「アイディアがあれば実現できる」アパレル業界にーー国内の縫製工場やパタンナーが見つかる「SDファクトリー」

Yukari Mitsuhashi by Yukari Mitsuhashi on 2016.1.6

縫製工場・パタンナーが見つかる国内生産のインフラサービス「SDファクトリー」

縫製工場・パタンナーが見つかる国内生産のインフラサービス「SDファクトリー」

口コミや知り合いをベースとする日本のアパレル工場の世界。そのため、企業がアパレル事業への参入や、従来とは違うアパレル商品の製作を願っても、適切な工場に巡り合うことができず、なかなかアイディアを実現することができない現状があります。そんな、アパレル業界が抱える課題の解決となることを目指すのが、「SDファクトリー」です。

今年11月頭にリリースされたSDファクトリーは、アパレル関連の国内工場やパタンナーなどと、企業をマッチングするサービス。これまでに掲載されている工場数は22件。サイトには、各工場のロットや単価、納期、特徴、また工場内の写真などが掲載されています。これらの情報をもとに、企業は工場を検索し、発注や問い合わせなどをすることができます。

サービス開始から間もないですが、すでに大手商社から個人事業主に至るまで、大小規模の商談案件が進行しています。掲載されている工場の従業員数は平均すると約30人ほど。なかなか情報発信や営業を行う余力がなく、無料で登録できるSDファクトリーが工場にとって有効な新規顧客開拓のツールになりつつあります。

アパレル商品に多様性をもたらす

運営会社のラクーンの既存事業が、アパレル・雑貨に特化した小売店専用の卸・仕入れサイト「スーパーデリバリー」です。全国1,000社のメーカーが登録し、小売店数は4万店舗を超えています。SDファクトリー開発の背景は、この既存事業から見えてきた課題がありました。

「メーカーや小売店からは、日本でものづくりがしたいが工場を知らない、紹介してほしいという要望が多く聞かれました。独自に調査した結果、日本国内の工場が抱える課題も見えてきたため、メーカーと工場を繋げるソリューションの開発に至りました」(ラクーン 社長室長 長嶺浩一さん)

つくりたい人と工場を繋げる手段がないことは、アパレル業界全体、その先の消費者にも影響を及ぼします。メーカーが売れる商品を販売しようとすると、市場には似通ったものばかりが並び、消費者から個性や選ぶ楽しさを奪ってしまう。一方、小売店や個人にアイディアがあっても、それを形にする術を知らないため、商品のバラエティが増えていかない。

SDファクトリーが、つくりたい人とつくれる工場をマッチングすることで、値段、形、素材がそれぞれユニークな商品が登場し、アパレル業界全体の活性化に貢献することが望めます。

工場が持つ「地味」なイメージを払拭する

大阪府の栗山縫製

大阪府の栗山縫製

SDファクトリーを開発する上での最大のこだわりは、若い人が見てもかっこいいサイトを作ること。それは、どうも地味な印象が伴う工場のイメージを払拭するためです。サイトに掲載する工場の写真は運営側が撮影し、サイト全体のクオリティを担保。また、営業で工場を回ったスタッフが、現場で見たことや感じたことを言葉にして発信するなど、工場で働く人たちの息遣いや熱意が感じられるサイトづくりを心がけています。

「かっこよさ」にこだわるのは、日本の工場の10年後、20年後の未来を見据えてのこと。高齢化が進み、ただでさえ、若い働き手が減っていっている。技術を継承していく若者がいなければ、日本の工場の存続自体が危惧されます。

「全体的にものづくりをしようという動きがあるにも関わらず、工場の未来が危ないのは、日本の若い人が、工場で働くことを選択肢だと思っていないからだと思います。
優秀な若い人材が入って来なければ、業界全体が廃れてしまう。ものづくりって楽しい、こだわりの技術があるってかっこいい。まずは、そう感じてほしいです」

現状は、企業や個人事業主と、工場のマッチングにフォーカスしていますが、将来的にはアパレル業界の人材確保・育成も視野に入れています。アパレルの専門学校を卒業する学生は多いものの、就職活動をした結果、最終的にショップの販売員になってしまうケースがほとんど。工場は若い人材を採用しようにも手段を知らず、両者の出会いの場がない。ものづくりに関心がある学生に、そのキャリアを切り開く機会を提供し、工場には後継者を見つける。そんな未来を構想しています。

つくりたい人がつくれる時代へ

SDファクトリーが対象とする発注者は、企業はもちろん、個人事業主や小規模でものづくりを望む人たちも含まれます。工場は小ロットの受注には非積極的なのかと思いきや、むしろその反対だと話す長峰さん。大量生産に比べると手間が増えるものの、適正な工賃を得れ拡大の可能性があるため、優先して受けたいのが本当のところ。SDファクトリーで露出の機会が増えることで、大小規模の新規受注の獲得が期待できます。

現に、会社勤めの女性が、SDファクトリーを使って工場を探し出し、自分でブランドを立ち上げるようなケースも見られているとか。アパレル関連のものづくりが、「アイディアさえあれば、実現できる」世界が少しずつ近づいているのかもしれません。

当面は、工場やパタンナーなどのSDファクトリーへの登録数をしてもらうことを目指します。今後は、検索の強化やスケジュール管理といった機能強化を構想しています。

「オリジナルを作りたい小売店や新ブランドを立ち上げたいデザイナーなどを含め、SDファクトリーでメイド・イン・ジャパンの新商品やブランドに登場してほしいです。それが、国内アパレル業界の活性化にも繋がる。また、私たちの「SDエクスポート」という輸出販売サービスを活用すれば、海外への輸出インフラにもなると考えています」

“summercamp"/

Yukari Mitsuhashi

Yukari Mitsuhashi

三橋ゆか里。東京在住のTechライター。フリーランスになる前は、日本のスタートアップ数社にて勤務。彼女のブログ「Techdoll.jp」は、海外のスタートアップを日本市場に紹介している。映画「ソーシャル・ネットワーク」の日本語字幕と吹替を監修。Twitter アカウント @yukari77

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