未来の食「4つのイノベーション」コーヒーからサプリメントまで、社内起業でつくる新しい食体験

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二子玉川にある蔦屋家電+(プラス)で開催中の展示会「未来に繋ぐ食のイノベーション」

本稿はコーポレートアクセラレーターを運営するゼロワンブースターが運営するオウンドメディア「01 Channel」からの転載記事

ゼロワンブースターでは8月1日から7日まで、東京都世田谷区の「蔦屋家電+(プラス)」にて、「未来に繋ぐ食のイノベーション」と題した新4事業の合同展示会を開催しています。ゼロワンブースターが推進する事業を含む4つの革新的な食品関連事業が、それぞれのユニークな製品や技術を披露。

持続可能性と健康を重視した次世代の食品開発に焦点を当てたこの展示会では、食べるコーヒー、丸ごと飲める緑茶、ミスト型サプリメント、3Dプリンターで作るパーソナライズグミサプリなど、従来の概念を覆す製品を紹介いたしました。社内ベンチャー制度で企画立案した後ゼロワンブースターで事業化を進める事業責任者や、日本での展開を進める海外企業の関係者が発表した内容をまとめてお送りいたします。

コーヒーをまるごと食べる新素材「カフェレート」

カフェレートを企画・開発する糸山彰徳氏

カフェレートは、コーヒーを飲むのではなく「食べる」という革新的な概念を提案するスイーツです。この斬新なアプローチは、従来のコーヒー抽出方法の課題に着目することから生まれました。通常のコーヒーでは、豆の約70%がフィルターに残ってしまい、アロマオイルなどの多くの美味しさが失われてしまいます。カフェレートは、この問題を解決し、コーヒー豆本来の味わいを余すことなく楽しめる製品を開発しました。

製造方法は、コーヒー豆を丸ごと微粉砕し、ココアバターと練り込むというものです。この独自の製法により、見た目はチョコレートに似ていますが、味わいは純粋なコーヒーそのものです。プレゼンテーションでは、ロースト系とフルーティー系の2種類のサンプルが紹介され、それぞれ異なる香りと味わいを楽しめることが強調されました。

カフェレートの特徴は、香りの豊かさにあります。従来の粉末コーヒーでは失われがちだった豆の香り成分を、微粉砕とココアバターへの練り込みによって保持することに成功しています。これにより、コーヒー豆の個性をダイレクトに味わうことができる、まさに「イノベーション」と呼ぶにふさわしい製品となっています。

ターゲット層としてはまずコーヒー愛好家を想定しており、コーヒーを愛する人々に、今まで捨てられていた部分も含めて全ての味わいを楽しんでもらいたいという思いが込められています。また、この新しい食べ方がサステナブルであることも強調されており、環境意識の高い消費者にもアピールする要素となっています。

「食べる」コーヒー「カフェレート」

事業モデルとしては、一般消費者向けの製品販売だけでなく、原料としての販売も行っています。すでに多くの製菓事業者やカフェ、コーヒー事業者からの関心を集めており、都内ショップでの取り扱いも始まっています。最近では、プレミアム食品展示会で賞を受賞するなど、業界からの注目度も高まっています。

今後の展開としては、10月1日の「コーヒーの日」に向けて、さまざまなイベントやコラボレーションを計画しています。ポップアップカフェやイベント参加を通じて、より多くの人々に製品を知ってもらうとともに、試食の機会を提供する予定です。さらに、バレンタインシーズンに向けた新製品の開発も進行中で、コーヒー好きの方々に新しい贈り物の選択肢を提供することを目指しています。

コーヒーの全てを丸ごと味わい尽くすというアプローチが、コーヒー業界に新たな価値をもたらし、持続可能な形で発展することで、コーヒーの楽しみ方に新たな選択肢を提供するものとなるはずです。

茶葉をまるごと飲む、シングルオリジン緑茶「ALL GREEN」

ALL GREENの開発者、吉原慶太氏

ALL GREENは、日本の伝統的な飲み物である緑茶に新たな価値を見出し、革新的なアプローチで提供する事業です。開発者の吉原慶太氏は、コーヒーマイスターとしての経験を持ちながら、緑茶の技術開発を担当した際に、緑茶の持つ潜在的な可能性に衝撃を受けたことがきっかけで、この事業を立ち上げました。

