーズに全力で応えていきます。(奥西氏)

人手不足が深刻化し、さまざまな業界でオペレーターの確保が課題視される中、AI による業務の自動化が切望されている。音声対話による AI 活用は、人手不足や業務効率化の切り札として、今後ますます重要になってくるとみられる。

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