CAMPFIRE がソーシャルレンディング(融資事業)を開始へーー家入氏の目指すクラウドファンディングの再定義「資金集めの民主化」と「富の分配」とは

by Takeshi Hirano Takeshi Hirano on 2016.11.28

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一部報道にあった通り、クラウドファンディング「CAMPFIRE」は融資業となるソーシャルレンディング事業へ参入する。来春の操業開始を目指して貸金業と第2種金融商品取引業の登録を進めるため、お金のデザイン創業取締役会長、ライフネット生命の創業期投資家としての顔を持つ谷家衛氏を取締役会長として迎え入れる。また、同時に必要な資金として3.5億円を第三者割当増資によって調達する予定。

これらの日程や増資引受先の詳細について同社代表取締役の家入一真氏に確認したところ「その方向で最終調整に入っており、弊社としての正式な発表を待ってほしい」ということだった。

ーーさて、CAMPFIRE が次のステージに向けて動き出した。本誌では10月に札幌で開催された招待制カンファレンスで現在の状況や今後の展望について彼に話を聞いている。「家入一真」という連続起業家がこれから何をやりたいと考えているのか、その一端が伝わればと思う。

2017年末の目標:年間の支援総額60億円

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と、その前にまず彼らが積み上げた数字を見てみよう。家入氏によれば、5%手数料を引き下げた今年2月以降、案件数や支援総額などの数字は順調に伸び始め、4月から9月の半年間だけで過去5年間の支援総額を突破、約5.5億円ほどの積み上げになったという。また、案件数については競合他社と比較して最大で倍近くの差が生まれていると独自の調査結果をカンファレンスの壇上で披露していた。

その上で、今年の年末までには年間累計で9億円を見込んでおり、2017年末の年間支援総額を60億円程度にまで伸ばしたいと計画を語る。

「個人の活動を支援するために、手数料を見直したり様々な施策を打つなかで、僕らのメッセージが伝わった結果じゃないでしょうか」(家入氏)。

筆者は登壇を終えた家入氏に個別にインタビューを実施した。(太字の質問は全て筆者、回答は家入氏)

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支援総額が大きくなってきました

競合サービスも含めどこも1億円程度の月間支援総額を行ったり来たりしているので、僕らは来年に向けて月間3億円ぐらいに持っていって、まずはしっかりトップを獲りたいと。さらに伸びを維持すれば月間で5億円から6億円は持っていけると予想しています。

今のクラウドファンディングって企業がテストマーケティングに使うとか、大きなお金を集めるとかそういうことばかりに注目がいってしまって、個人が小さな資金を集めて何かをやろうっていう、そういう話があまり表に出てこなくなっている。今回数字が伸びたのは「資金集めの民主化」という本質に立ち戻った結果だって受け止めています。

ただこれまでは数字がそこまで一気に伸びませんでした。その理由は?

クラウドファンディングに対するハードルの高さはやっぱりありますよね。これまでの手数料の高さはさることながら、「失敗したらどうしよう」とか「自分には無理だ」とか「リターンの設定をどうすればいいかわからない」とか。もっと敷居を下げていくべきだと思います。

その辺りを解決すればどれぐらいが天井になるんでしょうか

BASE や STORES.jp など、個人や中小企業で何か物を売ろうとする人たちが毎月数万人増えているわけで、そう考えるとクラウドファンディングって今は月間でも数百件程度だからまだまだ伸びしろがあると思ってるんです。

金融ビジネスの可能性

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さらに加速するための新たな資金集めの方法を考えていると。それがいわゆる金融方面になる

僕らの目指す「資金集めの民主化」ということの本質を考えると、現状の「購入型クラウドファンディング」だけにこだわっている場合じゃないって思うんです。購入型か融資型か投資型か、なんて、ユーザーからしたらどうでもいい話ですよね。選択肢は多いほうがいい。

もっと範囲を広げる

融資にしろ投資にしろ、資金の集め方には既存の金融機関だけで出来る部分と出来ない部分があって、その出来ない部分というところをクラウドファンディングが担ってるんじゃないかと思うんです。

今、国内の個人の現預金が 800兆円あると言われていて、しかもそれは年々増えていっている。日本人の特性なのか、海外に比べても現預金の比率が多い。このお金がもっと流動化して若い人のチャレンジや機会へと分配されていくべきだと考えています。そのためには範囲を広げていく必要があるな、と。

もともと購入型のクラウドファンディングをやってきた僕らだからこそできる、新しい仕組みがあるんじゃないかと思っています。例えば CAMPFIRE の過去数千件のプロジェクトを分析してみると、初日に目標金額の10%に到達したプロジェクトのサクセス率は9割というデータが出ています。どう言った人や企業やプロジェクトがお金を集められるのか、というデータなど、これからの与信情報としても有効なのではないかと考えています。

