画像キャプチャのGyazoを運営する京都のNOTA Inc.が、オプト、YJキャピタル、みやこキャピタルから総額200万ドルの資金調達

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NotaInc.

スクリーンショットを一瞬で作成し、他者と共有できるストレージサービス「Gyazo」を運営するNOTA.Inc.が11月11日、オプト、YJキャピタル、みやこキャピタルから総額200万ドル(約2億円)の資金調達をしたと発表した。

Gyazoは、スクリーンショットを一瞬で作成・共有し、キャプチャと同時にスクリーンショット画像データにURLを付与し、クラウドストレージ上に保存することが可能なサービス。2011年のリリースから約3年で月間ユニークユーザー375万人、月間アップロード数1302万件のサービスにまで成長している。

ユーザは通常は無料で利用できるフリーミアムモデルを採用。有料会員は画像データに対するセキュリティやアクセス制御、サポート窓口、Microsoft Officeとの連携などといったビジネスユース向けとなっている。現在では、3000人ほどが有料会員だ。ユーザー構成(無料、有料含)は北米33%、ヨーロッパ37%、日本14%、ロシア4%となっており、日本発のクラウドサービスでかつグローバルに展開を行っているサービスといえる。

NOTAは、かつて図書館蔵書検索アプリ「カーリル」を開発し、その後事業譲渡した経験をもつ。CEOの洛西一周氏は、12歳よりプログラミングを始め、大学時代には「紙copi」の開発やIPA未踏ソフトウェア創造事業認定スーパークリエイターに選ばれるなどの経歴をもつ。また、本社をシリコンバレーに置き、日本の拠点として京都を軸に活動している。

NOTAを運営する洛西氏と、今回オプトで出資を担当したオプト インキュベーション本部の菅原康之氏にそれぞれ出資の経緯や今後の展開などについて話を伺った。

出資に至ったきっかけは、野村証券とトーマツベンチャーサポートで行っている「モーニングピッチ」が始まりだ。洛西氏のピッチを聞いた菅原氏は、一定の成果やグローバル展開としての事業の可能性があったことが出資の決め手になったという。

「ピッチを聞いて「格の違うスタートアップが現れたな」と感じ、資金調達ニーズがないかお聞きしたのがきっかけです。決め手としては「事業」「経営者」の両側面です。すでにグローバル展開で海外ユーザ数が多く一定の成果があること、有料転換ができていてEvernoteやDropboxのようなメガベンチャーになれる可能性があると感じました。

「経営者」としては成長への力強さと誠実さがあり、かつ生粋のエンジニアであり事業家としての実力を兼ね備えた存在だということ。さらに、支援者として元DeNA創業者の川田氏、元Cnet社長の御手洗氏などが株主として名前を連ねており、経営者の魅力や成功可能性の高さを感じました。弊社のサポートとしては主にビジネスチューニングと広告のチューニングになるかと思います。特にGyazoのビジネスは有料転換率が決めてとなるビジネスなので、そこを重点的に支援する予定です」(菅原氏)

洛西氏は、3年かけて成長させてきたサービスが、ユーザ数の増加や収益の見込みのメドがたってきたこのタイミングでシリーズAラウンドの出資を受け、一気に事業を展開していこうと考えていたときに、菅原氏と出会ったのは大きな意味をもつという。

「もともとDeNAの川田さんやスマートニュースの鈴木健さんからも出資を受けていました。昨年末から事業の成長段階に入り、いまこそ開発のアクセルを踏むべきと思って、出資元探しに動きはじめたところで、菅原さんと出会ったというのがきっかけです。最初から意気投合して、トントン拍子で進みました」(洛西氏)

