スタートアップウィークエンド京都 #swkyoto 最終プレゼン7組の発表−−優勝は電車内の匿名チャットSNS「おしゃべりバナナ」

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8月3日から5日まで、京都リサーチパークにて金曜の夜から54時間かけてアイディアのプロトタイプをつくりあげる、スタートアップのためのイベント「Startup Weekend」が開催された。

今回も、熱い54時間の中でアイディアをチームでブラッシュアップしてそれぞれ形にし、最終プレゼンへと向かった。イベント中の様子は、こちらのフォトレポで見ることができる。

ここでは、今回のStartup Weekend京都で最終的に発表されたプレゼンの内容をまとめておく。また、それぞれのプレゼンと、今回の審査員である面々からのコメントなどをまとめた。

1.写真に音を発するスタンプで遊ぶ「Photoplay」

PhotoPlayは、子育てで忙しいお母さんにとって、価値のある時間を提供したい、というコンセプトからできたサービスだ。Photo Pkayは、子どもが1人でも気軽に遊べることからスタートしている。

PhotoPlayは、写真と音を組み合わせて自由に遊ぶことができる。写真を選択し、その写真にスタンプなどのオブジェクトを配置する。そのオブジェクトをタッチすると、そこから選択したオブジェクトに応じて自由に音を発することが可能となる。

マネタイズとしてはフリーミアムモデルを採用し、無料で使用できるスタンプなどを配布。有料アイテム課金で、追加スタンプなどを購入できる。また、子どもが勝手に決済機能をおこなわないよう、メニュー画面への以降の際にアラート機能として掛け算などの計算式をおこない、子どもがタッチしても画面が移行しない設定をしている。日本、そしてアメリカそれぞれの市場として、2−5歳の人口はそれぞれ430万と12270万人と、大きな市場を目指してサービスを展開していく。

2.気の合う友人同士をマッチングする出会わせ系サービス「Yenta」

Yentaは、従来とは違うマッチングを狙っている。従来の、自発的な趣味趣向ではなく、仲介する友人と通じて男女のマッチングをおこなうサービスだ。”Yenta”という言葉は、「おせっかいおばさん」という意味であり、言葉どおりかつてのおせっかいおばさんのように、気の合う男女同士をマッチングさせる、おせっかいな”出会わせ系”サービスだ。

ユーザは、サービスを立ち上げると、Facebookと連携し、自分の男女の友人が画面にランダムで表示される。その男女を見て、マッチングするかどうかを考え、「いいかも」ボタンをタッチする。また、男性、女性それぞれを固定して、固定していない男女をランダム表示させ、マッチングをおこなわせることも可能だ。

マッチングされた男女はそれぞれに通知がいき、了承すればマッチングが成立させる。その後は、男性側が提携しているレストランの予約画面へと移行し、食事へと誘うメッセージを送ることができる。マネタイズとして、提携している飲食店の新規顧客獲得による広告モデルを採用している。

従来のマッチングと違い、相互の内面を知る第三者からの紹介によるマッチングとしての成立率をあげ、マッチングの成功率や少子化への課題を解決する。また、マッチングが成功することにより、マッチングされた同士のFacebookでの趣味趣向のデータが得られることにより、そのデータをデータベース化し、どういったペアがマッチングされやすいか、紹介されていない人にも、より精度の高いレコメンドサービスを目指している。

3.講義ノートをクラウドで共有し、アップされたノートを売買する「Note Mall」

「Note Mall」は、クラウド上に講義ノートをアップロードし、ユーザは、そのアップロードされたノートを購入できるサービスだ。購入した代金に応じて、アップロードされた人にお金が支払われる仕組みになっており、マネタイズは手数料としておこなう。

フリーミアムモデルを採用し、最初の10ダウンロードまでは無料でおこなうことができ、使用の敷居を下げる。それ以降は、ダウンロードしたい数に応じて、追加1ダウンロードで100円、さらに追加10ダウンロードで200円、そして400円とダウンロードした数に応じて課金されていく。

Note Mallの元になったサービスは、米国にある「Teachers pay teachers」というサービスであり、このサービスを通じて、1人の先生が教育資料をアップロードし、一年間に70万米ドルものお金を稼いだ、というものがある。(筆者注:詳細は、Startup Datingの「オンラインで授業計画を販売、70万ドルを稼ぐ幼稚園の先生」の記事を参照)

サービスのシステムはほぼ完成しており、Startup Weekend kyoto終了後、さらに改良しより実装して使えるものを近いうちにリリースする予定だと、イベント終了後にチームに取材をおこない語ってくれた。続報を期待したい。

4.イベントに特化した参加費を集めるマイクロファンディングサービス「MassDriver」

「MassDriver」は、イベント参加支援のクラウドファンディングサービスだ。高額なイベント参加費に対して、学生など参加費を払うことが難しい人たちに対する支援を目的にしている。

