
新しいものづくりに挑戦しているエンジニア、またこれから挑戦しようというエンジニアたちを応援することを目的としたウェブサイト「fabcross」。昨年10月にスタートしたこのサイトが、今回トークイベント「fabcross Meeting vol.01 〜ブームで終わらせない『次世代ものづくり』のあり方」を開催した。
2番目のセッションに登場したのはスケルトニクスの白久レイエス樹氏と、V-Sidoの吉崎航氏だ。二人の若手研究者たちが「次世代ものづくりのクリエイティビティ」というテーマでトークを行った。
外骨格「スケルトニクス」
白久レイエス樹氏は、現在、東京大学大学院で修士2年、専門は海中ロボットだ。沖縄高専出身で、高専時代からスケルトニクスの開発を行ってきたという。スケルトニクスは映画「マトリックス レボリューション」、「エイリアン2」、「アップルシード」等の作品に登場した強化外骨格を彷彿とさせる。
ロボットコンテストに出場していた白久氏。ロボットコンテストへの出場を引退して、次は何をしようか、と考えたところ、巨大なロボットの開発に着手した。
最初は半年間という限定プロジェクト。あまり時間がないこともあり、無動力で動くもの、人間が中に入って動かすタイプのロボットを開発することとなった。強化外骨格を彷彿とさせる外観だが、まだ人間を強化することはできず、乗っていると5分ほどで搭乗者は疲労してしまうという。
人型ロボットの操縦を可能にする「V-Sido」
吉崎氏はヒューマノイドロボットのソフトウェアを開発している。ロボットがいて当たり前の社会において、足りていないものを補完できるような仕事をしたい、と考えているという。知能と機械を仲介するシステムの開発をしている。
V-Sidoは3つのコンセプトを持っている。予め作った動きのみではない「リアルタイムな操縦」、人間の動きをコピーするだけではない「シミュレータと同期することで動作を安定化」、人間の疲労を最低にする「操作補助による操縦の効率化」だ。
吉崎氏はこういったソフトウェアの開発をする理由になったのはアニメが好きだから、とコメント。パトレイバーなどロボットの操縦を行うアニメが好きだったという。吉崎氏は単にロボットを開発したいのではなく、ロボットが当たり前に存在する社会を作りたいと考えているため、V-Sidoを導入するロボットは販売されるものに限定しているという。
ちなみに、吉崎氏が携わっている巨大ロボ「クラタス」は、4月に上映予定の映画「実写版パトレイバー」に登場予定だという。
映像を公開することによるフィードバック
二人に共通しているのは、スケルトニクスもV-Sidoもインターネット上に映像をアップロードし、それが人々の注目を集めている。iPhoneなどスマートフォンで映像を撮影し、自分で編集してYouTubeやニコニコ動画などを通じて公開することで、新たな道が開けたともいえる。
彼らはプロトタイプの様子を発信して反応を見ながらさらにプロダクトをブラッシュアップした結果、ニコニコ超学会やMake;などにつながった。今後、モノづくりを行っていく人々は、プロトタイプを公開していきながら、その開発プロセスをオープンにしていくことを視野に入れたほうがいいのではないだろうか。
これからのモノづくりにおいて
二人とも、一人で全部の作業をやりたがる人間だったそうだが、色々なモノづくりをするためにはチームでの作業をすることや分業することが重要だとコメントした。モノづくりをしていく上で気をつけていることは、リスクに配慮することはもちろん、開発における情報共有のやり方をしっかりと考え、実践することだと語った。
アメリカはビジネスありきでプロダクトを作っている例が多いという。モノづくりをする上でビジネスの点を考えることは重要である一方、ただ自分が作りたいだけ、という気持ちもを大切にすることも重要なことだと白久氏は語っていた。
チームマネジメント、リスクマネジメント、情報共有、ビジネスモデル、このあたりのことはハードであっても、ウェブサービスであっても共通するポイントだと考えられる。モノづくりにかぎらず、視野を広げ、他の業界での事例からヒントを得られることもあるかもしれない。
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