福岡で開催中の招待制カンファレンス、「B Dash Camp 2016 Spring in Fukuoka」の会場にやってきている。
本稿は最初のセッションの続き。チームづくりの次に話題となったのは事業の始め方だ。創業者は何を思って事業を始めるのだろうか。(登壇者はウェルスナビ代表取締役の柴山和久氏、ソラコム代表取締役の玉川憲氏、ユーザベース代表取締役共同経営者の梅田優祐氏、モデレーターはグリー代表取締役会長兼社長の田中良和氏)
昨今の「フィンテック」ブームによって追い風を感じることになったウェルスナビの柴山氏は、まだこのバズワードが生まれる前に創業を決意している。
<参考記事>
「まずは自分が使いたいサービスを作ろう、ということが発端です。ビジネスモデルは(コンサルタント時代の)三、四年前にシカゴのクライアント向けにつくったこともありましたし、自分が作れて自分が使いたいプロダクトをまずはリリースしようと。まだ若干ズレはありますが、世の中に出してから理想に近づけていこうと」(柴山氏)。
ただ、柴山氏のチャレンジはシステム的な課題だけでなく、行政やそもそもの日本の資産運用の文化など、超えなければならないハードルがいくらでもある分野だ。欲しいからとそう簡単にできるものではない。当の柴山氏も話を聞けばここまでの短い期間でえらく苦労を重ねたようだ。
「サービスリリースの直後に勢いが止まったことがあったんです。リリースのサイクルが伸びて、スピードが落ちました」(柴山氏)。
ここで柴山氏ら、創業のメンバーが取り組んだのが会社がどうあるべきか、というミッションやビジョンの再考だった。
「金融機関としての生命維持業務はやっておいて、3日半開発などの業務を一切止めて話し合いました。最終日は朝の3時まで話し合ったんです」(柴山氏)。
議論の途中までは、前の会社ではこういうビジョンだった、こういうミッションだったという話題がどうしても出てしまう。しかし折角自分たちで会社作ったのだからと、自分たちの言葉を作ることになる。ユーザベースの梅田氏も同様の経験を振り返る。
「私自身、創業して学んだのはミッションやビジョンの大切さです。以前はキナ臭い、綺麗ごとだと思ってた時期もありました。背中を見てついて来い、的な考え方ですね」(梅田氏)。
しかし、ユーザベースが30人を超えた頃に内部崩壊が起こる。
「僕の考え方は分かってるだろう、ということでニュース事業をやりたいと言った時、梅田は方向性を見失ってるって言われたんです。こちらは伝わってると思ってたのにコミュニケーションギャップがあった」(梅田氏)。
ミッションやビジョンのない会社では、未来を語っていたはずの会社のメンバーが徐々にチームの悪口やマネジメントの愚痴を言うようになる。そしてこんな状況を変えたのも、とある社員がきっかけだったという。
「女性社員に子供が出来たんです。それで電話で明日から休みたいというので、それを許可して次の日に会社に伝えたら、なぜ休ませるのか?前の会社ではそういうことはなかったと言われたんですね。それってそれぞれの価値観をぶつけただけで、ユーザベースの価値観ってなかったと気がついたんです」(梅田氏)。
梅田氏もやはり柴山氏と同様に、ここをきっかけに会社としての価値観を作る作業に入る。
「本気でやったのが重要でした。過去を振り返ってみんなはどういう価値観を大切にしてきたのか。言葉は大切で、ライターさんにも入ってもらって一番腹に落ちる言葉にしました」(梅田氏)。
全員で会社としてのミッションやビジョンについて話し合うタイミングというのは難しいが、柴山氏や梅田氏のように、こういうピンチをうまくチャンスに変えるという経験は勉強になった。
また、改めて事業は立ち上げではなく、その次の一手が重要であることも理解したいエピソードではないだろうか。
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