登壇25社領域別紹介:KDDI ∞ Labo全体会登壇まとめ第2弾——AI、XR、SaaS、フィンクテック領域スタートアップ【1月~6月・保存版】

本稿はKDDIが運営するサイト「MUGENLABO Magazine」掲載された記事からの転載

前回からの続き)

全3回でお届けする、2024年上期KDDI ∞ Labo登壇スタートアップ紹介。第2弾は登壇スタートアップ25社を領域別にご紹介します。

AIとデータ活用

企業の業務効率化と意思決定の高度化を支援するため、AIとデータ活用技術が急速に進化しています。社内情報の横断検索や人材採用、データ分析、情報セキュリティ管理など、多岐にわたる分野で個別特化型のソリューションは、従来の課題を解決するだけでなく、AIの力を活用して新たな価値を創出し、ビジネスの在り方そのものを変革する可能性を秘めています。

誰もが悩む資料検索をAIの力で解決! – Onikle

NapAnt

Onikleは、生成AI搭載エンタープライズサーチエンジン「NapAnt」を開発しています。このサービスは、社内に散在する情報を一括で検索可能にし、業務効率を向上させることが狙いです。

NapAntを通して、社内で利用しているMicrosoft365やBox、Google Workspace、Slack、SalesforceなどのSaaSアプリケーションやクラウドのファイルサーバー等と連携することで、社内情報を一括で横断検索することを可能にし、最大で40%の社内情報時間の削減を実現し、業務効率化に貢献します。

Onikle代表取締役CEOである立野温氏は、筑波大学発の研究成果を実用化する形で起業しました。従業員数500名以上の組織では、情報検索に1日1-2時間程度費やしているという課題に着目し、その解決を目指しています。これは、500名規模の会社であれば月4,000万円ほどの損失になっているという統計があります。NapAntは1IDにつき月額5,000円(2024年6月時点)で利用可能です。

新世代のAIを活用した人材採用サービス! – NGA

次世代人材採用サービス「HelloBoss」の特徴

NGAは、AIを活用した次世代の人材採用サービス「HelloBoss」を提供しています。同社のシステムは、独自のAIアルゴリズムを用いて求職者のスキルや経験を分析し、企業の求人要件との最適なマッチングを実現します。

HelloBossは、企業と求職者を直接つなぐ第3世代AI採用アプリとして、従来の採用プロセスの非効率性を解消します。特徴として、AIによるマッチング・チャット機能、ChatGPTを活用した求人募集要項と自己PRの自動作成、生成AIによる履歴書写真の自動生成機能があります。さらに、国内最大級の540万社の企業データベースを無料で提供しています。

料金体系は求職者が無料で利用でき、企業側も月額無料から利用可能です。

採用成功時の手数料も不要で、企業の採用コストを大幅に削減できます。リリースから1年でユーザー数は10万人を突破し、DIORやMarriott、Estée Lauderなどのグローバル企業を含む1,000社以上の企業に導入されています(2024年8月時点)。

シリアルアントレプレナーが率いるHR Techの最先端企業! – パトスロゴス

PathosLogosのサービスイメージ

パトスロゴスは、HR共創プラットフォーム「PathosLogos」を展開しています。このサービスは、大手企業向けの人事給与システム基盤を提供し、企業が抱える経営・人事課題をタイムリーに解決できるよう支援しています。

代表取締役の牧野正幸氏は、以前に大手企業向け人事給与システムの開発元を創業した経験を活かし、統合型から脱却した新しい人事システムの必要性に応えるべく起業しました。

PathosLogosはいわゆるPaaS型サービスで、市場にある様々なHRテックが連携できる基盤を提供しようとしています。このプラットフォームは、従来の統合型人事システムの課題を解決し、クラウドやスマホなど現代の働き方に適したテクノロジーを活用しています。同社には人事業務に長年関わってきたスペシャリストが集まっており、日本の大手企業の間接部門の業務効率化だけでなく、ツールを通した人材のDX化を目指しています。

