Alibaba(阿里巴巴)の香港サウス・チャイナ・モーニング・ポスト紙買収で生じる新たな問題

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Alibaba(阿里巴巴)が、香港の South China Morning Post(南華早報、以下 SCMP と略す)を2億6,600万米ドルで買収したニュースが大きな注目を集めている。もちろん、Alibaba がメディアへ進出するのはこれが初めてではないが、この進出はいろいろな意味で同社が初めて政界へ進出したことを意味する。月曜日に私が書いた Disconnect コラムで、PRの面から見てこの買収がひどいものである理由について書いたが、今回の買収でおそらく Alibaba の思惑通りには行かないと思われるのには別の理由がある。

今回の買収に関する公式発表後、New York Times が Joe Tsai 氏(Alibaba においてJack Ma 氏の右腕と言われる)にインタビューを行い、Alibaba の代表者らは、同社が SCMP を買収した目的は、中国に関する報道をより広く広め、同時に、中国の印象を良くするメッセージを発信するためだと強く主張した。Alibabaはこの買収によって中国に対する欧米メディアによる「一社の主張」(Jack Ma=馬雲氏の右腕 Joe Tsai 氏はこう呼ぶ)しかない状態を変えられる可能性があると見ている。言い換えると、欧米メディアが中国に対して批判的な傾向があるということである。Alibabaは、明るい面を打ち出し、欧米における中国のイメージを向上させたい(そして、同社自体のイメージも)と考えている。

残念ながら、これはうまく行かないだろう。なぜなら、良いニュースは欧米では売れないからだ。

悪いニュースの方が売れる

中国のことになると、欧米メディアが非常に批判的なのは否定できない。多くの中国人が欧米メディアの報道と中国国内誌の報道を読み比べ、欧米メディアが中国に批判的であるという結論に至る。しかし、この偏りは、いささか大げさに表現されすぎている。欧米メディアが中国に批判的なのは、欧米メディア自体が何に対しても批判的だからなのである。悪いニュースは売れるが、良いニュースは売れないのだ。「悪いニュースの方が売れる」という言葉があることからもそれがわかる。

これを例証するために、一般向けの欧米ニュースウェブサイトでいくつかの記事を見て、中国に対する報道と米国への報道を比較してみた。どちらのウェブサイトでも、コンテンツを私の主観で、「肯定的」、「中立」、「否定的」に分類してみた。例えば、汚職した中国高官の妻が服役を宣告された記事などは、明らかに否定的なものである。科学者が新しい恐竜を発見した記事などは、中立である。そして、何かがうまく行くことを示すような記事は、肯定的に分類される。

分類が私の主観に基づいているため、この方法は、非常に非科学的であり、ウェブサイト上で「アメリカ」、「中国」とはっきり分類されている訳でないので直接的に比較するのは必ずしも簡単ではないことは認めるが、これらの補足説明として、私が直近の中国と米国関連のニュースを7つの大手メディアサイト上を見てわかったことを以下に記しておく。

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中国に対する報道に否定的かどうかを表すグラフ(12月15日時点で各サイトに公開されていた記事の本数ベース)
左から:中国に批判的、アメリカに批判的、中国に中立的、アメリカに中立的、中国に肯定的、アメリカに肯定的

さて、サンプルとして扱うものは少しである上に、いくらか私の主観が混じった分類であるため、疑念の余地をもって見ていく必要があるのは明らかだ。実際に長期の科学研究が行われてその結果を見ることができたらと強く思うが、私の所見の結果では、中国に対して特に深刻なほど意見が偏ってはいないと思われる。ただし、概して、否定の方向に偏っているようには思える。

ところで、話半分に聞いてほしいが、どれでもいいので、大手の欧米メディアソースの第一面を見てほしい。そうすると、報道されている国に関わらず、多くの死、破壊、大虐殺、恐怖、抑圧などのニュースが並んでいるのを見る可能性が高い。残念かもしれないが、このようなニュースの方がクリック数を稼ぐのである。従来の新聞産業はなくなってしまい、メディアソースは、読み手の嗜好を無視できなくなってしまったのだ。

しかし、中国の場合はこれが当てはまらない。China Daily(中国日報)Caixin(財新)のような独立系メディアなどにも目を通すと、欧米のニュースウェブサイトで通常特集されるのよりもはるかに多い良いニュースや中立的なニュースを見ることになる。この違いが、中国の読み手と欧米の読み手の間にある広い文化的隔たりを示すのか、または、単に中国がメディア環境を厳しく取り締まっていることを反映しているのかどうかは私にはわからない。しかし、どちらにしても、これは大きな差異だ。China Daily や Caixin の第一面を毎日読んでいると、中国に対する欧米メディアの報道が偏っているように思えるのもうなずけるのである。良いニュースの報道はどこへ行ってしまったのだろうか。

答えは、もちろん、どこにもない。しかし、これは欧米のジャーナリストが中国を嫌っているからではなく、彼らが一般的に言って、欧米の読み手が良いニュースに関心がなく、欧米人に直接影響を与えない中国の良いニュースには特に関心がないのを知っているからである。

良いニュースのための悪いニュース

これらが意味するのは、Alibaba が SCMP を中国に関する良いニュースを発信するグローバルなメディアへ転換しようとしているのなら、非常に大変な闘いに直面するということだ。欧米の読み手は、肯定的なニュースに興味がないだけではない(たとえ興味があると口で言ったとしても実際はない)。雑誌 New Yorker のリポーターであり Age of Ambition の著者、Evan Osnos 氏がTwitterに以下のように書いている。

私は、Alibaba が英語圏の読み手が反否定的なニュースを信頼すると考える根拠が、正直言ってわかりません。(中略)例えば、医師が私に『否定的な』ことは言わないと約束したら、彼を雇いますか。会計士、犬の散歩屋についても同じことが言えます。これは、読み手を侮辱する行為です。愛国主義的な読み手さえも侮辱する行為です。

言うまでもなく、Alibaba はもっと難しい課題に直面することになる。これは、SCMP が香港や古くからの中国の専門家団体以外には事実上知られていないということからも明らかだ。SCMPは、現在、10万部の発行部数を誇っているが、China Daily や Global Times などの政府の英語プロパガンダ誌と比べて、中国国外ではあまり知られていないと思われる。内容に関わらず、多くの人が SCMP に載っていることを気にするとは考えにくい。

SCMP が(例えば)Alibaba が情報を持つ注目度の高い情報を検閲し、誤った情報を伝えた場合には、このこときに気づき気にする人が出てくるだろうと、月曜日(12月14日)に私は主張した。しかし、これは、「Alibaba」や「検閲」などの言葉を含む見出しが山ほどのクリック数を呼び込むからだけなのである。SCMP が中国に関する肯定的で物議を醸さないようなニュース記事を載せても、中国国外の人は、誰も気にかけず、また気付くことさえないだろう。

結論として、Alibaba は解決できない逆説に直面すると思う。SCMP が肯定的なら、欧米に影響力を持つことができない。しかし、SCMP が否定的になり、読み手獲得のために欧米メディアに対抗した場合は、Alibaba の目指す中国の良い面をアピールするという目標が達成できない可能性があるのだ。

私は、Jack Ma 氏、そして Alibab aが SCMP をわずか2億6,600万米ドルで買収できたのは良い買い物だと思う。

【via Tech in Asia】 @TechinAsia

【原文】

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