「HEART CATCH」参加チームが、プロによるメンタリングのBEFORE/AFTERを一挙披露 #HC2015_JP

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本稿は、HEART CATCH 2015 の取材の一部だ。

とかくいい技術やチームを持っていても、UX やマーケティングの力が足りず、プロダクトやサービスに課題を抱えるスタートアップは少なくない。この分野のスペシャリストの力を借り、2ヶ月間 のメンタリングを経てプロダクトをブラッシュアップするプログラム「HEART CATCH」の第1回イベントでは、このプログラムに参加したスタートアップ5社が披露された。

参加チームは、メンタリング実施の BEFORE と AFTER を比較してどのように変化したかをプレゼンテーションで示し、メンターらとその経緯を振り返った。彼らのプログラムでの奮闘ぶりと成果について、簡単にまとめてみた(登壇スタートアップ5社のうち、HOTARU は現時点でステルスモードであるため本稿では省略)。

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マナボ 執行役員CFO 角田耕一氏

mana.bo は、スマートデバイスで家庭教師の個別指導が受けられるサービス。プラットフォームを通じて、生徒が質問をし、教師はそれに答えるという形をとることにより、座学的な一方通行の学習方法よりも、より理解を深められることを特徴にあげている。したがって、ユーザである学生が、このプラットフォームで、どれだけ質問をしてくれるかということが重要だ。

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mana.bo はメンタリングを通じて、ユーザがどのようなターゲットで、彼らにどういうメッセージを送るべきかを再定義した。このサービスを使うのは学生であるが、料金を支払うのは学生の母親だ。学生には使いやすいインターフェースを、そして、その母親には、一か八かの賭けにはならない安心して使えるサービスであることを訴求する必要があった。

1年後、3年後、5年後に、mana.bo はどのようなサービスであるべきか、B2B と B2C でそれぞれどのようなサービスを提供すべきか、ユーザがどの程度コンバージョンすべきかを定義し、そこからブレイクダウンして UI 改善に生かした。その結果、mana.bo のKPI の一つである、ユーザがトライアルを始めて最初の質問するまでの確率が25%から64%と2.5倍に向上、一度、質問がなされると、それが2つ目3つ目と次の質問につながるので、ユーザのコンバージョンに大きく貢献した。

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<担当メンター>

  • 彌野泰弘氏(Bloom & Co. 代表取締役)
  • 深津貴之氏(THE GUILD インタクティブデザイナー)

Sommnie by Neurospace

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ニューロスペース代表の小林孝徳氏

Neurospace は、睡眠にフォーカスするスタートアップだ。健康維持においては、食事・運動・睡眠が重要であり、食事と運動については、それぞれ、管理栄養士やジムのスポーツインストラクターなどのアドバイザーがいるが、睡眠については、そのような専門職が存在しない。さらに言えば、食事量や運動量を容易に計測する方法が確立しているが、睡眠量(睡眠の長さと深さ)を正確に計測するには脳波計を利用するしかない。

Neurospace は脳波計の技術を有しており、つくば大学と共同開発で個人でも簡単にできる脳波計を開発、さらに、その脳波計のデータをスマートフォンやクラウドに記録することにより、睡眠薬に依存しない生活習慣を見直すことで睡眠を改善するサービスの開発に着手した。

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当初は、Neurospace は B2B においては運転手を抱えるタクシー会社など、B2C においては睡眠のパフォーマンスを重視するアスリートなどに需要があると考えていた。しかし、HEART CATCH プログラムでのヒアリングを通じて、B2B では IT 企業など仕事がハードで従業員に睡眠の問題の起きやすい業種、外食産業というだけでブラックなイメージを持たれやすい企業の従業員満足度の向上に役立つこと、また、B2C では、企業でリーダーやマネージャーなど責任のあるポジションに就く30代前後の女性がに高い需要が見出せる可能性があることがわかった。

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この調査結果をもとに、身につけてもストレスの無いウエアラブルデバイスとするため、脳波計を装着したウエアラブルデバイス(ナイトキャップ)のプロトタイプの開発に成功した。今後、B2B 向けには従業員の悩みを聞き、睡眠パターンを分析し、生活習慣の改善を手助けできるオンライン・サポートツールを提供する計画。また、B2C 向けには、ナイトキャップの供給体制が確立でき次第、サービスを始めるとのことだ。

