グルーポンの中国進出失敗の背景にある4つの過ち

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【翻訳 by Conyac】 【原文】

今回ゲスト執筆者 Julia Q. Zhuは、中国・アジア太平洋地域の国際Eコマースの第一人者である。彼女は中国最大手のEコマース会社 Alibaba(阿里巴巴)グループで、多くの管理職を歴任した。Alibaba以前は、米国の ComScore(訳注:インターネット視聴率会社)に相当する、中国の iResearch社に勤務。ツイッターで彼女をフォローするには@juliaqzhuへ。


グルーポンはその株式公開に向けて多くの困難にあえいでいる。Yipitのデータによれば、2011年の上半期に同企業はマーケティングに 4億3200万ドルという巨額の資金を費やしており、負債6億8100万ドルのうち、現時点で3億9200万ドルをそのマーケティングベンダーに負っている。

同社の3桁の成長率は減速し、企業価値が半分になるかもしれない。しかし我々はまだ、グルーポンのまもなく失敗に終わるであろう、グルーポンと中国の巨大インターネット会社 Tencent(騰訊)が共同出資している Gaopeng.com(高朋)について話を始めていない。

今からちょうど2ヶ月前の8月終わり、グルーポンは13のオフィスを閉め、400名の正社員を解雇した。グルーポンは、中国で失敗に終わる欧米インターネット企業の直近のにすぎない。Baidu(百度)によるグーグルの敗北や、Taobao(淘宝)と実質的に争えずに敗北したeBayの例を考慮するかは別として、グルーポンのケースには、欧米のインターネット企業がミドル・キングダム(=中国)に進出する際に犯す、4つの典型的な過ちを見ることができる。

1.高慢さ

グルーポンはその高慢さゆえ、きわめて初期の段階から困難な戦いに直面していた。グルーポンが中国に進出する前、米国発のその会社は「中国最大のショッピングサイトになる」と宣言していたのだ。ヨーロッパにおいてグルーポンは、ライバルのトップクラスの従業員を高給をえさに引き抜くという戦略をとった。そして中国でも同じような戦略が通用すると踏んでいたのである。

さらに同社は、中国市場に参入するには中国最大の Lashou(拉手)グループを買収するために巨額の金を支払いさえすればよいと考えていたが、Lashou はその申し出を断り、グルーポンはショックを受けた。

中国のクーポン共同購入サイトは申し合わせを行い、将来、グルーポンの社員がグルーポンから退社することを決めたとき、その社員は類似のいかなる企業にも雇用されないという声明を発表するまでに至ったのだ。

2.地域性に対する理解の不足

中国グルーポンのトップは、世界の市場はどれも似たようなものだと考えていたようだ。ドイツでうまくいったものは、中国でもうまくいく、と。中国のグルーポン販売チームの例を1つ挙げよう。当初グルーポンは、中国のクーポン共同購入をとりまく環境の現状を考慮することなく、提携するベンダー同士が利益を50 パーセントずつ分け合うことを強く主張していた。

しかし、中国市場には多くのプレイヤー(共同購入サイト)がいるため、販売者は共同購入サイトとの交渉の際に優位な立場にあり、一般的に共同購入サイト側には50%ではなく10%の利益しか残らない。販売者はグルーポンの積極的なセールス戦術に肝をつぶして、しばしば同社のセールスマンに、「落ち着いて、もっと現実的な見込みがあったときに来てください」と言い放つ。

グルーポンは、メールを使ったマーケティングを利用していると主張する。中国の人々はそういった種のメールはほとんど読まないと言われているにもかかわらずだ。こうしたアプローチはドイツでは成功したが、中国ではうまくいかないということを、ようやくグルーポンは理解したようだ。

3.経営者陣の組織ミス

グルーポンは地域の人材を、少しも経営陣に採用しなかったので、中国が持つ他の地域との微妙な違いによって、サイトの適応性や中国市場での成功は限られたものとなった。中国のグルーポンの最高経営陣のなかで、中国人はたったの2人、うち1人は中国本土、もう1人は香港出身である。

中国の都市から離れた地域の運営ですら、中国市場と他国との微妙な差異を部分的にしか理解していない外国人が着任した。時として、かえって効率が悪いのに、外国人経営者が中国人社員を欧米方式で管理する中で、問題は起こっていた。なぜなら、全ての社員が自分の上司に敬意や忠誠心を感じていたわけではないからだ。

結果として、グルーポンは社員の大量離職をみることとなった。

4.ローカルパートナーの選択ミス

グルーポンは賢明な決断をし、Alibaba グループに次ぐ中国のインターネット界の真のリーダーであるTencent(騰訊)と提携した。

グルーポンが誤ったのは、Tencentとの提携がもたらした、数多くのメリットを利用しなかったことにある。例えば前述のように、グルーポンはTencentの中国市場での経験を信頼するよりも、中国全土を統括できるように専門家を雇った。そしてTencentにとって、共同事業である Gaopeng(高朋)は、一番優先順位の低い事業となってしまった。Tencentは、提携する前から、既に多くの共同購入サイトを中国で運営していたのだ。Gaopengは、そのうちの一つに過ぎない。

中国グルーポンは、失敗に終わるだろう。もはや時間の問題である。グルーポンが中国に進出した日から、それは困難道のりだった 。そして今、瀕死に近づいているように見える。現在の状態は、グルーポンがあまりにもビジネスモデルを過信した結果だと述べるアナリストもいるし、中国の共同購入サイトの特異性に端を発するというアナリストもいる。市場がすでにあまりにも多くの企業によって細分化されていたため、グルーポンのような至る場所で成功を収めてきた企業ですら、わずかな影響力しか行使できなかったのだ。

最終的に読者がどの見解に賛成していようとも、ますます明らかになってきていることは、グルーポンは中国の共同購入サイト業界において、なんとかニッチな居場所を見いだしているということである。

関連記事:中国版Groupon(高朋)はどのような問題を抱えているのか

【via Penn Olson】 @pennolson

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