もうネットショッピングで後悔しない:ユナイテッドアローズの公式通販サイトがフィッティング・ソリューションの「Virtusize」を導入

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Virtusize

立ち上げは2011年、そして日本でもつい先日上陸1周年を迎えた「Virtusize」は、手持ちの洋服と、ECサイトで見た「気になるアイテム」をサイズ比較できるフィッティング・ソリューション。ヨーロッパでは「ASOS」、日本では「MAGASEEK」(マガシーク)などが導入している。

ユナイテッドアローズのオンラインストアがVirtusizeを導入

11月19日、新たにVirtusizeを導入したのがユナイテッドアローズ公式通販「UNITED ARROWS LTD. ONLINE STORE」。対象ブランドはというと、「Jewel Changes」や「Another Edition」など、ユナイテッドアローズ オンラインストア内の全13ブランド。

今回のユナイテッドアローズに関して特徴的なのは、過去の購入商品とのサイズ比較が可能なこと。既にユナイテッドアローズのECサイトで購入したことがあれば、そのアイテムとサイズ比較ができる。過去の購入履歴を活用するアイディアは昔からあったものの、そのための十分なデータを持っているクライアントは、ユナイテッドアローズが初めてだとか。

これまでのVirtusizeの仕組みでは、手持ちの洋服を自分でサイズ測定する必要があった。それも引き続き可能なので、自分のお気に入りのシャツのサイズ感が理想なら、それを登録することでサイズ比較もできるそう。

現在、ユナイテッドアローズのオンライン購入の返品率は、大手通販サイトや通販雑誌よりは低い7%に留まる。とはいえ、この返品コストを下げる方法を模索しており、今回、Virtusizeの導入に踏み切った。また、今回の取引は成果報酬型で、Virtusize経由でコンバージョンが上がるとサービス料が発生する仕組みをとっている。

手持ちの服との比較でサイズの問題を解決

ファッションのオンラインショッピングにある最大の課題は、ずばり「サイズ」。お買い物したのはいいものの、いざ到着してみるとサイズが合わなくて悔しい思いをすることが多々ある。サイズ表やモデルさんの着用写真だけでは当然限界がある。

海外では、このサイズの問題に取り組むスタートアップがいくつも存在する。独自のアルゴリズムをもとに最適なサイズをレコメンドしてくれる「Clothes Horse」や、自分のサイズをもとにカスタマイズした洋服が購入できる「Bonobos」(男性向け)や「Bow & Drape」(女性向け)など。

Virtusize_size-comparison
Virtusizeを使ったサイズ比較の画面

Virtusizeの特徴は、「洋服」と「洋服」のサイズを比較する点。ただの洋服じゃなくて、自分の手持ちの洋服とサイズ比較ができる。例えば、先月購入したシャツより袖が1cm長い、ウェストは2cm細いといったことがイラストで一目でわかる。日本法人の代表であるAndreas Olaussonさん(アンドレアス・オラウソン)はこう話します。

「サイズ比較と言うと、まず頭に浮かぶのは同じような背格好の人と比較することです。だいたい体型が同じ彼女が着ている服なら自分にも合うはず、と。でも、それでは正確性に欠けます。Virtusizeは、自分のお気に入りのシャツとサイズ比較できたらどうだろう?という発想から始まりました」

Virtusizeを活用した購入のコンバージョンは20%

さて、気になるのが、Virtusizeのソリューションが、ECサイトにどんな効果がもたらすか。なんと、Virtusizeを使って購入した人のコンバージョンは約20%。そもそも、洋服のサイズ比較をしている時点で、かなり購入意志が高いというのはあるだろうけれど、それにしても高数値。

また、Virtusizeが行った利用者への独自アンケートによると、Virtusizeが「役立った」または「非常に役立った」と回答した人は、全体の90%。90%がまた利用したいと回答しているそう。

Virtusizeを使った利用者の平均購入額についても、使わない場合に比べて20〜30%アップすることがわかってる。その理由は、より高いものを買うからではなく、購入するアイテム数が増えるから。オンラインショッピングでは、買い物かごに入れた中に「サイズが合うか微妙」な商品があることが珍しくない。不安要素が残るアイテムをいくつも買う贅沢はできないから、どうしても買い物に歯止めがかかる。Virtusizeがそれもなくしてくれるというわけ。

「Virtusizeを導入することで、ブランドと顧客間のエンゲージメントにも貢献できていると思っています。既に自分にフィットする特定のブランドの洋服を持っていることで、それに比較してさらにそこで購入する動機にもなるでしょう」

世界の各市場の主要プレーヤーをすでに網羅

Virtusizeを導入する世界中のECサイト(一部抜粋)
Virtusizeを導入する世界中のECサイト(一部抜粋)

Virtusizeを世界で初めて導入したのは、スカンディナビアのECサイト「Nelly.com」、またヨーロッパでは前述の世界最大級のEコマース「ASOS」に加えて、「s.Oliver」など主要プレーヤーを網羅してる。日本以外のアジアでも、東南アジアでは急成長中のECサイトや、インドの「Jabong」などが導入。アメリカでは、今年の夏終盤にニューヨークにオフィスを立ち上げたばかり。各市場における巨人を押さえていることは、今後のサービス拡大にもプラスに働くはず。

数々のオンラインアパレルコマースに参入する中で、日本市場への参入については、人のネットワークや『紹介』を重んじるビジネス文化を感じたと話すAndreas。また、日本では、ECサイトの裏側のシステムを外注しているケースが目立ち、今後、EC経由の売上げが上がれば、変化が求められるかもしれないと指摘する。

「日本のファッション業界は、世界でも十分に闘っていけるレベルだと思っています。まだまだ商品の発送は日本国内のみというケースが多いですが、今後はこのグローバル展開をお手伝いするようなこともできればと考えています」

スウェーデン人で長身のCEOが、自分に合うサイズの洋服がないと困り、またできれば試着すらしたくないという悩みを解決するために生まれたVirtusize。世界中のサイズのスタンダードを作ろうとして参考にしたのは、日本のサイズ測定方法だったそう。パンツなら、ウェストや太ももなど、日本の測定方法は緻密でシステマチックだから適していると。

Virtusizeの新たなタグラインは、「fit illustrated」。雑誌の「Sports Illustrated」ならぬ、フィット感を「描く」、つまり、手に取るようにわかるという意味が込められてる。今回のユナイテッドアローズの他にも、既に「ディノス・セシール」、TSIホールディングスグループ直営の「mix.tokyo」(旧SELESONIC)などが導入してる。

今後もVirtusizeの展開から目が離せない。

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