<担当メンター>

  • 前原双葉氏(TBWA\HAKUHODO\QUANTUM Quantum Makers 責任者)
  • 原田朋氏(TBWA\HAKUHODO\QUANTUM グループクリエイティブディレクター)
  • 内間ローザ氏(TBWA\HAKUHODO\QUANTUM プロダクトデザイナー)
  • 竹中野歩氏(TBWA\HAKUHODO\QUANTUM マーケティング)

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D Free by Triple W Japan

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トリプル・ダブリュー・ジャパン代表の中西敦士氏

今年、ReadyFor でのクラウドファンディングを成功裏に終わらせ、来年から排泄予知ウエアラブルデバイス「D Free」の出荷を始める Triple W Japan。このデバイスにはさまざまな可能性にあふれているため、まず何から手をつけていいのかわからなかったと語る代表の中西氏。

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彼らは3つの課題を整理するところから始めた。 1. 価格バリア、2. 装着感、3. ユースケースについてだ。

ある調査によれば、在宅介護を要する人やアクティブシニアのうち 62.5% は排泄に苦労を経験しており、彼らにとっては、現在約2万円の売り切りで考えている販売形態については、購入の大きな妨げにはならないだろうと予想。今後は月額課金など、さまざまな販売形態が考えてゆくとした。

装着感については、マーケティング上の根幹で D Free にとっては重要な UX であるが、在宅介護を要する人やアクティブシニアにとっては、現在の形態であれば大きな問題にはならないのではないか、と分析。むしろ、美容、健康、スポーツの分野にも進出すべく、装着することがカッコイイとユーザに感じてもらえるようなクールデザインが必要だと考えた。

ユースケースだが、アクティブシニアに加えて、前出の美容、健康、スポーツへの進出にあわせて、想定されるペルソナは、身体の外だけではなく内側から美しくなろうとする女性たち。便秘などの疾患を抱える女性が多いと言われる中、下剤やサプリメントに頼らず、自然な方法で健康的な排泄習慣を可能にするため、D Free を使った腸のトレーニングといった提案が可能ではないか、との結論に至った。

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D Free は可能性が多岐にわたるプロダクトであるがゆえに、誰をどのように幸せにするかを考えることで、コンテキストが明確になってくるというのがメンターらからのコメント。中西氏は、HEART CATCH プログラムでの経験を通じて、デザインやマーケティングが経営に重要な役割を持つことを実感したと語っていた。

<担当メンター>

  • 江端浩人氏(IMJ CMO/事業構想大学院大学教授/World Marketing Summit アンバサダー)
  • 本村美絵氏(THE GUILD/SLEEPYTIGER)
  • 奥田透也氏(ALUMICAN.NET/IROZA/多摩美術大学非常勤講師 デザイナー/プログラマー)

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Quiver

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Quiver プロデューサーの Jessop Petroski 氏

THE BRIDGE が初めて、このニュージーランドのスタートアップのことを取り上げたのは、2013年秋の B Dash Camp でのことだ。最もユーザの多かった日本に拠点を移し、国際イベントやメディアでの露出を通じて評価を獲得してきた。ニュージーランド出身である彼らにとって、日本市場へのマーケットフィットは常に関心事であり、今回の HEART CATCH プログラムへの参加を通じて、ユーザの声を聞き、プロダクトをさらに進化させたようだ。

Quiver(以前の名前は、colAR)は、紙の上に塗り絵をし、それをモバイルアプリで撮影することで、三次元アニメーション化できるようにするAR(拡張現実)。このアイデアをさらに発展させ、形のある物体にマーカーをつけることで、三次元アニメと現実を合成して楽しむことができるようにした。さらに、ビジネスモデルの一例として、B2B では、例えば航空機に搭乗した子供を退屈させないために、航空会社と提携して、搭乗券と連携した機能や機内でのモバイルアプリを使った子供向けサービスなどが可能性のあるユースケースとして紹介された。

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写真で撮影した平面のスケッチを認識し、それを立体アニメ化する過程は、Quiver の持つ高度なコアテクノロジー。前出の D Free と同じく、テクノロジーがあるからこそ応用範囲の可能性が多岐にわたるので、誰に対してどのような UX を提供するかを明確にする必要がある。子供向けのみならず、大人向けにも Quiver は応用範囲が広がりそうだが、ユースケースについてはまだ深掘りしてみる余地がありそうだ。

<担当メンター>

  • 竹中野歩氏(TBWA\HAKUHODO\QUANTUM マーケティング)
  • Niya Sherif 氏(インタラクティブデザイナー)

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