Kickstarterは開始10日で70%達成ーー京都発、世界への窓「Atmoph Window」が変える室内時間のあり方

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窓の向こうに美しい景色が広がる「Atmoph Window」
窓の向こうに美しい景色が広がる「Atmoph Window」

それが自宅でもオフィスでも、窓を開けると目の前に素晴らしい景色が広がっている。なんて、贅沢な環境に恵まれている人がどれだけいるでしょうか。特に東京など都心部ではそもそも窓自体が少なかったり、窓を開けて見えるのは隣のビルの壁で窮屈に感じるだけなんてことが珍しくありません。

Kickstarterのプロジェクトは開始10日で約70%を達成

Kickstarterのプロジェクトが進行中の「Atmoph Window」
「Atmoph Window」のKickstarterプロジェクト

そんな閉鎖的な空間に素敵な景色で開放感をもたらしてくれるのが、スマートな窓「Atmoph Window(アトモフ・ウィンドウ)」です。現在、Kickstarterでプロジェクトが進行中。京都を拠点とするアトモフのチームにお話を伺いました。

ナチュラルな木目調の窓枠に流れるのは、4Kで撮影された美しい映像とサウンドです。京都、ニュージーランド、パリ、ニューヨーク。各地でプロのカメラマンの手によって撮影された200本以上(来年3月の正式ローンチ時点)の映像を、スマートフォンで選択するだけで楽しめます。またAtmoph WindowはAppleウォッチから操作することも可能です。

Kickstarterのプロジェクトは、開始から10日間で目標額10万ドルの67%を達成。バッカーの3分の1が日本からで、その他で多いのはアメリカやカナダなど。ヨーロッパからのバッカーも多く、特にドイツからはアクセスも購入も多いと言います。

「意外なことに、家の外に出ればきっと美しい景色があるのでは?と思うハワイの方なども購入してくださっています。そんな方も、例えばニューヨークの夜景が見たかったり、単純に景色のいい悪いではなく、デジタルな窓で世界中の風景に繫がることができるんです」(姜)

京都から手掛ける10年越しのプロジェクト

中野さん(左)、姜さん(中央)、垂井さん(右)
中野さん(左)、姜さん(中央)、垂井さん(右)

姜京日(かん・きょうひ)さんが、アトモフを創業するに至った発端は10年前にさかのぼります。当時、ロサンゼルスのUSC(南カリフォルニア大学)でロボットの勉強をしていた姜さん。小さな研究室からは隣のビルしか見えず、勉強しながらストレスが溜まる一方でした。空間にある窓の有無が人に大きな影響を与えることを実感した経験が頭の片隅に残り、何とかしたいと考えるように。10年越しで実現したのが、Atmoph Windowです。

アトモフは、現在は姜さんを含む3名から成るチーム。デザイナーは姜さんの奥さんでもある垂井洋子さん。ソフトウェア開発の責任者は、中野恭兵さん。姜さんと中野さんは二人とも前職が任天堂で、当時から同じチームで隣り合わせに仕事をしていました。

「姜さんが一足先に任天堂を辞めて、また一緒に仕事をしたいなと思っていました。僕はこれまでYahooやmixi、任天堂と勤める中で人間と情報の適切な距離感について問題意識を持って取り組んできました。姜さんにAtmoph Windowのプロトタイプを見せてもらって、正しいコンセプトだなと直感で感じてジョインすることになったんです」(中野)

「僕も中野も、任天堂に転職して京都に移り住みました。アトモフを立ち上げる際に拠点をどこにするかは考えたんですが、お互い既に京都にいましたし、京都には自然や庭など素晴らしい風景がそこら辺に散らばっています。アトモフが掲げる「時間のクオリティーを上げる」という概念に通ずるところもあると考え、京都で活動することにしました」(姜)

「窓」という形だからこその最適な距離感

Atmoph-Window-alarm-clock
目覚ましとしても機能

自然とテクノロジーの新しい繫がり方を考え、室内における時間の質をより良くする目的で開発されたAtmoph Window。映像をテレビで映してみたり、プロジェクターを使ったり、ヘッドマウントディスプレイやタブレット、またiPhoneを壁に立てかけてみるなどさまざまな形を模索しました。