Gyazoは、もともとは元AppleのiPhoneの日本語入力の開発者で現在ではSFC教授の増井俊之氏が発明したものでもある。増井さんは未踏ソフトウェア創造事業での洛西氏のプロジェクトマネージャとして、その後はNOTAのアドバイザリーフェローとしてGyazoの開発や運営に関わっていた。今回のシリーズAと同時に、NOTA Inc.のCTOに就任し、本格的に経営にも関わることが決定している。

NOTAは、Gyazo以外にも多くのプロダクトの開発を手がけていたが、今回の出資をきっかけにGyazo中心に事業をシフト。画像キャプチャというシンプルなサービスながら、さまざまなサービスに展開できると見込んでいる。

「Gyazoはものすごくシンプルですが、その分そこからの応用の可能性もたくさんあります。Googleが一つの検索窓から始めて、様々な検索サービスを追加したように、Gyazoも画像のキャプチャから始めて、いろんな画像の利用サービスを展開できると考えています。Gyazoの発明者の増井さんは「コロンブスの卵指数が高い発明」という言葉を使うのですが、Gyazoはまさにそれで、シンプルだけど劇的に便利なサービスです。世界中にユーザがいるので、これからそのユーザ基盤を大切にしつつ、様々なアイデアを投入して行きます」(洛西氏)

NOTAは、京都を拠点に活動するスタートアップとしても知られている。地方からの起業や、東京や日本での認知や普及ではなくはじめからグローバル展開を目指そうと考えているスタートアップたちにとっても、今回のNOTAの動きは参考になるものも多い。地方で起業することのメリットデメリットなどについても質問をしてみた。

「地方から起業することのメリットは、人材採用と事業運営費用(家賃等)等のコストメリットです。地元指向で優秀な人間、特にエンジニアにはまだまだいるので、地の利を活かせるかどうかが大切です。 デメリットとしては、スタートアップの人間関係資産や大企業の役員、新規事業担当者との距離が遠いこと。やはりこれらの資産は東京に集積しているので、そこに上手く入り込めないと事業成長上は不利になることが多いです。 ただ、NOTA社の場合はエンジェルの方々がその架け橋になってデメリットを極力小さくしているのと、洛西氏自身が東京に頻繁に来られていることでこのデメリットを回避出来ている印象です」(菅原氏)

NOTAのメンバー構成は、その多くが京大生や海外経験をもつ人たちが多いという。シリコンバレーにも拠点をもつことで、普段から東京を飛び越えてグローバル意識をもって仕事をする環境ができている、と洛西氏は語る。

「開発チームはあまり意識しなかったのですが、気がつくとその過半数が京大生で、しかも全員浪人したり海外にいったりで4年で卒業していない(笑)。 これは、採用時に、流行の知識だけではなく独自の考えやアイデアを会社やプロダクトにもたらしてくれるか、を基準にした結果そうなったんじゃないかと思っています。

東京はすでに強力な成功事例があって、その会社がブラックホールの中心となって他の会社も強くひきづられていく「空気」があります。地方だといい意味でも悪い意味でもそういうレールの外にあるので、ビジネスにおいても一風変わったアイデアを試しやすいという土壌があると思います。また、京都で成功している大きな企業(任天堂や京セラなど)は、どれもお客様が海外に多いのも特徴です。もし日本の大企業と取り引きするなら東京が圧倒的に有利なので、地方では海外にも売れるか、直接出向かなくても売れる仕組みを作っていかないと生き残れないのではないかと思います。

そうした意味で、地方のスタートアップは、ブラックホールとなる中心企業に振り回されず独自のアイデアにじっくり挑戦できることがメリットで、売れる仕組みができなければ生き残れないのがデメリットではないでしょうか。そのデメリットも、メリットと考えるのが地方のスタートアップのバイタリティですね」(洛西氏)

現在では、NOTAの売上の8割は海外だという。NOTAは、「Gyazo」を2017年には利用者1億人のサービスを目指す。地方であっても、世界に目を向けて発信し、事業を展開していくスタートアップが増えれば、地方での起業もより多くなるのではないだろうか。

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