アプリメーカーよ、中毒ユーザーからの搾取をやめて倫理的になるべき時だ

by VentureBeat ゲストライター VentureBeat ゲストライター on 2016.4.12

Felice Miller Gabriel氏は、Delwの設立者である。

 via Flickr by “A Health Blog“. Licensed under CC BY-SA 2.0.
via Flickr by “40+242 Work“. Licensed under CC BY-SA 2.0.

モバイル業界の起業家として、私たちは自分の作る製品で世界をより良くしたいと願っている。そして基本的に、スマートフォンやモバイルアプリは人々をつなぎ、力を与えてくれるものだと信じている。しかし、自らを深く鑑みて、世に送り出している製品やサービスが実際のところ、社会に貢献しているのか、社会悪になっているのかを自問自答することはほとんどない。

不幸な真実として、一部のアプリには中毒性がある。人によっては「習慣」と呼んでいるものは、実際には精神的に有害な行動である。このような行動には、社会的に大規模な悪影響を及ぼす可能性さえある。モバイルの乱用だとユーザーを責めるほうが都合良いかもしれないが、これらのアプリの中毒性は実際は理解されていないのではないかと私は思っている。

アリゾナ州立大学の情報システム工学教授であるSang Pil Han氏は2015年、韓国科学技術院(Korea Advanced Institute of Science and Technology、KAIST)と共同で、ソーシャルアプリと中毒性についての研究を行った。彼らは、韓国のスマートフォン利用者の間での、Facebookおよび韓国で人気のモバイルゲームAnipangの利用状況を調査した。その結果として、「中毒性という点では、(モバイルソーシャルアプリは)コカインやアルコールより強く依存度を助長しますが、カフェインやタバコよりは中毒性が低くなっています。」

食べ物やドラッグ、ギャンブルなど、適度に楽しむのが一番である趣味嗜好と同様に、一部のアプリはドーパミンを誘発する。自分の情報をソーシャルメディアに投稿したりゲームをプレイしたりすることで、神経伝達物質が放出され、それを過度に行うことで、人間には肉体的な変化すら起こってしまう。

具体的には、被験者13人のMRI画像を調査した文献によれば、インターネット依存症(Internet Addiction Disorder、IAD)と診断された人は、ドーパミン輸送体の不足という形で「脳の異常」を示していた。要は、彼らの脳はダメージを負っているということだ。ドラッグ中毒やギャンブル依存症の脳と似ているのである。

この調査に参加した精神医学研究者である医学士Sree Jadapalle氏は、アメリカの若者のおよそ26.3%がIAD患者だと推測しており、それは同年代のグループではアルコールやドラッグ依存症よりも高い数字である。彼女はまた、IADとうつ病、自殺志向、強迫性障害(Obsessive-Compulsive Disorder、OCD)、摂食障害、注意欠陥障害(Attention-Deficit Disorder、ADD)、その他の中毒症状に有意な相関があることを研究者が見出していることも指摘している。

IADは無害とは逆のものだ。Innovations in Clinical Practice誌(第17号)のある章で、Kimberly S. Young医師はIADが家庭、教育、職場に及ぼす影響を明るみにしている。IADは家族を崩壊させ、学業を台無しにし、労働者が解雇されてしまうような精神疾患である。しかし、Young医師が警鐘を鳴らしているように、「IADは歴史が浅く中毒性も真剣に捉えられていないため、専門家が自分の訴えを真剣に聞いてくれないのではと思い、治療の道を探るのをためらってしまいます。」

そう感じてしまうのを誰が責められるだろうか? サンディエゴ・スーパーコンピュータセンターの研究者James E. Short氏の見積もりでは、アメリカ人は2015年にのべ1兆7000億時間を従来のメディアおよびデジタルメディアに費やしたと考えられており、それは一人一日あたり、平均15.5時間である。それが普通だとしたら、習慣と乱用の区別をつけるのは、きわめて困難であろう。

モバイルデバイスは道具であり、善でも悪でもない。しかしモバイルデバイスはユビキタスであり、ユーザーは常時アクセス可能でそのときの行動が中断されてしまうため、この2つは危険な組み合わせである。そして一部のアプリは、多かれ少なかれ、中毒性を持っていることもわかっている。

モバイル分析企業であるMixpanelはAddictionというレポートを作成し、人々が一日にどれくらいの頻度でアプリを利用するかを調査した。このレポートでは(アプリ中毒がアプリメーカーにもたらす利益に基づいて、このトレンドを好意的に捉えているが)、中毒性の中でもソーシャルアプリが最も際立っていることを示唆している。

2014年に、50%のソーシャルメディアユーザーが最低でも一日5時間をソーシャルネットワーキングに費やしており、トップの20%は8時間にも上るとしている。また、一部のユーザーはソーシャルアプリを毎朝起きた直後にチェックしていた。メッセージングアプリはソーシャルに比べて中毒性は低く、メディアアプリは中毒性が最も低いとしている。

