10人に1人の狭き門を突破してアプリ開発者の人気養成スクール「Make School」に参加した高橋麻衣さん

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Mai-Takahashi
日本から唯一「Make School」に参加した高橋麻衣さん

「Make School」(旧 MakeGameWithUs)は、iOSアプリ開発者を養成するためのプログラム。2ヶ月半にわたるプログラムの参加費は6,000ドルと決して安くないものの、参加希望者は世界中から集まり、その倍率は10人に1人の難関です。そんなMake School 2014に日本から唯一参加した日本人が、高橋麻衣さんです。

彼女が、HTMLやCSS、JavaScriptの修得に本格的に取り組むようになったのはわずか1年前。その後、フリーランスで受けた仕事がきっかけとなって、現在はカナダに在住しています。「サンフランシスコでMake Schoolのブートキャンプに参加したことが、自分の人生を180度変えた」と話す麻衣さんに、Make Schoolについて、また海外でフリーランスとして仕事をする楽しさやチャレンジについて伺いました。

開発のみならず、起業家になったつもりで取り組むプログラム

Make-School-website

ーそもそも、Make Schoolに参加することになったきっかけは?

ワーキングホリデーのビザを取得して、カナダに行ったのが10ヶ月ほど前です。その直後に、シリコンバレーでエンジニアをしている友人から、今年6月にブートキャンプがあるよと教えてもらって。それが、プログラミング未経験者がゼロからiOSのゲームを作る趣旨で開催されるMake Schoolでした。ちょうど力試しをみしてみたいと思っていた時だったので、いいチャレンジだと思って、すぐに応募することを決めたんです。

ー参加は10人に1人の狭き門だと言うことですが、プログラムの参加の選考がどんな風に進んだか教えてください。

今回は、年齢が下は14歳から40代の人まで、28ヶ国から参加者が集まりました。学生さんも入れば、起業家もいるし、Googleのエンジニアだったけれど辞めて参加しているような人もいて。選考はSkype面接から始まって、自分がMake Schoolに参加してどんなアプリを開発したいのか、そもそもの参加動機、あとは卒業後に何をしたいのか熱弁をふるいました。Skype面接で通ると、今度は課題が出るのでそれを提出して、結局選考プロセスは3週間くらいだったと思います。私は、奨学金付きで合格したため、授業料は通常の6,000ドルではなく2,000ドルで参加できました。

ー参加してみて、Make Schoolはどんな感じでしたか?基本はゴリゴリ開発をする感じ?

Make Schoolは、サンフランシスコ、ニューヨーク、パロアルトの3ヶ所で同時開催されるんですが、私が参加したのはサンフランシスコです。ゲームアプリの開発者を排出することがプログラムの目的なので、すごくゲームゲームした方ばかりが集まっているのかと思ったんですが、意外とそうでもなくて。

参加者は、全員ひとり1個のアプリを開発します。私は、タップして点数を稼ぐゲームアプリを開発しました。面白いのは、開発だけではなく、ユーザーリサーチから、マーケティング、マネタイズの手法、プロモーション、また投資家の前でピッチする方法まで、起業家になったつもりでサービス運営についてあらゆる方面から学ぶことができたことです。

“Ship fast, fail fast.”

Make Game With Us に参加したチーム
Make Game With Us 2014 に参加したチーム

ー麻衣さんは、もともと英語は話せましたか?英語のプログラムについていくのは大変じゃなかったですか?

大学の頃から細々と独学で勉強していました。それこそ、家でもHuluを流したりして耳を慣らしたり。授業のスピードがすごく早いので、最初はついていくのにすごく苦労しました。ゲームディレクターのインストラクターには色々的確なアドバイスをいただいたんですけど、厳しい言葉もかけられました。一度、名指しで、「君のプロダクトが良くならないのは、君の英語に問題があるからだ。ここに来ていいプロダクトを作りたいなら、英語がまずできなきゃダメだ」って。すごく悔しかったんですけど、その通りなので、その悔しさをバネにして走りきった感じです。

ーある意味、参加者はみんなライバルとも言えますね。良い意味でもそうだろし、でも孤独を感じることもあったのでは?

孤独ではないですけど、大勢の生徒に対してインストラクターの数は限られているので、いかに彼らの時間を確保するかは大変でした。何か気になったら、すぐに声をあげて聞かないと。でも、Make Schoolに参加することで自分の力を確かめられたし、自分にもチャンスがあると感じられたことが自信になりました。最中は、ずっとヒーヒー言いながらやっていましたけど(笑)。

ーMake Schoolでよく言われたことで印象に残っているセリフはありますか?