ユーザは、行きたいイベントのイベント名やイベントの詳細、なぜそのイベントに参加したいか、無事にそのイベントに参加することができた際に支援者にどういうリターンができるのかなどの思いを書いたフォームを記入して投稿する。投稿されたイベントの参加費に到達する額に向けて必要な額が達成したら終了となる。リターンをどうするか、その点については、少し曖昧な部分があったが、学生など若い人がどのように支援者にリターンを設定するか、審査員などからも質問があるなどあった。

支援したい人は、サイトにいき支援したいイベントと投稿している個人を判断し支援をおこなう。イベンターにとっても、イベントに参加したいと強く思っている人が、その人の切り口からイベントを宣伝してくれるため、宣伝広告という視点からも、歓迎してくれるのでは、と考えている。また、イベントに参加したい、という参加表明もわかることもできる。また、この若い人と一緒にイベントに出てみようと考える人が増えるのでは、という予想を立てている。

5.企業のサイトに宝を隠して宝探しをおこなう「Tretsuku」

ユーザに、新しい遊びを提供する「Tretsuku」。これまで、既存のゲームは、宝を”探す”ゲームが多かった。しかし、Tretsukuは、宝を”隠す側”として参加することもできるゲームだ。ユーザは、企業のウェブサイトをフィールドとして捉え、サイト内の様々な箇所に宝を隠すことができる。

ユーザは、特定の企業のサイト(Tretsukuにて広告出稿している企業サイトやタイアップ企業サイトなど)を選ぶ。ユーザは、その選んだ企業の商品を宝とし、企業内のサイト内に3つ程度、宝の隠し場所を指定し、その後宝を隠したことを自身のソーシャルネットワークに告知する。また、宝を隠していないユーザは、Tretsuku内にて宝を隠すハンターとなり、宝を隠したユーザの宝を制限時間内にて探し当てる。

上手く宝を隠した隠す側をSetterとし、逆に隠した宝を探し当てる側をHunterとし、それぞれに上手く宝を隠した、もしくは宝を発見したものをランキング形式で表示し、ユーザへのインセンティブを高める仕組みも用意している。それらのインセンティブによって、商品を得る楽しみや探す楽しみ、それらのスリルやゲーミフィケーション的な面白さを提供する。企業としても、サイト内への訪問や宝配布による知名度アップ、サイトの滞在時間を高めるなどの効果を期待している。

提携してくれる企業が増えることにより、フィールドが拡大し、より宝を探し当てる楽しさが増す。日本における広告市場だけでなくアメリカなどの海外の広告市場も視野にいれた展開も目指している。世界8億近くあるウェブサイトをフィールドに、宝を探す楽しさ、宝を隠す楽しさを提供していきたいと語った。

6.電車内のユーザでの匿名チャットSNS「おしゃべりバナナ」

電車で見かけるあの人と、匿名でチャットがしたい。こうした思いから作られたのが「おしゃべりバナナ」だ。

電車という限られた特殊なコミュニティ内限定でのチャットルームが作成され、同コミュニティ内にいるユーザの書き込みを見ることができる。ユーザは、ログインすると自分のIDがランダムにネーミングされる。また、その際には、果物の名前がつけれれる。例えば”sexy banana”などだ。乗っている電車だけでなく、同じ路線や同じ市内など、位置情報をもとに、いくつかのレイヤーに応じたグループチャットをおこなえる。

ユーザは、SNS内での匿名の書き込みをもとにチャットルームでコメントしあえる。実際に街にでてアンケートをとり、手応えも感じたという言う。ユーザは、特定のユーザに個別チャットをおこなうためには、ポイントを消費しないとおこなえない。ポイントは、友人の招待か、もしくは購入でポイントを取得することができる。

街でのヒアリングの結果からも、Twitterの利用の高さを感じると同時に、人々の多くは匿名的にTwitterなどのSNSを使っているという結果をうけ、匿名性におけるコミュニケーションのやりとりの可能性はまだまだあると語った。特に、女性へのアプローチを高め、女性でも楽しみやすいゲーム性をもたせたものに実装していきたい、と今後のマーケティング展開についても語った。

7.グループ内で欲しい・持ってるを共有し貸し借りをおこなうソーシャル貸し借り「Commoboco」

自分が欲しい書籍を買ったら、友人も同じものを買っていて、貸し借りで読むことができたのに、友人とダブりがでることはないでしょうか。そうした提案からプレゼンはスタートした。「Commoboco(かまぼこ)」は、そうした、友人間で貸し借りがおこなえるものを効率良くシェアするためのサービスだ。