ALL GREENの特徴は大きく二つあります。一つ目は、シングルオリジン(単一品種・単一農園)の緑茶がスペシャルティコーヒーに匹敵する多様な香味を持っているという点です。日本各地には様々な製法や品種の緑茶が存在し、それぞれが独特の風味を持っています。例えば、桜餅の香りがするお茶、クチナシの花のような香りがするお茶、大豆のような香りがするお茶など、多様な風味が楽しめます。

二つ目の特徴は、緑茶の葉には野菜以上の栄養が含まれているという点です。乾燥重量で比較すると、緑茶の葉はケールなどの野菜よりもビタミンE、βカロテン、食物繊維などの栄養素が豊富です。さらに、緑茶特有のカテキンなど、健康に有益な成分も含まれています。

ALL GREENは、これらの特徴を最大限に活かすため、「ソリュブル・リーフ製法」という独自の粉末化技術を開発しました。この技術により、冷たい水にもさっと溶け、緑茶の繊細な香りをそのまま楽しめる製品が実現しています。従来の粉末緑茶では、ご自宅で水やお湯に溶かして飲む際にで強固なダマができてしまい、美味しさが損なわれる問題がありましたが、この新技術によってその課題を克服したのです。

使用する茶葉にもこだわりがあります。栽培面積が全体の1%未満という希少な品種を使用し、世界で最も希少な抹茶を目指しています。これにより、スペシャルティコーヒーのトップグレードをはるかに上回る希少性を実現しています。

ALL GREENの目標は、緑茶をアップデートし、国内外に新しい緑茶の魅力を発信することです。日本の緑茶産業は過去20年で生産量が4分の1に減少するなど、厳しい状況に置かれています。しかし、世界に目を向けると、スーパーフードとしての緑茶の需要は急成長しています。ALL GREENはこの世界的なトレンドに乗って、日本の緑茶文化を再活性化させることを目指しています。

この製品は、コーヒーのような嗜好性の高さとスムージーのような健康効果を併せ持つ、新しいスタイルの飲料として位置付けられています。さまざまな緑茶の味わいを日々楽しみながら、野菜を超える栄養も摂取できるという、まさに一石二鳥の製品と言えるでしょう。

ALL GREENは、日本の伝統的な飲み物である緑茶に新たな価値を見出し、現代のライフスタイルに合わせて再提案しています。健康志向の高まりや、多様な味わいを求める消費者のニーズに応える製品として今後の成長が期待されます。

ミストで飲むサプリメント IN MIST

IN MISTプロジェクトの起案者、長田知也氏

IN MISTは、サプリメントの摂取方法に革新をもたらす新しい形態のサプリメントです。開発者の長田氏は、従来のサプリメントが持つ課題、特に吸収効率の低さや習慣化のしにくさに着目し、これらを解決する新たな方法として、ミストタイプのサプリメントを考案しました。

IN MISTの最大の特徴は、液体のサプリメントをスプレーボトルに詰め、直接口内に噴射して摂取するという斬新な方法です。この方法には、主に三つの利点があります。第一に、手軽さです。ワンプッシュするだけで必要な栄養素を摂取できるため、忙しい現代人のライフスタイルに適しています。水を用意する必要もなくいつでもどこでも簡単に摂取できます。

第二に、飲みやすさです。液体をミスト状にすることで、美味しく、抵抗なく摂取することができます。錠剤を飲み込むことが苦手な人や、子供たちにも適しています。

最後は吸収のしやすさです。液体形態のサプリメントは、錠剤と比べて体内での吸収率が高いとされています。さらに、口腔内で吸収される成分もあるため、より効率的に栄養を摂取できる可能性があります。

現在、IN MISTは3種類の製品をラインナップしています。最も人気が高いのは、ビタミンC配合の製品です。1回のプッシュで1日分のビタミンCを摂取できる点が特徴で、美容に関心の高い顧客から支持を得ているそうです。ビタミンCは体内での持続時間が短いため、従来は1日に複数回摂取する必要がありましたが、IN MISTなら手軽に頻繁な摂取が可能になります。

2つ目の製品は、8種類のビタミンを含むマルチビタミンタイプです。1回のプッシュで複数の栄養素を効率的に摂取できます。

3つ目は、就寝前用のサプリメントです。ジャスミンの香りが特徴で、リラックス効果も期待できます。枕元に置いておき、就寝前に使用することで、心地よい睡眠をサポートします。これらの製品は、1本2,980円で約4週間分が摂取できるようになっています。その革新的なデザインと機能性が評価され、グッドデザイン賞も受賞しました。

