【ゲスト寄稿】2年間使ってみて感じる“Pinterest”のすごいところ


白形洋一この記事をゲスト寄稿してくれたのは、株式会社SpinningWorksの代表である白形洋一さん。SpinningWorksではソーシャルリーディングサービス”Qlippy”を開発、提供中。2011年10月には総額4,100万円の第三者割当増資を実施し、12月にはQlippy連携のAndroid書籍アプリをリリースした。一緒にサービスを創っていくプログラマーを募集中です。


最近よく話題になっているPinterest。日本語の記事も多くなっていますが、かなり古く(2010年12月頃)から使っているユーザの1人として、また同じようにWebサービスを運用する側の立場から感じる、Pinterestの持つすごい点を自分なりの解釈で書いてみたいと思います。

Pinterestとは

Pinterestとは、簡単にいうと”ネット上のお気に入り画像をボードと呼ばれるリストにまとめることができる”サービスです。Hitwise によると、Pinterestは先週アメリカで最もアクセスされたWebサイトランキングの60位に入り、トータルアクセス数は年初の1000万アクセスから1700万アクセスに伸ばしたそうです。

また、comScoreによると2011年11-12月の1ヵ月で55%のユニークビジター数増加を記録し、増加率ランキングでナンバー2だったそうです。ユーザアカウントの作成時に誰もがFollowするであろう公式アカウントのフォロワー数から判断すると、この記事を執筆している時点でユーザ数は786万に達していることになります。現時点で大きく注目を集めるのもうなずけます。

(参照:Pinterest is Growing Like Gangbusters

使い始めた理由とサービスの第一印象

もともと昔から、気になったロゴ画像やデザインのいいプロダクトや車の画像など、ネットサーフィン中に見つけた気になる画像をローカルにダウンロードして貯めておくという収集癖がありました。つまり、ドンピシャなターゲットユーザのひとりだったわけです。

Pinterestを使い始めてからは、気になった画像を簡単にWeb上にまとめておくことができるようになり、ローカルに保存することが一切なくなりました。さらに他のユーザたちが興味深い画像をどんどん集めてくるのでそれを毎日見るのが楽しみになり、気になった画像をどんどん自分のボードに登録するようになりました。

ちょうど、書店で自分の興味があるコンテンツを載せた複数の雑誌に目を通し、気になったものだけをどんどんスクラップして後から見れるようにしていくというイメージが近いかもしれません。

最初の印象は、Tumblrを進化させたようなサービス、というものでした。共有する対象を画像に絞り、ユーザの集めた画像を一覧で閲覧可能にし、Webサイトのカスタマイズ機能を省いて統一感を出したTumblr、という感じです。しかし、Pinterestには、Tumblrや他のサービスにはないすごく大きな特徴があります。

すごい特徴とは

Pinterestが備える特徴として、ほぼクリックするだけで使う事ができるという説明がされていることが多いですが、画像を共有するユーザが必ずしなければいけない手間が実際には2点あります。それは、画像を登録する際に

1.必ずコメントをつけなければいけない
2.必ずボードに登録しなければいけない

ということです。ユーザに手間をかけさせてでもこの2点を必須にしている理由が、PinterestをPinterestたらしめている大きな特徴だと考えています。

コメントをつけさせる理由
画像を検索可能にすることです。画像にコメントをつけてボードに登録する、という行為は、画像という非テキストデータに対し、ユーザの様々な視点から複数のタグを付け、画像間の関連付けを行っているということでもあります。

例えば”black”というキーワードで検索すれば、ユーザが”black”と連想した画像や、”black”というキーワードで関連づけられた画像ボードから検索することができます。

今のところ検索機能にあまり力を入れているわけではないようですが、ユーザの手間と差し引いてでもコメント入力を必須にしている理由はここにあると考えています。実際に蓄積されるデータは、かなりのポテンシャルを秘めたものになるのではないでしょうか。Googleが買収を狙っているという噂ですが、この蓄積データが狙いなのかもしれません。

ボードに登録させる理由
それは、フローとストックのバランス設計です。ユーザによって共有された画像は、タイムラインを流れていきます。(フロー)ある程度ユーザをfollowすればタイムラインが流れ出すので、ここをみているだけでも面白いです。

しかし、気になった画像をクリックした先の画像の詳細画面では、その画像が登録されているボードも表示されるので、そのユーザの視点で関連づけられて同じボードに登録された他の画像も簡単に見ることができます。(ストック)

このように、流れていく画像データと、集積された画像データがボードという機能を通してつながっているため、ユーザはタイムライン上で気になった画像から、過去に集められた類似画像へと簡単に探索していくことができ、思わぬセレンピディティの機会を作ることに成功しています。

実際、半年以上前に登録した画像が誰かによって再登録(Repin)され、さらにそのユーザのFollowerによってRepinされ、ということもよくおきます。

ボードに画像を必ず登録させることで、フローのデータとストックされたデータとを有効に活用し、ストックデータでもユーザに気になる画像と出会う機会を提供する、非常にバランスの取れた設計になっています。サービスのデザインを考えて、この設計は本当にうまいと思います。

進化版follow機能の実現

PinterestではユーザのFollowだけではなく、ユーザの作るボードごとにFollowすることができます。例えば、ファッションとWebデザインが好きでそれぞれボードを作っている女性ユーザがいた場合、自分が興味を持っているWebデザインのボードのみFollowすれば、その女性ユーザが共有する女性ファッションの画像が自分のタイムラインに流れてくる事はありません。

実際、Pinterestは女性ユーザが多く、共有される画像データも女性向けアパレルやアクセサリーなどがかなりの割合を占めていますが、自分のタイムラインに流れてくる事はほとんどありません。

興味というのは人ごとにバラバラで、100%合わない方のほうが普通です。ボード単位でFollowする機能を実装することで、人単位ではなく興味単位でつながる仕組みを実現しているのです。まさにFollow機能の進化版です。

面白いのは、Facebookでつながっているユーザだからと無条件にFollowするのは避け、興味が同じかどうかの視点からFollowするかどうか(ユーザが流す情報を受け取るかどうか)を決めるようになる点です。以上が、私が考えるPinterestの大きな特徴です。

よりリアルなインタレストグラフの生成

最後に、Pinterestを使っていて感じるサービスの可能性について書いておきます。2010年はインタレストグラフという言葉がキーワードとなり、ユーザが興味を持つ情報を共有するサービスが複数登場しました。

しかし、Amazonのデータベースを利用して興味のあるモノを共有するサービスなど、サービス側が用意した情報の中から自分に興味がある情報を選択するというサービスデザインでは、集めるデータを自ら制限しまっていることになります。

Pinterestの場合、Web上に散らばる様々な画像データから興味があるものを集めることができるので、単に”ほしい”、”持っている”だけではない、”食べたい”、”行きたい”、”見たい”、”面白い”といった多くの動詞をカバーする、より本人が持つ興味を反映させたインタレストグラフを作ることに成功していると言えます。

実際に自分の集めた画像をみると、自分が興味をもっている対象がはっきりと浮き上がっているようでちょっと恥ずかしいです。これから先、Pinterestがどう成長していくのか、どのようなマネタイズ手段を取るのか、一人のユーザとして今後の展開が非常に楽しみです。もし興味が合えば、わたしのアカウントもFollowしてみてください。

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