ベトナムのテックシーンが解決すべき5つの課題

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startup-vietnam-technology-kms-aothun-startnetwork-launchベトナムのスタートアップが必要としているもの、欠けているものとは何か? テックコミュニティの年に一度のイベントの帰りに、私はこの質問を何人かの友人に尋ねたところ、彼らは即座にこう答えた。

「集中! 技術スキル! 露出! 創造力! 勇気!」

ハノイやサイゴンで行われた数あるテックイベントの中でも、このカンファレンスでは特に印象が残ったことがある。スピーカーと聴衆の意識の乖離だ。世界各国から招かれたレベルの高いスピーカーが、次にテックに何が起こるかを話していたが、まだフィーチャーフォンが主流のこの国で、どれだけ三次元ジェスチャー認識のインターフェースが関係してくるだろうか?

ベンチャーキャピタリストの友人は、「天国から地獄」と表現した。

「このイベントに参加したスピーカーは、ベトナムのスタートアップの抱える本質的な問題を解決する話をほとんどしていなかった。天使が悪魔に話しているようだった。」

しかし、本質的な問題とは何なのか? それは、どうすれば、ハノイとホーチミンを中心としたベトナムのテック・コミュニティがシリコンバレーのような団結力を発揮し、国内、そして世界市場に強烈なインパクトを与えるような、個人、企業、商品を輩出できるようになるかということだ。

過去3ヶ月間にわたって、ベトナムのテック業界のCEOやエグゼクティヴから、改善すべき5つの主要分野について話を聞いてきた。コミュニティの構築、アイデアの扱い方、意思決定、技術スキル、ビジネスへの精通についてだ。各分野について詳しくみてみよう。

1. コミュニティの構築

2009年の段階では、コミュニティを探すのは簡単なことではなかった。Facebookのユーザーは300万人以下だった(現在、Facebookは、ベトナム最大のソーシャルネットワークで800万人以上がメンバーになっている。テックに精通したイベントを探すのも難しかったり、参加者が少なかったりした。Barcamp Saigonはこの地域の中で最大のイベントを開催し、数百人の参加者がいた。)

この地域から育ったウェブ企業には、VNG、VC Corp等があり、それ以外にもこれから成長が期待される会社がある。ウェブ上には、細分化されたフォーラム以外に、同じ考えを持った人が集まれる場所はなかった。Launchはそこに入ってきた。

Launch は、“ベトナムのネット系スタートアップのコミュニティ“として始まった。2009年の時点では、たった数百人のメンバーしかいなかった。Launchの共同創業者であるTrung Huynhは、コミュニケーションが必要不可欠だと感じていた。

「お互いがお互いを知らない。誰が何をやっているかも知らない。彼らは、シリコンバレー・スタートアップの情報へのアクセスもなく、テクノロジーの最新トレンドについての情報もほとんど知らなかった。そこで、私たちは、Paul Grahamのようなテック業界のリーダーのコンテンツを翻訳して載せること、ベトナムの成功しているCEOと毎月イベントを開くことから、Launchを始めた。」

6ヶ月間これを続けたあと、コミュニティは次第に自立していくようになった。Launchのメンバーは独自のイベントを立ち上げるようになり、Facebook グループに独自のトピックを持ってくるようになった。今では、5,631人のメンバーがいて、ここがベトナムで最新のテック系の話をする一番の場所となった。

そして、さらに多くのニッチなウェブ分野——テクニカル、ファウンダー、スタートアップ・ニュース等——でも、Facebookグループが作られるようになってきた。しかし依然、コミュニティの問題が残っている。なぜなら、Launch は、側面的な問題しか解決していないからだ。コミュニケーションのもう一つの側面とは、アイデアに対する姿勢だ。

2. 新しいアイデアをどう取り扱うか

多くの東アジアでそうであるように、ベトナムの子供たちも儒教精神に沿う家庭で育てられてきた。儒教では、現状からの変化を恐れ、ヒエラルキーに従うのが望ましいとされる。また、発展途上でテック・コミュニティが急成長しているこの国では、市場環境が競争に富んでいて若い。現状維持の傾向は人々を新しいアイデアに対して慎重にさせ、競争によって、人々は創造に対して保守的になってしまう。このことは、市場の動向にも反映されている。

スタートアップが大きなビジネスを始めようとする、例えば、B2BのEコマースサービスだとする。企業は懐疑的になるだろう。B2Bのスタートアップの多くはこう考えるだろう。

「なぜ、私たちの会社が、市場でその存在を証明していない名前の売れていない会社に対して、リスクを取る必要があるのだろう?」

確かにリスクは高い。しかし、市場にこれだけ多くの消費者向けEコマースやソーシャルメディア・クローンが存在するのは、不思議には思わないのだろうか。これらは比較的安全な賭けであると思われているし、企業よりも消費者の方がリスクを取る準備ができている。

このようなことを元に、KleiiNguyen Tuan Son は2つの考え方に行き着いた。

  • ・ この考え方は大きすぎて、私にはできない。きっと、他の誰かがやってくれる。
  • ・ 私は他の人のアイデアに乗っかろう。

アイデアに対して保守的であることは、見落としがちな分野にも大きく影響してくる。その分野とは、エグゼキューションだ。

3. アイデアを守る vs 新しいアイデアを実行する

ベトナムのように、発展途上にあるアジアの経済圏では、人はアイデアをコピーする。したがって、人々はコピーされることを恐れ、コピーすることが正当化される。ちょうど、隣の中国で見てきたように。ベトナムのテック・スタートアップは、どの市場も飽和状態だ。例えば、Eコマース、チャットアプリ、ソーシャルメディア、共同購入クーポンなど。このような状況が影響して、成功に向けた重要な事柄ではなく、アイデアを守ることにエネルギーを注がせてしまう。ここで欠けているものは、エグゼキューション、チーム・ビルディング、人間関係の構築だ。

