SusHi Tech Challenge決勝で7社がピッチ、バイオマス・アップサイクルのファーメンステーションが優勝

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Image credit: SusHi Tech Tokyo 2024

昨年に引き続き、SuShi Tech Tokyo 内におけるピッチコンペティション「SusHi Tech Challenge」が、今年も熾烈な戦いを繰り広げた。昨年は核融合炉部品開発の京都フュージョニアリングが優勝に輝いたこのコンペティションに、今年は世界43カ国の507社からエントリーがあり、準決勝には20社が選出され、決勝には7社が残った。

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サステナブルな社会の実現に向けた革新的なビジネスアイデアと新技術を武器に、世界中から集まった有望なスタートアップが一堂に会し、総額1,000万円の賞金をかけて熱いピッチバトルを展開した。5分の短いプレゼンテーションに、観衆からは惜しみない拍手が送られた。審査の結果、バイオマス・アップサイクルのファーメンステーションが優勝した。本稿では、決勝に残った7社のピッチの内容を中心にお伝えする。

SuShi Tech Challenge 決勝で、審査員を務めたのは次の方々。

  • Miwa Seki,  MPower Partners Fund L.P. General Partner
  • Saemin Ahn, 500 Global, Southeast Asia Partner
  • Kirstin Hunter, Techstars Managing Director (NSW)
  • Ravi Belani, Alchemist Accelerator Managing Director & CEO
  • Murat Aktihanoglu, Remarkable Ventures and ERA Co-Founder/Managing Partner
  • Koichiro Nakamura, Sozo Ventures Founder & Senior Managing Director

【優勝】Fermenstation(日本)

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Fermenstation は、食品残渣を発酵させ、さまざまな食品素材や化粧品原料へと変換するバイオプロセスのプラットフォームを自社で構築している。例えばコーヒー粕からバニラフレーバーを作り出すなど、付加価値の高い製品化に注力している。

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製造工場と生産ラインも自社で保有しており、国際認証も取得済みだ。すでに大手食品メーカーと共同で商用生産に着手しているほか、海外での事業展開も視野に入れているとし、早期の製品投入を予告した。素材の高付加価値化でフードロス削減と新規収益化の両立を狙う。

Entomal Biotech(マレーシア)

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Entomal Biotech は、黒色の昆虫「クローバー幼虫」を活用して食品残渣を家畜の飼料や肥料へと変換するユニークな廃棄物処理ソリューションを提案した。分散型の小規模コンテナから大規模な中央バイオ廃棄物変換プラントの設置まで、あらゆるフードチェーンへの導入を目指しているとのこと。

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家畜飼料の供給不足解消や食料安全保障の確保に寄与できるだけでなく、従来の廃棄物の埋め立て処理に比べて温室効果ガスの排出量を大幅に削減できることをアピールした。すでにマレーシアで中央プラントのモデルケースを立ち上げており、世界最大のパーム製糖業者とも提携し、食品残渣からの高付加価値製品の生産に乗り出している。近々100万米ドル規模の資金調達を実施し、本格的な世界展開を狙う構えだ。

Cool Innovation(日本)

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Cool Innovation は、水冷方式によって低温多湿の環境を作り出す驚異的な技術を武器に、果物や野菜の鮮度を長期間保つことができると提案した。イチゴが26日経っても鮮度が保たれている実物サンプルを見せるなど、その長期保存の威力を実演し聴衆を驚かせた。また、ブドウでも3ヶ月保存可能なことをアピールした。

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収穫後の食品ロス削減に大きく寄与できるだけでなく、従来の冷蔵庫と比べてエネルギー消費量を50%以上抑えられるといった環境配慮も売りにした。かつてないフレッシュ保存技術として、既に日本を含む複数の国で導入が進んでおり、今後トラック用のソリューションの投入も視野に入れている。

BUYO Bioplastics(ベトナム)

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BUYO Bioplastics は、発酵プロセスでバイオマス由来のバイオプラスチックを製造する革新的なソリューションを提示した。使い捨てプラスチックに替わる環境に優しい新素材で、耐熱性や耐湿性に優れ、一般的なプラスチックとほぼ同等の物性を持つと主張した。

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大手食品メーカーはもちろん、環境規制の強化に伴いプラスチック削減に取り組む企業とも具体的な協業を進めており、ペットボトルをはじめとする既存ライン製品への展開を狙っている。再生プラスチックにも劣らない高い環境適合性と機能性を訴求し、新素材としての大きな市場が期待できるとアピールした。

CancerFree Biotech/精拓生技(台湾)

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CancerFree Biotech は、がん患者の治療に革命を起こすことを目指す企業だ。従来の標準的ながん治療は、患者個人に合わせて最適化されていないため、効果が出るまで時間とコストがかかる。同社は、患者の血液サンプルからがん細胞を取り出し、研究室内で培養、がん細胞に対し複数の治療薬をテストすることで、最も効果的な薬剤を事前に特定できる。

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すでに Cancerfree Biotech は、46,000人以上のがん患者に適切な治療法を提案してきた。同時に、製薬企業向けに新薬の臨床前テストサービスも提供している。創業から着実に収益を上げており、患者支援と企業向けサービスの両面で成長を続けている。同社の目標は、個別化された精密医療を実現し、いつかはがん治療のプラットフォームを構築することだ。

e-Port(シンガポール)

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e-Port は、港湾運営のデジタル化とサービス最適化を行うプラットフォームを開発した。海上物流は長らく非効率な古いシステムが残っており、膨大な量の書類処理や人的ミスが発生していた。e-Port は、港湾で行われるすべての業務工程をデジタル化し、関係者を API で連携させることで、リアルタイムでデータを共有・活用できる環境を実現した。

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例えば、従来は予約や領収書の処理が紙ベースで行われていたが、E-Port のプラットフォームを使えばモバイルアプリで予約し、デジタル領収書が発行される。さらに E-Port は、蓄積したビッグデータと AI アルゴリズムを組み合わせ、港湾サービスの最適化と効率化を図っている。既に25%の排出量削減に成功するなど、脱炭素化にも大きく貢献している。

Degas(日本)

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Degas はアフリカの小規模農家に着目し、フィンテックとアグリテックを組み合わせた革新的なプラットフォームを展開している。同地域には6億人以上の小規模農家が存在するが、恵まれない環境下で生活を送っている。Degas は農家に資金と技術支援を提供し、生産性の向上を図る。具体的には、肥料などを農家に融資し、営農指導も行う。収穫後は現物で返済を受け、トウモロコシなどの農産物をコモディティとして企業に売却する、新しいビジネスモデルを構築した。

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農家の所得が2倍になった例も多数ある。また、衛星画像と AI を組み合わせた独自の地理空間モデルで、遠隔からの農地モニタリングと最適化支援も実現している。さらに Degas は、再生農法の指導や土壌のCO2吸収量の計測により、脱炭素化に尽力。そのデータに基づきカーボンクレジットの創出も視野に入れている。パートナー企業からの出資も得ながら、22カ国で220人のチームを展開中だ。ビジネスが成長すれば、環境とコミュニティの両方に大きなインパクトを与えられる。

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