100人を解雇して150万ドルを失った起業家の体験談

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Alone in the silence by Bryon Lippincott, on Flickr

<ピックアップ> What I learned from sacking 100 employees and losing $1.5 million

スタートアップの失敗談や経験談は度々記事などで目にすると思いますが、こちらの一本はまさにHARD THINGS(献本頂いたのにまだ読めてませんごめんなさい)。

Finicというアート系のスタートアップを運営するロシア人起業家のVitaliy Rizhkov氏が書いたもので、創業期から現在のサービスを立ち上げるまでに失敗した数々のお金と人、仕事に関する話題を回顧録のようにまとめて共有してくれています。

これは長いですがぜひお時間ある方は原文をご一読するのをお勧めします。行間から彼があることを「発見」をするまでの過程がよく伝わる文章です。ざっとまとめるとこんな感じです。

最初のプロダクトを経験するまで

世の中のスタートアップ成功者をみて起業を決意したRizhkov氏は当時、金なし知識なし助言者なし。そこで最初にやったのは不動産事業でしたがあえなく破産。

その次に興味を持ったオンラインビジネスでは携帯ガジェットのコマース開始するも競合増えてシャットダウン。ようやく3つ目で始めたアフィリエイトビジネスはお金にはなったけどやる気は上がらず。

散々なスタートですね。

The trouble is that it wasn’t a real product, it was just a quick and easy way to make cash. I wanted to build products, apps, tools, websites.
問題だったのはそれが実際のプロダクトじゃなかったことだったんだ。確かに簡単に金は稼げたけど、私は本当のプロダクト、アプリ、ツール、ウェブサイトをやりたかったんだ。

そこで彼はアフィリエイトの収入を元手に、コマースに友人のお勧めをくっつけたようなアイデアを思いついてプロダクト開発を始めます。

外注先をベラルーシに発見し「5000米ドルもあれば3カ月でMVPができる」といわれて舞い上がりますが、6カ月経過して開発が終わるどころか費用は2万ドルに膨らんでしまいます。

最終的にその外注先は開発できず、大ショック。読んでて過去の私の経験と重なって涙が出ます。諦める訳にいかず、ベラルーシに飛んでその外注先から2名を雇って、アフィリエイトで稼いだ金を投入し続けたのが偉いですね。

1年後、さらに5000ドルを追加投資して開発人員も12人まで膨らみ、既にアフィリエイトのビジネスでは支えることができない状態になってしまいます。ここで友人に頼んで60万ドル借りてくるところなんかは起業家らしいです。

まあ、そうは言いながらも口座には資金もあるし、プロダクトは数カ月で2万人ほどのユーザーもついたので、投資家で多くのスタートアップにアドバイスをしているSergei Burkov氏に次のステップについて相談をするわけです。おそらく出資の依頼でしょうね。

ただ無惨にも「このビジネスは伸びないから閉じろ」とアドバイスされたそうです。※以前彼はこのアイデアを気に入ってたのに気が変わったそうです。あるあるです。

さすがにこれ以上お金借りたままというのもイヤだったし、アドバイスを受け入れてミーティングの次の日にサービスを閉じることに。プロダクトのチームは全てサイドビジネスだったアフィリエイトの会社に移籍させたそうです。

Money - Black and White Money by @Doug88888, on Flickr
Money – Black and White Money by @Doug88888, on Flickr

金を稼ぐためだけの仕事、そして失敗

で、こっからが逞しいです。

従業員を移籍させた3カ月後、アフィリエイトの事業は毎月10万ドルだった売上げが50万ドルに成長。この事業はその後、アフィリエイトチームとその効率化を図るツール開発チームに分割することで、更に成長して毎月100万ドルを稼ぎ出すようになります。

おお、よくここまで回復させたなと思いきや、Rizhkov氏は根本的にこのビジネスがあまりしっくりきてなかったんでしょうね。度々記事では「あんまり好きでなかった」と書いてます。

結果、2年目に入ってチームは100人になり売上も伸びるものの、元々外注や派遣が主体のチームだったので、彼が誰も信じられず、毎日16時間働く羽目に。

旅行にも行けず、家族ケアもできないまま、ある日、彼らの事業のターゲットだった個人向け消費者金融の事業者が法律によって口座が凍結されてしまい売上が激減、口座にあった100万ドルの資金も尽きてどうしようもなく100名を全員解雇ということになってしまいます。

弁護士からは破産すればいいと言われるも、彼は人として恐らくすごく正直な人なんだと思います。納得がいかないからと自身もオフィスの賃料や従業員の有給消化費用などで44万ドルを借金として背負うことに。口座の資金と併せて150万ドルが消えてしまいました。

そういう正直な人柄だったからか、全員解雇した後も初期メンバーの6人ほどは残ったそうです。

ここからが本当の再起となり、残った信頼できるメンバーでやはりアフィリエイトの事業を再度立ち上げたんですね。それで数カ月かけて負債を全て完済してしまったそうです。

この時の彼の心境が何というか、わかる人にはわかるんだろうなというものになってます。

I thought losing 100 employees and $1.5M while borrowing money to pay off my debt would put even more weight on my shoulders. It was quite the opposite.
100人の従業員と負債の返済で150万ドルを失うというのは、さぞや肩の荷になるのだろうと思ってたんだ。でも全く逆だった。

I felt as though a huge rock was lifted off of my back. I suddenly had TONS more time to spend with my family.
私はそのことで突然、家族と過ごすことのできる山ほどの時間を貰えたんだ。まるで背中にのしかかってた大きな岩がふっとなくなった、そんな感じだった。

Finic
Finic トップページ

この後、彼がFinicというスタートアップを仲間たちと立ち上げるまでにどういうリカバリをしたのかについてはちょっとぐっとくるものがありますが、そちらはぜひ原文で。

最後に彼は今回の経験を10の項目にまとめています。こちらもぜひチェックしてもらいたいのですが、個人的にはやはりこの項目かなと。

4. Never lie to myself or others and treat others like you want to be treated.
絶対に自分自身や他人に嘘はつかない。他人は自分がそうされたいと思うように接すること。

​I told myself that “success was right around the corner” too many times as I overlooked the real problems I had to deal with. I came very close to bankrupting my company and letting my entire team of 100 people go without any severance or vacation pay.
向き合わなきゃいけない現実問題から逃げたくて、何度も何度も「成功はもう目前だって」自分に言い聞かせたんだ。(でも実際は)会社は破産寸前だったし、チーム全部で100人もの人を退職金も有給消化もなしにいかせてしまった。

If I had done that I don’t think I could continue working and living with the same peace of mind as I have now.
もし自分がそうされたら、今の自分の気持ちのままで働きながら生活するなんてことは考えないよね。

スタートアップの創業者と従業員の間には様々な問題が発生します。日々やることが変わるのが創業期ですから、ある意味でお互いの信頼関係だけが頼り、という場面もまま出てきます。

あと、創業者のスペックよりも高いものを持った人たちが集まりますから、リーダーは相当に頑張らないとあっという間にそっぽ向かれるというのもあるあるです。

なので、Rizhkov氏が言うところの誠実さ、特に創業期については「社長と社員」のような形式的なものではなく、一人の仕事人としてお互い接することが大切だとつくづく思います。

via THE NEXT WEB

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