購入型の「欲しいから買う」「応援したいから買う」といった気持ちと、融資や投資型の「利回りを期待して応援する」といった気持ちが混ざるところを、僕らだからこそ目指せるのではないかと思っています。

なるほど。クラウドファンディングを通じて生まれたデータが資金を公的に借りることのできる与信情報になるかもしれない、というのは面白い視点ですね。海外では携帯電話の支払い状況などを与信に少額ローンを提供するという話もありますし

今年から CAMPFIRE LOCAL という日本各地の地域の取り組みを始め、現在15エリアで展開しています。来年には50エリアまで増やしていく予定ですが、例えば地域のプロジェクトでサクセスしたものを、行政や地銀さんと一緒に支援していく仕組みなども可能だと考えています。一般の消費者から支援がある程度集まっているという情報は、信用になり得ると思うのです。

具体的なイメージはありますか?

どんなプロジェクトでも良いのですが、例えば「伝統技術を使った新しい工芸品を作りたい」なんてプロジェクトがあった場合、最初のサンプルを作る費用を購入型のクラウドファンディングで集め、ある程度目処が立って量産する際に融資を組み合わせる方法なども可能になるかもしれません。

なるほど。そもそもクラウドファンディングはマーケティングの手法としても注目されていました。ある程度集まる見込みが最初の段階で取れているかどうかは貸付する側にとっても重要な情報になりそうですものね

あと例えば3カ月のファンディング期間があったとして、最初の段階でぱっとお金が集まっちゃった場合、短期融資の形でそのお金を立て替えてあげるってことも可能になるんです。

資金集めの民主化・富の再分配

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インターネットで等しく誰もが何かを実現したり、チャンスを得られることを「資金集めの民主化」と提唱されています

インターネットはいろんなことを民主化しました。一部の人たちや組織だけのものになってしまった物事を、個人の手の元に取り戻す役割を果たしたんです。そう言った意味で、個人が声を上げられることがインターネットの本質だと思っているんですよね。大切なのは個人が声を上げられて、なおかつそれを個人が支援できる仕組みの方なんです。もちろん声を上げたその先にお金が集まるか集まらないかという話はありますけれど、それがこの先社会にも求められるようになると思うんですよ。

一方で「スマートフォンの修理代をクラウドファンディング」っていうのはアリなのか?っていう議論もありました。これは個の実現ではなく単なる甘えじゃないかって

これはクラウドファンディングを語るときにいつもついてくる批判です。「そのくらいの金額、自分でなんとかしろ、甘えるな」と。では幾らまでが甘えで幾らからが甘えじゃないのか。その「それくらいの金額」は立場や状況で個々に違うと思うのです。「それくらい一人でなんとかしろ」じゃなくて「それくらいだったらみんなで」の方が楽しいし優しいですよね。

玉石混交の「石」みたいな人たちでも、何らかのマネタイズだったりチャンスみたいなものを得られるのがインターネットだと思うんですね。その玉石混合なカオスの中からこそ、新しいものが生まれてくる。

少し話変わって、そもそも家入さんがやっているのは「クラウドファンディング」じゃないのでは、という話をしましたよね。そもそも国内のクラウドファンディングサイトって全部 kickstarter のモノマネみたいな状態になったまま動いてない

僕ら自身も反省はあります。もっと、日本だからこそのやり方を、ちゃんと模索していかないといけない。「クラウドファンディング」という言葉も仕組みも含めて、新しい形を作っていく必要があると感じています。

クラウドファンディングっていうより、家入さんの実現したい世界観って「個が個を支援しあうインターネット世界」ですよね

課題先進国って言われるくらい、僕たちの住む日本は課題だらけです。少子高齢化が進み、人口が減少し、経済が縮んでいき、税収も減っていき、国による福祉や医療といったセーフティネットがまかなえなくなっていく。貧困格差も教育格差も広がっていきます。本当に問題だらけ。その時、富の再分配っていうのかな、民間で持っている人が持っていない人に対してお金を回す仕組みを、何らか作っていく必要が出てくると思っています。ただそれを慈善活動などではなく、しっかりとビジネスのスキームに乗せてどうやって実現するか、それを考えたいと思っているんですよね。

私自身、家が貧しくて新聞配達しながら学校に通った経験があるので、貧しくて学校に行けない人って本当にいるのを理解しているんですね。それに対してお金持ってる人が出せばいいじゃないって考えが数年前に立ち上げた「Studygift」だったんですけど、その時は僕自身の未熟さで炎上してしまいました。その反省も生かして、誰もが納得できる方法はあるはずと思って試行錯誤しています。

最近取材してて顔つき変わりましたね

働くのが楽しいなって(笑。

ありがとうございました

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