本稿はフィンランドのスタートアップメディア「ArcticStartup」の許諾を得て、翻訳転載しています。

本投稿の著者は、主にアーリーステージのスタートアップ開発、ベンチャーファンド管理を行うButterfly Ventures のパートナー Ville Heikkinen氏である。Heikkinen氏はフィンランドのスタートアップエコシステムの第一線にいる。
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ハードウェアはデジタルサービス、新しいビジネスモデル、そしてリアルな世界のデジタルエコシステムとプラットフォームの実現を手助けするものだ。大手テック企業はハードウェア企業を買収してきたし、今のユニコーンの多くはハードウェアに重きを置いている。もしくは、考えてみてほしい。Square、iZettle、GoPro、Beats、Oculus、Fitbit、Nest、Dropcamという企業名を聞いたとき、どんな印象を抱くだろうか。
ソフトウェア開発は、オープンソースとクラウドを通じて簡単になった。ハードウェアも同様の道を辿ろうとしている。製造や配送がアウトソーシングできるようになったこと、その場で修理がすぐにできるようになったことなどが理由だ。Y Combinator のサム・アルトマンが述べたように「ソフトウェアを成功に導いた原因のすべてが、今やハードウェアで起きようとしている。非常に多くのことがすぐにでき、迅速にプロトタイプも作れ、そしてコストはとても低い。」
ハードウェアの開発、製造、配送にかかるコストはどんどん低くなっており、コモディティ化するケースもある一方で、ハードウェアはすべての事業が必要とする、究極的な価値を伝えるもの、そしてユーザーインターフェイスである。実現力をもつハードウェアと価値が増したソフトウェアという組み合わせは、顧客に対して付加価値を提供し、顧客を維持でき、事業全体のエコシステムを長く継続させ、成長させることができる可能性をもっている。
IoT、ウェアラブル、AR/VRは、ハードウェアと共に、近い将来マーケットを支配するだろう。その市場価値は、数千億ドル規模とも予測される。さらに、もっとも従来型の業界にさえデジタル化は普及し、こうした事業の機会を実現するためにハードウェアが求められている。
ボストンのBolt、エストニアのBuilditといったハードウェアに注力するアクセラレータや、全アクセラレータの母のような存在であるシリコンバレーのY Combinatorは、新しいハードウェアスタートアップの設立をより容易にしてくれている。また、熱心なベンチャーキャピタリストもまたハードエア事業に参入し、ハードウェアスタートアップに対するベンチャーキャピタルの投資も一般的な業界と比較すれば、成長速度が増している。
ハードウェアスタートアップは、モバイルやインターネットスタートアップに比べればエグジットの評価額は2.2倍であり、昨今の大きな資金調達の10のうち5はハードウェアであるものの、それでもその市場はまだ小さく、ベンチャーキャピタル投資の10パーセント以下を占めているにすぎない。
フィンランドでは、ノキア時代に成長したエコシステムと、そして今や様々な場所に分散しているハードウェア開発と製造の能力は、すばらしいハードウェア企業を立ち上げる完璧なプラットフォームを提供している。新たなSNSやモバイルゲーム企業について考える代わりに、市場に変化をもたらすような、皆があっと驚くハードウェア企業に私たちと投資してみてはどうだろうか。
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