煩雑な社内データをすべて統一! – Srush

データを一元管理できるSrush

Srushは、データ統一クラウド「Srush」を開発・提供しています。このプラットフォームは、企業内の多様なデータソースを統合し、ノーコードで高度なデータ分析を可能にします。AIによる自動解析機能を搭載し、ビジネスユーザーでも簡単にデータドリブンな意思決定を行えるよう支援しています。

実績として、大手飲食チェーン、大手調味料メーカー、大手化粧品メーカーなどに導入され、需要予測、販売管理、CDPとして活用されています。Srushの代表取締役である樋口海氏は、企業のデータ活用における人材不足や専門知識の不足という課題に着目し、誰でも扱えるデータ分析ツールの必要性を感じて起業しました。

ISMSのオートメーションツールを提供! – SecureNavi

SecureNaviウェブサイト

情報セキュリティ認証オートメーションツールを開発・提供するのが「SecureNavi」です。このサービスは、企業の情報セキュリティマネジメント業務をデジタル化し、効率的な運用を可能にします。COOの久高拓海氏によると、ISMSやPマークなどの認証取得・維持はWordやExcelでのアナログな運用が多く、この運用を続けていくと文書ファイルの数が雪だるま式に増えていくという問題があったそうです。

そこでこの情報セキュリティ認証に特化したクラウドサービスを開発したのがSecureNaviでした。

特に、業界ごとに異なるセキュリティ規制を統合的に管理できる点が特徴で、企業や自治体との取引に必要な情報セキュリティ認証の取得・維持を効率化できるだけでなく、大量のセキュリティ規制や台帳の管理を効率よく行うことも可能にします。SecureNaviは「悲報をなくす」というビジョンのもと、情報セキュリティ認証や規制、ガイドラインへの準拠、社内の情報セキュリティ規程の整備・運用、監査や審査への対応などの「文系のセキュリティ」分野でSaaSサービスを提供しています。

XR(AR/VR/MR)とメタバース

XR(AR/VR/MR)とメタバース技術の進化は、現実世界とデジタル世界の境界をますます曖昧にしています。パリティ・イノベーションズの「パリティミラー」は、独自の光学技術を用いて空中に映像を投影する革新的なデバイスを開発しています。Oの3D空間でのコラボレーションを可能にするVR技術や、MarbleXRの現実空間に仮想オブジェクトを重ね合わせるXR技術は、ユーザーインターフェースやコミュニケーションの形を変える可能性に挑戦するものです。それではこの領域のスタートアップについて詳しく見ていきましょう。

未来のUI・空中ディスプレーを開発! – パリティ・イノベーションズ

パリティ・イノベーションズは、「パリティミラー」という独自の光学素子を開発する、2010年設立のベンチャー企業です。

この技術は液晶ディスプレイなどに表示した映像を空中に映し出すことを可能にし、新しいユーザーインターフェースの可能性を切り開いています。パリティミラーは、一度の樹脂成形で製造可能で量産性が高く、プラスチックの板1枚で背面に配置したものがそのまま空中映像化できるという特徴があります。平面鏡と同じ鏡映像の結像が可能で、立体物も結像できます。また、固有焦点距離がないため光学系の設計も不要です。

代表取締役の前川聡氏は、国立研究開発法人情報通信研究機構での研究経験を活かし、SF映画で描かれるような未来技術の実現を目指して起業しました。展示会での反響を通じて、空中映像技術への社会的ニーズを実感し、実用化を決意したと言います。パリティミラーは、エンターテインメントから産業応用まで幅広い分野での活用が期待されています。同社は、この技術を通じて、現実空間に空中映像による仮想物体が当たり前のように存在する世界の実現を目指しています。

生産性追求型リモートワークツールとは一線を画す、クリエイティブ思考を育む仮想空間「MEs」 – O

MEs(ミーズ)ウェブサイト

Oは「MEs(ミーズ)」というクリエイティブ思考を育む仮想空間を提供しています。このプラットフォームは、3D仮想環境を利用したコラボレーションツールで、クリエイターやチームがアイデアを視覚的に共有し、プロジェクトを発展させることができます。