「僕もゲーム好きなので、ヘッドマウントディスプレイは没入感もあって良いなと思ったんですが、つけていないと閉鎖感が戻ってしまう。やはり一定の大きさがないと部屋に開放感がもたらされないため、タブレットなどでは小さ過ぎる。最終的に、部屋にずっとあっても違和感がない窓という形にたどり着きました」(姜)

Atmoph Windowは、時間や天気、その日の予定を表示する機能も。また目覚まし時計を使えば、森林の映像を背景に鳥のさえずりで目覚めるなんてことも可能です。こうした日々使う機能があるのは便利な一方で、「リラックス」や「開放感」の提供を目指すAtmoph Windowのコンセプトには相反してしまうような気もします。

「窓がただそこにあって、ちらっと目を向けると時間や天気が把握できる。それくらいの距離感が良いだろうと考えています。朝は鳥のさえずりで目を覚まして、一日の予定を確認したら窓に手をかざすことでそれがふっと消える。Atmoph Windowでは、皆さんの部屋にあるだろうカレンダーや目覚ましといったものだけに限って表示ができるようになっています。人とテクノロジーの適切な距離感は絶えず意識していますね」(中野)

目指すのは映像コンテンツのプラットフォーム

Atmoph Windowのコンテンツ例
Atmoph Windowのコンテンツ例

Atmoph Windowの価格帯は、399ドル〜。ただこのアーリーバード限定の価格帯は既に完売しているため、現在は499ドルから入手することがてきます。Kickstarterのプロジェクトの平均的な価格帯からすると若干高いかなという印象ですが、将来的にはより手の届きやすい価格帯を実現していく予定だと言います。

「Atmoph Windowを支援してくださる皆さんは、ガジェットというよりインテリアとして捉えてくださっているようです。27インチという大きさを目の前にすると迫力もあり、空間に確実に開放感が生まれます」(中野)

本体の価格帯については、今後よりリーズナブルになることが期待できそうです。というのも、Atmoph Windowはハードウェアではなく、映像のプラットフォームとして勝負することを目指しているから。映像は10本がプリインストールで、残りは200本以上のラインナップからダウンロードする仕組み。映画のDVDをレンタルするような感覚で、1本辺り5ドル〜10ドルで販売する予定です。

これらの映像に関しては、Atmoph Window専用のものを独自に制作しています。窓から世界が見えるというAtmoph Windowのようなプロダクトはこれまで存在せず、そのため「窓のための映像」も存在しないからです。窓から覗いた時にうつくしく自然な構図の景色が次々に撮り溜められています。

ライブストリーミングで、ここではないどこかへ

Atmoph Windowのライブストリーミング
Atmoph Windowのライブストリーミング

アトモフではまた、映像のライブストリーミングというオプションも用意しています。まるでドラえもんの「どこでもドア」のように、窓の向こうにニューヨークのタイムズ・スクウェアやハワイの浜辺などのリアルタイムな映像が流れるというもの。

「今、起きていることって一番面白いと思うんです。変な人が歩いているとかその時々でハプニングがあるかもしれませんが、リアルタイムだからこその臨場感を提供したいです。京都の庭からパリの都市まで、様々な場所に自然と入り込める世界観を作りたいです」(姜)

27インチのAtmoph Windowは一つで使っても良し、また3つの窓を繋げていっそうダイナミックに楽しむこともできるそう。実際、海外のショップなどが、店舗のインテリアとして取り入れるために購入したりしています。今後、ディスプレイ自体がポスターのような薄さに進化すれば、壁一面をニューヨークの夜景にするなど楽しみ方がさらに広がっていくはず。

「人が映画を見たりゲームをしたりするのは、こことは違う場所に行きたいという本能的な願望があるからだと思っています。一方で、私たちの生活ではひと昔前はなかった家でワインを飲む文化が生まれるなど、家の中で過ごす時間が徐々に増えています。アトモフでは、そんな友人や家族と過ごす時間をさらに良くしていくことに取り組んでいきます」(姜)

Atmoph Windowの紹介動画はこちらをご覧ください。

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