IN MISTの開発には、現代社会におけるサプリメント摂取の課題解決という明確な目的があります。多くの人々がサプリメントの必要性を感じながらも、継続的な摂取が難しいという現状に対し、より手軽で習慣化しやすい方法を提供することを目指しています。

今後の展開としては、さらなる製品ラインナップの拡充や、個人のニーズに合わせたカスタマイズ製品の開発なども検討しているそうです。また、美容や健康に関心の高い海外市場への展開も視野に入れています。

NOURISH3D 3Dプリンターで作ったパーソナライズグミサプリ

NOURISH3Dを日本で展開するRem3dy Health Japan株式会社の朝見陽次氏

NOURISH3Dは、3Dプリンター技術を活用して、個人のニーズに合わせてカスタマイズされたグミ型サプリメントを製造する事業です。この事業は、従来のサプリメント摂取における課題、特に多種類のサプリメントを摂取する必要性や持ち運びの不便さに着目し、それらを解決する新たな方法として開発されました。

個人のライフスタイルや栄養ニーズに合わせて、最適な栄養素の組み合わせを提供できる点がNOURISH3Dの最大の特徴です。驚くべきことに、600億通りもの栄養素の組み合わせから、その人に最適な栄養素の組み合わせを選択し、一つのグミに配合します。これにより、複数の栄養素を一度に摂取することができます。

また、利用方法は非常にシンプルです。顧客は簡単なアンケートに答えるだけで、自分に最適な栄養素の組み合わせを決定することができます。さらに、好みのフレーバーを選択することも可能です。これにより、栄養面だけでなく味の面でも個人の好みに合わせたサプリメントを提供することができます。

このパーソナライズされたグミサプリメントには、従来のサプリメントと比較して以下のような利点があります。

パーソナライズされたグミサプリメントの利点

  1. 水なしで摂取できる手軽さ …… グミ状なので、水がなくても簡単に摂取できます。
  2. 複数の栄養素を一度に摂取 …… 7種類の栄養素が1つのグミに凝縮されているため、複数のサプリメントを摂取する手間が省けます。
  3. 持ち運びの容易さ …… 1つの小さな袋に必要な栄養素がすべて含まれているため、持ち運びが非常に簡単です。
  4. 美味しく楽しい摂取体験 …… グミ状で味も選べるため、サプリメント摂取が楽しい経験となります。

NOURISH3Dは、最新の3Dプリンター技術を活用して製造されています。この技術により、個々の顧客のニーズに合わせて、正確な栄養素の配合が可能となっています。

現在のNOURISH3Dは主に一般的な栄養補給を目的としていますが、今後の展開としては、より細かなパーソナライゼーションや、特定のニーズに合わせた製品開発を計画しているそうです。例えば、アスリート向け、妊婦向け、高齢者向けなど、特定のライフステージやライフスタイルに合わせたカスタマイズ製品の開発が考えられます。

また、顧客との継続的なコミュニケーションを重視しています。定期的なフィードバックを通じて、顧客の健康状態や生活習慣の変化に応じて、栄養素の組み合わせを調整することも可能です。これにより、長期的な健康管理のツールとしての活用も期待されています。

8月末には大阪でポップアップストアを開催予定など、事業展開は着実に進んでいるとのこと。これにより、より多くの人々がNOURISH3Dの製品を直接体験し、パーソナライズされたサプリメントの魅力を感じることができることでしょう。


この「未来に繋ぐ食のイノベーション」展示会で紹介された4つの事業は、それぞれが独自の視点と技術で食の未来を切り開こうとしています。コーヒーを食べる、緑茶を丸ごと摂取する、サプリメントをミストで吸入する、3Dプリンターでパーソナライズされたグミサプリを作る——これらの革新的なアプローチは、私たちの食生活や健康管理の方法を大きく変える可能性を秘めています。

これらの事業に共通しているのは、従来の常識や既存の製品の課題に真正面から取り組み、新しい技術や発想を導入することで解決策を見出そうとしている点です。また、健康と持続可能性への配慮も重要な要素となっています。そしてそれによって私たちの食生活や健康がどのように変化していくのか、非常に興味深い展開が期待されます。

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