「開発者への感動を大切にしたい」:1行のスクリプトでウェブサイトを多言語化できる「Wovn」のチームに会ってきた

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Wovn-teamWovnの林さん(左)とジェフ(右)

普段から、本当にたくさんの新サービスのリリースを読んだり、紹介を受けたりする。そんな中で、おっと思うサービスに共通することは「一言で説明できる」こと。最近出会ったそんなサービスが、ミニマル・テクノロジーズ(Minimal Technologies)が手掛ける「WOVN.io(ウーヴェン)」です。ファウンダーでCEOの林鷹治さんと、共同ファウンダーのジェフ・サンドフォド(Jeff Sandford)さんにお話を伺いました。

Wovn.ioは、たった一行のJavascriptのコードを追加するだけでウェブサイトを多言語化できるサービス。実際に個人ブログ「TechDoll」のAbout Meのページに追加してみたけれど、私でもサクッとできるくらい超簡単。ページの右下にWOVNのウィジェットが表示されて言語を切り替えられるように。現在は、英語、中国語、フランス語など11言語に対応してる。

多言語化したいページのURLを登録すると、WOVNがHTMLを解析してテキストを抽出してくれる。翻訳ボタンを押すと、マイクロソフトの機械翻訳サービスが翻訳。機械翻訳の精度が心配な場合は、ダッシュボードで直接翻訳をいじることも可能。テキスト量が多くない1ページだと、ダッシュボードの準備が完了するまで3分もかからなかった。最初の登録とスクリプトの追加を入れて5分かな。

あるサービスにヒントを得て、雑談の中で生まれたアイディア

Wovn-website-screenshot

CEOの林さんは、「STORES.jp」などで知られるブラケット出身。同社でエンジニア兼グロースハッカーとして仕事するなかで出会ったのが「Optimizely」だった。ウェブサイトにスクリプトを一行追加するだけでABテストを出し分けできるサービス。

「ブラケットの同僚と話しているときに、Optimizelyの仕組みをウェブサイトの多言語化に応用できると思いつきました。ABテストは単価も高いですし、実施するハードルもある。でも、ウェブサイトやコーポレートサイトなどを多言語化したい人はもっとたくさんいるはず。AとBを出し分けるのと同じ仕組みを使って、日本語、英語、中国語と切り替えられれば、きっと使ってくれる人がいると考えました」(林)

林さんによると、日本語がインターネット上に占める割合はわずか5%。一番多いのが英語で、それでも全体の30%にとどまり、次いで多いのが中国語で20%。主要言語をすべて合わせて、やっとインターネット上の半分の文章が理解できる。そんな言語の壁を、超簡単かつ安価に解決できるのがWOVNなのです。

アメリカから呼び寄せた共同ファウンダー

Wovn-Jeff-SushizanmaiWOVNに参加するためにシカゴから日本に来たジェフ(すしざんまい風)

WOVNのアイディアを思いつき、Incubate Fundからシード投資を受けて今年3月に会社を設立。共同ファウンダーのジェフとは、友人の紹介で知り合ったと言います。日本のスタートアップには珍しく、WOVNの共同ファウンダーは海外から参画しています。

「エンジニアを探しながら、最初の数ヶ月間はひとりで開発をしていました。紹介してもらったジェフは当時シカゴにいたので、最初はSkypeでインタビューをして。彼はコンピューター サイエンスの学科の卒業で、エンジニアとしての実務経験もあったため、3ヶ月でVISAを取得して日本に来てもらうことができました」(林)

「昔から言語を学ぶことが好きで、学生時代から海外で仕事をしたいと思っていました。実際、日本にも2年間、英語教師をしながら住んでいたことがあった。だから、エンジニアとして日本に行くことは僕にとってワクワクするアドベンチャーだった。WOVNは、ローカライゼーションの際に必ずぶつかる言語の壁を解決する素晴らしいサービスだと思った」(ジェフ)

一番のこだわりは、開発者が感動するかどうか

WOVNは、できることもシンプルなら、そのデザインもシンプル。英語のみのダッシュボードを使ってみると、そもそも言葉が少なく迷うことがない。WOVNのデザイナーは米国在住で、IFFTのAndroid版をデザインしたり、人気RSSリーダー「Press」などを手掛ける売れっ子なんだとか。

チームには、サービスをつくる上で3つのこだわりがあると言います。それは、ミニマムであること、普遍的であること、そして開発者目線でイケてると思えるかどうか。なかでも、大きいのが3つ目の開発者目線。

「WOVNをもっと多くの人に使ってもらうためには、開発者が感動してくれることが第一だと思っています。ウェブサイトを直接いじるのは開発者です。開発者に刺されば、リテラシーの高い人に刺さる。その後、デザイナーに届いて、さらには一般の人にも届くようなサービスにしていきたいです」(林)

ウェブサイトの多言語化をとことん簡単に

WOVNは、10月中にも有料プランを提供する予定。無料版では2,000ページビューまで、それ以上はページビュー数に応じてプランを用意(プランの詳細はこれから決定)。また、特定のタグを設置することで、ウェブサイト上の翻訳未対応のページが勝手に翻訳されるような機能の提供も考えています。

また、翻訳の精度に関しても、今月中には翻訳サービスの「Gengo」や「Conyac」などと連携して、ボタンひとつでプロによる翻訳サービスを提供していきます。事前にクレジットカードを登録しておくと、24時間以内に翻訳が完成するそう。

現在、WOVNを使って毎日100ページ以上の新しいページが公開されていると話す林さん。8割は日本からの利用者で、その多くは観光関係や飲食店、コーポレートサイトなど。ウェブサイトの多言語化のニーズは常にあるものの、2020年の東京オリンピックに向けて今後いっそう需要が高まっていくはず。

「ウェブサイトを多言語化することをどこまでも簡単にするツールに徹します。先日も京都に出向いて、京都駅構内でユーザーさんにお話を伺って帰ってきました。直接会ってお話を伺うことでみえてくる課題があります。まだまだある“面倒に感じる部分”をひとつずつ取り除いていって、多くの国で使ってもらえるサービスにしていきます」(林)

ひさびさにワクワクするWOVNでは、エンジニアを絶賛募集中。我こそは!というエンジニアさんは、ミニマル・テクノロジーズのWantelyのページをご覧あれ。

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