アクセルスペース、宇宙機器の軌道上実証サービス「AxelLiner Laboratory(AL Lab)」をローンチ

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アクセルスペース Co-CTO の永島隆氏
Image credit: Masaru Ikeda

アクセルスペースは17日、都内で記者会見を開き、宇宙機器の軌道上実証サービス「AxelLiner Laboratory(AL Lab)」を発表した。このサービスは、企業に対して、宇宙用コンポーネントや機器の軌道上実証を高頻度かつ柔軟に提供することを目的としている。

アクセルスペースは2008年創業の小型衛星開発スタートアップで、「宇宙を普通の場所に」というビジョンのもと事業を展開している。現在160名強の従業員を抱える同社は、これまでに10基の人工衛星を設計・開発・製造・打ち上げ・運用してきた実績を持つ。主な事業として、量産に向けた衛星プラットフォーム「AxelLiner」と地球観測サービス「AxelGlobe」を展開している。

Image credit: Masaru Ikeda

今回発表された AL Lab は、宇宙産業の発展に伴い高まっている小型衛星、特に100kg級衛星へのニーズに応えるものだ。従来の軌道上実証サービスでは、打ち上げ機会の少なさや高コスト、自由度の低さなどが課題となっていた。AL Lab はこれらの課題を解決し、宇宙技術の迅速な実用化を支援することを目指している。

AL Lab の主な特徴は以下の通りだ。

  • 年間複数回の定期的な実証機会の提供
  • 6U〜18U までの幅広いサイズに対応可能な柔軟な搭載条件(1U は、10cm 3辺の容量単位)
  • 設計支援ツール「AxelLiner Terminal(アクセルライナーターミナル)」の提供
  • バスシステムのエミュレータによる事前検証支援
  • 実験結果のレビューと解析支援
  • 技術成熟度(TRL)の評価と認証
Image credit: Masaru Ikeda

アクセルスペース Co-CTO の永島隆氏は、「AL Lab が宇宙技術の開発サイクルを加速させ、日本の宇宙産業の競争力強化に貢献することを期待している」と述べた。また、このサービスが国の宇宙開発プログラムを補完し、民間企業の宇宙ビジネス参入を促進する役割を果たすことも強調した。

AL Lab の第1号案件として、長野に本拠を置く電気機器メーカーのシナノケンシとの共同開発による、リアクションホイールの軌道上実証が予定されている。リアクションホイールは衛星の姿勢制御に不可欠な重要コンポーネントであり、日本の産業界が強みを持つモーター技術を活かした開発が期待されている。

Image credit: Masaru Ikeda

アクセルスペースは、AL Lab を通じて宇宙機器メーカーの開発効率を高め、フライトヘリテージ(宇宙での動作実績)の早期獲得を支援する。また、ミッション機器開発者向けのラピッドプロトタイピングや、宇宙ビジネスに参入を検討する企業向けの手軽な実験機会の提供も視野に入れている。

シナノケンシは、創業107年の歴史を持つ企業で、「世界中の人々の希望と快適を形に」をミッションに掲げ、モーター技術を強みとしてグローバルに事業を展開している。同社は宇宙関連市場を今後の成長市場と位置付け、特に小型人工衛星向けの基幹部品の開発に注力している。

シナノケンシ代表取締役の金子行宏氏
Image credit: Masaru Ikeda

シナノケンシ代表取締役の金子行宏氏によると、2020年からアクセルスペースと共同で、小型人工衛星の姿勢制御装置に使用されるリアクションホイールの開発を進めてきた。金子氏によると、同社の小型・軽量・低振動というモーター技術の強みが、宇宙での使用に適していると考えたという。

開発は順調に進み、2024年9月には地上での実証が可能な製品が完成、12月には製品開発が完了する予定だ。しかし、宇宙市場での実用化には軌道上での実証が不可欠であり、その機会が限られていることが課題だった。この課題解決に向け、シナノケンシは AL Lab を活用し、早期に軌道上実証を行う。これにより、技術の成熟度を高め、販売拡大につなげる狙いだ。

開発中のリアクションホイール
Image credit: Masaru Ikeda

今後の展開として、シナノケンシは100kg級から300kg級の人工衛星に対応したリアクションホイールのラインナップを順次拡大し、2026年までにアメリカと日本で実証を行う計画だ。金子氏は「宇宙空間を活かした社会価値の実現を加速させるべく活動を進めていく」と述べ、宇宙ビジネスへの意欲を示した。

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