仲間内でグループを作り、その友人たちと欲しい(Want)と持っている(Have)をリスト化し、シェアする。それらを特定の仲間内でシェアすることで、アナログな貸し借りをもっと効率良くさせることを目指している。もちろん、複数のグループを作ることも可能だ。欲しいがグループ内で共有されることで、そのグループでの共同購入(ここでは、そのグループで1つの書籍を買うことを意味する)によって、安く目的の書籍などを手に入れることもできるようにしていく。

マネタイズとして、欲しい・持っているが可視化されることにより、同じ趣味趣向の合う人とのマッチングや、趣味趣向のプロファイルによる広告、行きたいイベントがシェアされることによるイベントの提案や告知などが行えるようにする。他にも、エンタープライズ向けとして、同部署や同プロジェクト内でシェアなど、企業内SNSでの機能として提案できるのでは、とプレゼンター、審査員ともに同じ意見が出るなどした。

結果発表と、審査員たちのコメント

以上が、最終プレゼンをおこなった7チームのプレゼンだ。それぞれ、紆余曲折ありながらもきちんと最終プレゼンをおこない、形にした。審査員として参加した方々も、どのサービスも面白く、審査は難航した。そうした中、優勝者、3位までの入賞者、そして副賞などが急きょ用意された。

審査員として参加した株式会社はてなの近藤氏から、入賞者の発表がおこなわれた。3位は、ユーザに新しい宝探しを提案する「Tretsuku」、2位はノートを共有し売買するサービス「Note Mall」、そして、優勝は、電車内で匿名チャットがおこなえるSNS「おしゃべりバナナ」が獲得した。

優勝チームの「おしゃべりバナナ」に、優勝直後のインタビューをおこなった。優勝のおしゃべりバナナおめでとう!筆者は、優勝直後のチームに、動画インタビューをおこなった。

また、3位までの入賞以外にも、副賞として、シェアオフィスのシェア烏丸賞を「Note Mall」に、審査員の1人である株式会社のぞみ代表取締役の藤田功博氏による藤田賞として「MassDriver」、はてな賞として「yenta」、審査員の株式会社ロックオンの岩田進氏による岩田賞として「Commoboco」が獲得した。

また、それぞれの審査員からも、本イベントを通じた感想を伺った。
審査員の1人であった株式会社クエステトラ 代表執行役CEOの今村元一氏は、「作ろうと思う気持ちはいい。実際に作ったものが見れるのはいい。会の存在意義がある。しかし、アイディアは難しい。作る自体はいいが基本になるアイディアは大事で、大きく売れるものはなかなか難しいが、荒削りな感じはこれからももっと期待したい」と語った。

また、のぞみの藤田氏は「年々すごくレベルが上がってきている。審査員はじめ、主催者がビジネスモデルが大事だと語っていたので、空想ではなく、もう少しこうしたらビジネスになりうるものがあがってきている。そうした意味でも、レベルが高かった。作りこみのレベルとビジネスモデルのレベルの2つが上がってきた。さらに高望みしれば、toBやtoCでもっとニッチなものが出てきてくると面白いのでは。そうした意味で、ユーザの声を聞き、既存サービスがやっていないものを探すマーケティング戦略をよし洗練させるといいのでは」と語ってくれた。

はてなの近藤氏は「今回で3回目でずっと参加しているが、年々レベルが上がってきている。プロダクトアウトで自分のアイディアありきではなく、しっかりと世の中のニーズや生活のいち利用シーンを想定し、これがあればもっと生活が面白くなるよね、という提案のものがありすぐに使ってみたいというものが多かった。

そうした意味で、サービスとしてネットで完結せずネットと現実との距離感が詰まってきている。一般的なスタートアップ系のイベントと違い、54時間という短い時間でチームビルディングからプロトタイプのプロダクトまでを作るというのは毎回驚かされる。その場で出会ってアイディアをシェアし、そのアイディアをもとに進めていくのは、すごく採用されるアイディアが本質を突いていたりすることも多い。各チームともバランスがとれていて、しっかりとビジネスモデルもかためてきてよかった」と、Startup Weekendのよさを語ってくれた。

今回のStartup Weekendも、様々なドラマや熱い展開が繰り広げられた。次回は、8月31日から東京でも開催される。ぜひ、興味のある人はこちらから参加申し込みができる。

また、今回参加した参加者のみなさん、また審査員や運営、メンターに関わった方々にも、休日の中3日間ずっと参加者と一緒に作り上げてきた活動に労いの言葉をかけたい。こういう風に、参加者だけでなく運営などの様々な形で関わっている人たちによってイベントが成り立っていると同時に、共に様々な形でスタートアップを盛り上げていくカルチャーをつくっていきたい。今度も、こうしたスタートアップコミュニティを大事にし、今後も新しい展開を見せてくれるよう、一緒につくっていけることを期待したい。

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