代表取締役CEOのa春氏は、AI時代における人間の創造性の重要性に着目し、誰もが美大のような創造性と共感力を養える環境をデジタル世界に構築することを目指しています。学歴や家庭環境に依存せず、「機械には難しいが、人間が真価を発揮できるクリエイティブシンキングを実現したい」という思いから、このプラットフォームを開発しました。

AR/MRプラットフォームアプリ「mARble」を展開 – MarbleXR

ARアプリ「mARble」

MarbleXRは、AR/MRプラットフォームを展開するスタートアップです。主なサービスには、ブロックチェーンウォレットと連携したARアプリ「mARble」があり、ユーザーは実世界でデジタルコンテンツやNFTとインタラクトできます。また、モンスターや人型キャラクターなどのオリジナルキャラクターも制作しています。現実空間に仮想オブジェクトを重ね合わせる技術を用いて新たな顧客体験を創出し、大企業、団体、アーティストなどがAR/MRコンテンツを展開できる環境を提供するのが同社です。代表取締役の木村沙那・ダイアナ氏は幼少期からエンターテインメントが大好きで、空中にキャラクターやエフェクトが飛び交う世界を夢見ていたという経験が、このmARbleの開発につながっているそうです。

決済と認証技術

生活を支える「支払い」というテーマに挑戦しているスタートアップも全体会に参加していただきました。クロスボーダー決済の効率化や、ハンズフリーで高セキュリティな認証システムなど、新たな技術が登場しています。これらのイノベーションは、国際取引の障壁を低減し、日常生活における認証や決済の煩わしさを解消することで、ビジネスと個人の双方に大きな利便性をもたらす可能性を秘めています。

低コストでのクロスボーダー決済を実現! – RemitAid

クロスボーダー決済プラットフォーム「RemitAid」

クロスボーダー決済プラットフォーム「RemitAid」

RemitAidは、クロスボーダー決済プラットフォーム「RemitAid」を提供しています。このサービスは、海外企業との取引における高い手数料とオペレーション負荷の課題を解決します。

RemitAidを利用することで、企業は海外支社を設立せずに売上金回収のための現地口座を開設でき、国際送金の手間を省くとともに振込情報の可視化が可能になります。サービスの料金体系は、固定費が月額無料から15万円、決済処理手数料が1件あたり1,500円から2,000円、為替手数料が精算額の0.30%から0.35%となっています。これらの料金設定により、通常の決済よりも低コストでの取引が実現するそうです。

RemitAidは、まず日本の輸出企業向けの支援から始め、将来的には送金側のニーズにも対応し、輸出入両面から日本企業の国際競争力強化を目指しています。最終的には海外から海外の取引まで事業を拡大し、より円滑な国際取引の実現を通じて、「必要な人に必要なモノが届く世界」を目指すそうです。

財布も鍵も不要!次世代ハンズフリー認証技術の全貌! – Sinumy

Sinumyの利用が期待できるシーン(同社ウェブサイトより)

Sinumyは、個人認証技術と位置測定技術を組み合わせた「PaylessGate Technology」を開発しています。これは従来からある知識認証(IDとパスワードの組み合わせ)、所有物認証(スマートフォンのチップやICカードなど)、生体認証(指紋や顔など)の課題を解決する新たな非接触認証の技術です。

この「ハンズフリー認証」の実現にはその場所でその人を特定する技術が必要で、かつスマートフォンで利用可能、ハンズフリー、省電力という複数の条件を満たすものはBluetoothしかありません。一方で、Bluetoothは位置精度が十分でなく、なりすましに弱いというセキュリティ面の問題がありました。

同社の倉内亮弥氏によると、Sinumyの技術は、Bluetoothを利用して誤差10cmの高精度位置測定することが可能で、スーパーコンピューターでも破られない高セキュリティな認証を実現したそうです。これにより改札や入退室、決済など幅広い場面での活用が期待されています。Sinumyは、この次世代のハンズフリー認証技術を通じて、鍵・財布・ICカード・クレジットカード・会員証・駐車カードなどを意識することなく認証される世界の実現を目指しています。将来的には、認証や決済のたびに何かを取り出す必要のない、スマートフォンをカバンやポケットに入れているだけで認証される社会の創造を視野に入れているそうです。

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