Y Com輩出スタートアップMakeGamesWithUsに聞く、アプリ開発者養成ビジネスがスケーラブルである理由

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MakeGamesWithUs co-founder Jeremy Rossmann

Y Combinator が輩出した新進気鋭のスタートアップ MakeGamesWithUs の共同創業者 Jeremy Rossmann にあったのは数日前のことだ。THE BRIDGE のアドバイザーでもある小林清剛氏の進言で、日本を初めて訪れたという彼に、筆者は渋谷の街角でランチを共にする機会を得た。

MakeGamesWithUs のビジネスは iOS のゲーム開発講義だ。高校や単科大学の学生達に、短期集中の開発実践プログラムを提供している。Jeremy と話を始めた当初、スタートアップ界隈で近年よく見かける、MOOC やオンライン学習の一つかと思っていたが、実はフェイス・トゥ・フェイスで講師がモバイルゲーム開発の〝いろは〟を指南することがポイントだという。それなら、ビジネスのスケーラビリティを追求するスタートアップではなくて、市中にありがちな技能学校と同じじゃないかと聞いてみたら、彼からは予想を覆す答えが返って来た。

スタートアップの定義はさまざまだが、君が言うビジネスモデルがスケーラブルであることはポイントだよね。2倍の仕事をしたから2倍の結果が生み出されるのではなく、指数関数的(exponential)に伸びることが大事。我々のビジネスはスケーラブルだよ。

人が人を教えるには、講師を雇用しなくてはならない。しかし、「iOS でゲーム開発を教える講師を雇用することは、特に難しいことではない」と Jeremy。現在、ニューヨーク、サンフランシスコ、パロアルトにある3つのオフィスで、総勢125人の生徒に iOS ゲーム開発を教えている。それぞれのオフィスには40人ずつ位の生徒が居て、彼らはアメリカを含む18の国々から集まっており、日本人も3人が開発技能の習得に励んでいるとのことだ。

履歴書やリファレンスが必要のない、ゲーム開発者の世界

彼らの典型的な iOS ゲーム開発コースでは、最初の2週間で UI/UX デザインを初めとする基礎分野を学習し、残りの6週間で各々が自作のゲームを開発する。開発したアプリはアプリストア上に公開するため、今後、ゲーム会社に就職しようとする開発者にとっては、履歴書やリファレンスを用意しなくても、アプリストア上の自身のアプリへのリンクを採用部門に送信するだけで十分なのだ。

我々はオンラインでも講義を提供しています。でも、オンライン講義は我々にとって、生徒を集めるための入口のようなもの。SEO が功を奏して、毎月10万人のユーザが我々のウェブサイトを訪れています。ほら、「iOS game development course」って入力すると、必ず検索結果上位に表示されるでしょ? オンライン講義とフェイス・トゥ・フェイス講義の組み合わせが重要。そして、最終的に自分のゲームをリリースしてもらえるところが、他の既存の開発技能コースと差別化できている点です。(Jeremy Rossmann)

生徒の講義達成率は99%に上るのだという。講義を終えた彼らは、次々とニューヨークやシリコンバレーのテック・スタートアップやゲーム開発会社へと就職してゆくのだそうだ。

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日本とアメリカの開発者コミュニティをつなぐ

今回の Jeremy の来日目的は、日本で MakeGamesWithUs がビジネスできる可能性があるかどうかを見定めることだ。現在のアメリカでの講義に参加している3名の日本人生徒は非常に高いパフォーマンスを出しており、Jeremy 達は今後も日本から多くの生徒に講義に参加してもらうことを期待している。また、日本で不足している iOS 開発者の市場に、彼らが養成した開発者を送り込むこともできるだろう。

アメリカでは、トップランクの大学の学生をターゲットにしています。MIT(マサチューセッツ工科大学)、UC Berkeley(カリフォルニア大学バークレー校)、カーネギーメロン大学などでもカリキュラムに採用されており、受講することで単位がとれます。学校というのは教材を作るのに時間がかかりますよね。しかし、テックの世界はスピードが速いので、学校は教材開発が追いつかない。実用的な方法を指導できない。だから、我々の存在意義があるのです。日本ではどのような層が我々の講義を受けてくれる可能性があるか、これから考えたいと思っています。(Jeremy Rossmann)

教材が英語であることを考えれば、英語圏の複数都市に展開する方が簡単だ。ただ、UI/UX のノウハウを身に付ける目的で、MakeGamesWithUs では Android ではなく iOS のゲーム開発から実地演習を始める点から見ても、依然として iPhone ユーザが多くを占める日本市場との親和性は比較的高いと言えるだろう。

そのビジネスモデルは、本当にスケーラブルなのか?

数多くのIT技術者やエンジニア養成学校のひしめく今日、MakeGamesWithUs のビジネスモデルはスケーラブルなのか? この質問は「君のビジネスは、中小企業じゃなくてスタートアップなの?」と尋ねているのに等しい。Jeremy との別れ際、筆者のこの質問に彼は自信を持ってこう答えた。

これまでに3度のフェイス・トゥ・フェイスの講義を提供してきた。最初の回は生徒数35名で授業料無料、2回目は生徒数75名で授業料無料。彼ら生徒とは、授業料をもらう代わりに、リリースしたアプリからの売上をレベニューシェアするバーターにしたんだ。我々もユーザ・バリデーションだったから。そして、現在行っている3回目のコースは125名が集まった。授業料は5,000ドルに設定したけど、みんな喜んで来てくれるよ。

だから、この調子で SEO の強化などで多くの生徒を集めていければ、我々のビジネスはスケーラブルだと言えると思う。(Jeremy Rossmann)

話によれば、Jeremy の父もまたシリアル・アントレプレナーであり、これまでに多くの日本人投資家から多くの投資を受けてきたそうだ。そのDNAからなのか、彼は日本のスタートアップ・シーンにひときわならぬ関心を持ち、今後も定期的に東京を訪問したいと語ってくれた。

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