“Ship fast fail fast.”(早く出して、早く失敗しろ)というのは、よく言われましたね。今、フリーランスでデザインの仕事をしている中でも一番大事にしていることです。100%作ってから見せるんじゃ遅いから、どんどん出して失敗するなら早く失敗して改善しろって。

あとは、ゲームアプリを作っている中で、「そのアプリは誰が楽しむの?」と繰り返し聞かれました。Make Schoolにはそもそもゲーム好きの人が集まっているので、どうしても自分の世界に入って突っ走ってしまうみたいで。常に、その先のユーザーのことを考えることを叩き込まれました。

仕事を辞めて独学で勉強、そしてカナダへ

ーMake Schoolはアプリ開発者を創出するプログラムですけど、麻衣さんはアプリ開発ではなくてデザインの道に進んだんですね。

Make Schoolに参加する前は、卒業したらiOSのエンジニアとして仕事するのかなと漠然と思っていました。でも、キャンプ中にデザインをほめてもらうことが多かったんです。プログラムの卒業後に、500 Startupsに参加するからロゴを作ってほしいとキャンプメイトに頼まれたり。他にも、その時に知り合った方にデザインの仕事を発注してもらうことが重なって、だんだんにUIデザインの仕事をしたいと思うようになりました。

ーそもそも、フリーになってカナダに渡る前はどんなお仕事をしたのか聞かせてください。

大学では、情報経済学やゲーム理論なんかを勉強していて、当時から「Snapeee」でバイトをしたりしていました。その後、サイバーエージェントグループの会社で半年間くらい営業とディレクターのアシスタントをしていたんですが、いつか作る側の仕事に就こうと思っていました。だから、休日にはHTMLやCSS、Javascriptの勉強をしたりしていました。

ー作る側の仕事を本格的にやろうと決意した転機みたいなものはありましたか?

当時、自分の家庭環境の変化が重なって、自分の将来について色々考えていました。今考えてみてもかなり思い切った決断だったなと思いますが、最終的に会社を辞めて、腹を据えて作り手を目指すことを決めました。その後、2014年1月頃に、「Photo Hack Day Japan」というハッカソンがあって、エンジニアの友人と参加してみたところ、スポンサー賞をいただけて。まだ先のことが何も決まっていない状態でしたけど、進んでいる方向が間違っていないと実感する機会になりました。

ーその後、カナダに渡ったんですね。VISAの申請は大変じゃなかったですか。

私は2014年4月にカナダに渡ったんですが、申請して早ければ1ヶ月くらいで取得できます。オンラインでデザインの仕事を探していたら、たまたまオンライン三行広告のCraigslistでレストランのウェブサイトを作る案件があって。英語力も伸ばしたいし、これまで留学経験などもなかったので、いっそ海外に出てみようと。

ーお仕事がきっかけだったとはいえ、住む場所にカナダのバンクーバーを選んだ理由は?

まず、ワーキングホリデーのビザが取得しやすいこと。あと、バンクーバーにも色々スタートアップが増えているんです。テクノロジーの中心地であるシリコンバレーも決して遠くないので、Y Combinatorに出ることを目指すスタートアップもいます。今って日本にいても色々情報が入ってくるんですけど、地理的になるべくシリコンバレーに近いところに身を置くことって大事かなって。そんな理由から、周りにも日本人のデザイナーやエンジニアの方が増えてますね。

目指すのは、日本とアメリカの架け橋

Mai-Takahashi-side

ー今、どんなプロジェクトをやっているのか聞かせてください。

Make Schoolのブートキャンプで借りていたオフィススペースに入っている「Apportable」という会社の人が、私がDribbbleに上げている作品を見てくれて、今、Twitterのタイムラインを音声で読み上げるアプリのUIデザインをやっています。また、日本では、レアジョブが出している「Chatty」という英会話修得のためのチャットアプリがあって、そのUIデザインもやっています。次にアップデートしてリリースされるバージョンは私がデザインしたものになっているはずです。

ー新しいお仕事は、普段どうやって見つけていますか?人づてに依頼が来るんでしょうか。

やっぱり、自分の作品や実績を見せていくことが大事なので、自分でもポートフォリオサイトを作って発信しています。カナダでやった最初の仕事は、自分でCraigslistの募集案件を見て見つけました。あとは、Dribbbleに作品を上げていたり、それをLinkedInなどでも表示しているので、それを見て相談されることも多いですね。でも、DribbbleとFacebookを経由して依頼をいただくことが一番多いです。

ー海外のクライアントと仕事をする上で意識していることはありますか?

海外のクライアントには、“What do you think?”とよく聞かれます。自分の意見をきちんと伝えられるように、何となくデザインするのではなくて、常になぜ?を自問自答しながらデザインする癖がつきました。そう聞かれた時に、ちゃんと相手が納得する形で伝えられる必要があるので。年齢がひと回り、ふた周り一回り、上に方でも聞いてくれます。また、短いミーティングの中で色んなことが決められて進んで行くので、その場で言えなかったことは一生言えないくらいの気持ちでやっています。

ー今後、どんなデザイナーを目指していきますか。

日本のデザインと、アメリカのデザインを比較して思うのは、日本には情報が詰まったものが多くて、アメリカはシンプルなものが多いことです。どちらがいい、悪いということではなくて、その中間点みたいなものを上手く見つけられるような、日本と海外の架け橋のような役割を果たせたらいいなと思っています。フリーという形にこだわっているわけではないので、次回サンフランシスコに行ったら、一度就職活動をしてみたいなと思っています。

ー麻衣さんは、自分の興味とか関心にすごく素直で、それを迷わず行動に移している印象です。

今回、日本に一時帰国する前にサンフランシスコに寄って、Evernoteで働いているデザイナーさんと話してきました。その時に言われたのが、「プログラマーはコンピューターサイエンス出身であるべきとか、デザイナーはデザイン大学を卒業しているべきというのは全て世の中が決めていること。キャリアの作り方に標準なんてものはない」って。確かに、自分もどちらにも当てはまらなくて、でも今、こうしてデザインの仕事をしている。結局、自分が好きで得意なことを素直にやっていくことが大事なのかなって。これからもそれを続けていきたいです。

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