中心となる現役世代の不足と、地元の情報発信力の向上が課題−−福岡の起業コミュニティ醸成に必要なもの

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以前の記事で、福岡市が掲げる起業支援の取り組みについて書いた。

行政もバックアップする取り組みに期待すると同時に、果たしてそれらが機能しているのかも注目していきたい。実際の状況や課題について、本業の人材育成という視点から産官学の連携を推進している村上純志氏に話を伺った。

中心年齢と男性不足に悩まされる福岡市

高島福岡市長は、福岡の特徴として15歳から29歳の若者の割合が日本一なことをあげていた。たしかに、九州全土から若い人たちが集まり、大学も多いため街全体としても活気に溢れている。

筆者も福岡出身のため、肌感覚としても理解できるところだ。最近では、10代や20代での起業やスタートアップも増えてきているという。しかし、30歳から40歳前後にかけての中心的な現役世代の不足があるのでは村上氏は指摘する。

「大学まで福岡にいても、多くは東京や大阪などの関西圏へ就職するのが現状。福岡に残って仕事をする人たちの多くは、起業という選択肢は少なく、就職したり家業を継いだりといったことが多い」(村上氏)

実際に、福岡市の人口比率について、市役所のデータをもとに見てみよう。

(図1:住民基本台帳をもとにグラフ化したもの(データをもとに筆者作))
(図1:住民基本台帳をもとにグラフ化したもの(データをもとに筆者作))

上記は、福岡市が毎月更新している住民基本台帳に基づく人口統計表をグラフ化したものだ。比較のため、東京都の人口統計表も並列している。

(図2:住民基本台帳を参考にしたデータ表(筆者作))
(図2:住民基本台帳を参考にしたデータ表(筆者作))

こちらの図は、グラフの元データとなっている数字と、各人口総数の割合を算出したものだ。実数では福岡と東京は10倍近い差があるため比較はできないが、比率で比較すると10代や20代の人口比率は東京よりも高い(福岡10−14歳は4.47%(東京3.93%)、15−19歳は4.66%(東京4%)、25−29歳は7.25%(東京6.96%)など)。反対に、30代から50代の年齢層においては、は東京の人口比率よりも少ない結果(福岡40−44歳は8.18%(東京8.72%)福岡45−49歳は6.8%(東京は7.4%)など)となっている。

さらに、東京では65−69歳の年齢層以降から女性比率が高くなっており、人口比率としても男性と女性の割合はほぼ同率程度となっているのに対して、福岡市では20代から60代までの年齢層のすべてにおいて、男性よりも女性の人口数が多く、福岡市は全体として男性不足ということも統計上は現れている。(*1)

福岡市は若い人は多いが、30代や40代、50代といった働き手の現役世代不足が課題であると言える。若手の育成環境に力を入れるだけではなく、それを実際に教える存在、つまりビジネスの先輩でありメンター的存在としての現役世代の拡充や支援も取り組むべきかもしれない。

「最近では、市が企業誘致に力を入れたり、都心からUターンやIターンといった形で福岡で就職や起業したりする人が増えてきましたが、まだまだ割合としては少ない状態。日頃IT業界の方々とお仕事をしているなかで、肌感覚としてIT業界は現役で活躍する存在の不足を課題だと感じています。

現役世代で業界を牽引するスターが福岡でもっと増えたり、福岡で働くことの魅力や福岡で起業する環境を充実させて現役世代が増えたりすることで、起業そのものや起業を推進する仕組みも広がるのでは」(村上氏)

「福岡」に関する人、モノ、コトの情報が不足している

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地方で就職や起業をせずに都心へ行くのは、福岡だけに限らず全国各地で言える問題かもしれない。こうした問題の多くに、地方の「情報量」の少なさが指摘される。

ネット上で情報収集をすることは可能となったが、いまだ対面による情報交換や交流への意識は高い。やはり、人が集まったり、そこでコミュニティが生まれることで創発が生まれたり、起業仲間を見つけやすかったりといったことが挙げられる。

「東京に行けばなんでもある、という印象はいまだ拭えていません。しかし、先日インテルのコンテストで賞を獲得したしくみデザインさんや、アジアでも活動しているヌーラボさんなど、福岡を拠点に世界で活躍している人たちは多い。

福岡から世界に出て活躍している企業やクリエイターを福岡にいる人たちが知る機会がないために、多くの人たちが東京に行かないと、と思ってしまうのかもしれません。最前線で活躍しているクリエイターや起業家を知り、彼らと接する機会がもっと増えることで、福岡の起業コミュニティがより充実してくると思います」(村上氏)

コワーキングスペースや、イベントを開催するような人が集まれる場所はある程度あるが、「あそこに行けば誰かいる」「あの場所には面白い人たちが集まっている」といった情報そのものが足りていないため、コミュニティが活性化していないのでは、と村上氏は指摘する。地域で活躍する人たちの情報を発信するメディア不足を解消することで、都心へ行こうとする人たちのマインドを変えることができるかもしれない。

自分から能動的に情報に対して働きかけようとする一部の人たちだけではなく、広く多くの人たちに対して情報を届けることと、その情報をもとに人が集まれる環境を作ることが必要だ。こうした取り組みは、福岡のみならず全国各地の都心一極集中からの脱却の一つの方法となりうる。

福岡市が掲げる「スタートアップ都市・ふくおか宣言」や、「明星和楽」といった取り組みも、THE BRIDGEも含めて東京発のメディアの発信は多いが、地元での情報発信と認知がどれだけ広がっているのかはたしかに気になるところだ。

福岡にしかない情報、福岡に行かないと手に入らない情報を作ることで福岡に人が集まりやすい環境が生まれ、そこから新しい起業家やクリエーターが生まれることを期待したい。


*1 人口以外にも、福岡市の開業率といった数字は「福岡の今 数字でみる人と経済(財団法人福岡アジア都市研究所 2012年)」に詳しく記載されているので、興味がある人は読んでみると新しい気づきが得られるかもしれない。

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