スタートアップは、自らを成功に導いているのはアイデアではないということをわかっていない。アイデアのエグゼキューションこそが、成功に導いてくれるのだ。JoomlArtのNhan Tri Vuが最近私に教えてくれたように、企業は自分たちのアイデアを過信している。彼らは、自身のデータや市場をどのように読み解くのか分からないまま、建設的でないエゴなゲームを繰り広げているのだ。

KMSViet Hungは、アイデアよりチーム・ビルディングの利益を強調する。

「スタートアップのビジネスで、ソフトウェア開発をサポートすべきなのは当然のことだが、リーダーシップ・コミュニケーションの役割が依然として小さ過ぎる。起業家やテクノロジーに従事する人々は、よいチームを構築することの重要さに気づいていない。あなたが素晴らしいリーダーなら、共に仕事してくれる人を集めるだろう。弱いチームなら、才能ある人が一緒に仕事してくれるだろうか。」

4. 技術スキル

しかし、ベトナムのテック界に、才能のある人が十分にいるだろうか? ベトナムはIT分野に毎年15万人以上を輩出しているが、多くのマネージングディレクターやCEOは、才能をある人を雇用し維持するのが困難だと不満をもらしている。このことは、OCR、拡張現実、Python に代表される新しいプログラミング言語など、最先端技術を必要とするプロジェクトに特に言えることだ。

私が、記事冒頭で述べたカンファレンスは、BTICの話である。今年のイベントで、ベトナム有数のテクノロジー企業であるVNGLe Hong Minhは、日本の企業と比較して、ベトナムの技術者を次のように批評した。

  • ・ベトナム人技術者は、ハングリー精神が足りない
  • ・ベトナム人技術者は、与えられた仕事をしない。
  • ・ベトナム人技術者は、スピードが足りない。

これら3つの問題点も重要だが、それ以上に外で新しい言語に挑戦し、誰かに監督されなくても自らのプロジェクトを進めて行くような技術者を見つける方が、はるかに難しい。

もう一つ、インタビューの中でよく聞く批評は、プロダクトマネージャーとシステムアーキテクトの欠如だ。新しい商品を作るとき、その商品の詳細について深く知りつくし、チームを商品のビジョンへと導くことができる有力な人がいない。また、大量のデータを扱い計算できるような、高度かつ精巧なソフトウェアを構築できるような人もいない。

海外の企業やアウトソーシングの企業は、国際企業が必要とする精巧なソフトウェアのプロジェクトを完遂するのに苦労している。これはスタートアップにも言えることだ。十分な経験を持つプロダクトマネージャーやシステムアーキテクトが見つからないのに、どうしてハイテクなソリューションを提供することを起業家は夢見られるのだろうか。

5. ビジネスへの精通:市場に繰り出す

最後に、そして、このリストの中で最重要かもしれないのは、「ビジネス」についてだ。

ビジネスパーソンの確保がどれほど重要かに気付いていないか、または、ビジネスに精通した人を探すのに苦労しているテクニカルなチームは少なくない。問題なのは、彼らが問題を直視していないことだ。Ao ThumNguen Van Locはこうアドバイスする。

「ビジネスとは、社会にサービスを提供してお金を得ることだ。私たちの最大の課題は、社会が本当に欲しているものを見つけることだ。」

The Start NetworkのChris Zobristも同じような話を口にした。

「多くの起業家は、顧客が必要としていることや、顧客が抱えている本当の課題への解決に集中することができず、ベンチャーの立ち上げから早い段階で身動きが取れなくなってしまう。」

市場はこのような考えを受け入れられる準備は整っているのか。KMSのViet Hungは、ベトナムのソフトウェア市場はアテにならないと警告する。例えば、消費者にソフトウェアを売るとする。しかし同じソフトウェアが路上でDVDに焼かれて無料で手に入るのだとしたら、企業はどうやってお金を手に入れれば良いのだろう?

収入が得られないのなら、どのように才能のあるエンジニアを雇うことができるというのだろう。才能のあるエンジニアが見つからないのに、どうやって素晴らしい商品を作り出せるというのだろう? 代わりに国外に目を向けた方が良い。

前進する方法

最後に、2013年にはソフトウェア政策が厳しくなるかもしれない。EuroCham Vietnamのベトナムの政策担当者への最新の提言(PDF)は、今回の制限が多く官僚的なソフトウェア開発ルールが、本稿に挙げたような問題の解決に必要な成長を妨げることになるかもしれないと、警告している。

この記事に書いた内容を見ると、先が暗く感じるだろう。今のところは、それはそれで仕方が無い。今後の記事でベトナムのテック・シーンの強みについて明らかにしていきたい。

(話を引用させていただいたインタビュイー、匿名を希望しながらも、喜んで話に応じてくれたCEOやディレクターに謝意を表する。)

【via Tech in Asia】 @TechinAsia

【原文】