ハードウェアは、もはやそれほど「ハード」じゃない

本稿はフィンランドのスタートアップメディア「ArcticStartup」の許諾を得て、翻訳転載しています。

via Flickr by “A Health Blog“. Licensed under CC BY-SA 2.0.
via Flickr by “Luke Jones“. Licensed under CC BY-SA 2.0.

本投稿の著者は、主にアーリーステージのスタートアップ開発、ベンチャーファンド管理を行うButterfly Ventures のパートナー Ville Heikkinen氏である。Heikkinen氏はフィンランドのスタートアップエコシステムの第一線にいる。

・・・

ハードウェアはデジタルサービス、新しいビジネスモデル、そしてリアルな世界のデジタルエコシステムとプラットフォームの実現を手助けするものだ。大手テック企業はハードウェア企業を買収してきたし、今のユニコーンの多くはハードウェアに重きを置いている。もしくは、考えてみてほしい。Square、iZettle、GoPro、Beats、Oculus、Fitbit、Nest、Dropcamという企業名を聞いたとき、どんな印象を抱くだろうか。

ソフトウェア開発は、オープンソースとクラウドを通じて簡単になった。ハードウェアも同様の道を辿ろうとしている。製造や配送がアウトソーシングできるようになったこと、その場で修理がすぐにできるようになったことなどが理由だ。Y Combinator のサム・アルトマンが述べたように「ソフトウェアを成功に導いた原因のすべてが、今やハードウェアで起きようとしている。非常に多くのことがすぐにでき、迅速にプロトタイプも作れ、そしてコストはとても低い。」

ハードウェアの開発、製造、配送にかかるコストはどんどん低くなっており、コモディティ化するケースもある一方で、ハードウェアはすべての事業が必要とする、究極的な価値を伝えるもの、そしてユーザーインターフェイスである。実現力をもつハードウェアと価値が増したソフトウェアという組み合わせは、顧客に対して付加価値を提供し、顧客を維持でき、事業全体のエコシステムを長く継続させ、成長させることができる可能性をもっている。

IoT、ウェアラブル、AR/VRは、ハードウェアと共に、近い将来マーケットを支配するだろう。その市場価値は、数千億ドル規模とも予測される。さらに、もっとも従来型の業界にさえデジタル化は普及し、こうした事業の機会を実現するためにハードウェアが求められている。

ボストンのBolt、エストニアのBuilditといったハードウェアに注力するアクセラレータや、全アクセラレータの母のような存在であるシリコンバレーのY Combinatorは、新しいハードウェアスタートアップの設立をより容易にしてくれている。また、熱心なベンチャーキャピタリストもまたハードエア事業に参入し、ハードウェアスタートアップに対するベンチャーキャピタルの投資も一般的な業界と比較すれば、成長速度が増している。

ハードウェアスタートアップは、モバイルやインターネットスタートアップに比べればエグジットの評価額は2.2倍であり、昨今の大きな資金調達の10のうち5はハードウェアであるものの、それでもその市場はまだ小さく、ベンチャーキャピタル投資の10パーセント以下を占めているにすぎない。

フィンランドでは、ノキア時代に成長したエコシステムと、そして今や様々な場所に分散しているハードウェア開発と製造の能力は、すばらしいハードウェア企業を立ち上げる完璧なプラットフォームを提供している。新たなSNSやモバイルゲーム企業について考える代わりに、市場に変化をもたらすような、皆があっと驚くハードウェア企業に私たちと投資してみてはどうだろうか。

【原文】

Members

BRIDGEの会員制度「Members」に登録いただくと無料で会員限定の記事が毎月10本までお読みいただけます。また、有料の「Members Plus」の方は記事が全て読めるほか、BRIDGE HOT 100などのコンテンツや会員限定のオンラインイベントにご参加いただけます。
無料で登録する