Mixpanelのレポートでは、「理想のカスタマーとは、貴社の製品に一日最低一度は触れてくれる人であり、継続して利用してくれるのであればなお良い」としている。そして確かに、これはテックコミュニティの間では定着した捉え方である。

しかし、常時モバイルアプリに入り浸ることが破滅的でないとしたら何なのだろう。そして、一部のユーザーに精神的、肉体的、社会的な破滅をもたらしながら、デベロッパーにお金が落ちてくるような仕組みを称賛するのは、ぞっとしないだろうか。

アプリに中毒性があるのは、偶然でなく意図的である。ユーザーエクスペリエンスの大家Nir Eyal氏の有名な著書、「Hooked: How to Build Habit-Forming Products」は、まさに中毒性を持たせる手法を開発者に示したことからベストセラーとなった。しかし、Eyal氏がこの「スーパーパワー(Eyal氏の命名)」を利用するときの道徳的ガイドラインも併せて示していたことを読者は忘れがちである。彼はブログにおいて「ただぼーっと立ったまま、自社製品を乱用してくれたユーザーの支払った代金を刈り取るようなやり方は、もう受け入れられません。それは搾取です」と書いている

まさにその通り。中毒性(および、それによる社会的損害)のチャンピオンとなるのでなく、ユーザーを守り、この脅威の解決に対して主導権を握るべきである。そのためには、まず「利用上限つきアプリ」と「利用無制限アプリ」の区別をつけなければならない。利用上限つきアプリは、軽度の習慣しか作らない。例えば毎日の瞑想とか、毎朝自分のTo-Doリストを見直すことなどと近い。これらが継続的に無制限の楽しみを誘発することはなく、ドーパミン褒賞システムを乱用することはない。

利用無制限アプリは、ユーザーに対して上限なしにできるだけ多くの時間利用してもらうよう働きかけるが、それにより中毒症状を広めたり助長してしまう可能性がある。そのようなアプリがあっても、道義的なデベロッパーであれば、以下の2つの効果的なやり方でユーザーを守ることができるだろう。

1. 利用無制限アプリは、頻繁にログインし、長時間アプリを利用するトップ20%のユーザーに、週ごとの利用状況レポートを送るべきである。

トップ20%に注意喚起することで、自覚を促し、中毒を回避することが可能になる。このレポートでは、ユーザーがa) 一日に何回ログインしたか、b) アプリ利用に一日何時間費やしたか、を示すべきである。

利用状況レポートはまた、「このeメールは、あなたが当アプリを一般ユーザーより著しく多く利用くださったために送られています。当社はこのアプリにあなたが熱中してくださることに心から感謝しておりますが、一方で、当社にはインターネットアプリが中毒症状を引き起こすことを注意喚起する責任がございます。もしあなたが、当アプリにより、キャリア、教育、人間関係、メンタル面での悪影響を感じておられる場合、専門家の助言を求められることをお勧めいたします」というような警告文も含んでいるべきである。

2. 利用無制限アプリには、自己管理ツールを含むべきである(そして、週ごとのレポートにはそのツールへのリンクを記載すべきだ)。

FreedomおよびAnti-Socialについて聞いたことがある人もいるだろう。前者は事前に決めた長さの時間だけインターネットアクセスをブロックし、後者は、特定のウェブサイト(多くはソーシャルネットワーキングサイト)へのアクセスをブロックする。利用無制限アプリも似たようなツールを提供し、ユーザーにa) 一日のログイン回数を制限し、b) 一日のアプリ利用時間を制限することを可能にすべきである。

当然このような疑問が出るだろう。中毒に陥ったユーザーが多額の利益をもたらし、エンゲージ指数をはねあげているのに、どこのデベロッパーがそんな対策を実際に導入するだろうか?

デベロッパーが自らの責任を果たすことを期待したい。しかし、そうでなければ、AppleとGoogleが、これらの対策をアプリストアへの登録の条件とすることができるだろう。彼らはデザインや機能に厳しいガイドラインを設けているのだから、中毒警告レポートや自己管理ツールの条件を課すことも可能なはずだ。

Appleは、iPhoneアンロック問題においてのFBIとの対立で、セキュリティとユーザーのプライバシーへのコミットメントを世に知らしめた。同社であれば、カスタマーのメンタルヘルスと健康にも同様に尽力していることを示したいのではないだろうか。

インターネットやモバイルアプリは寓話ではない。社会的影響を持ち、それは私たちの友人、家族、同僚にも及ぶ。バーは飲みすぎたお客さんを断ったりもする。私たちも同様、アプリを使いすぎたユーザーに責任を果たす必要がある。

【via VentureBeat】 @VentureBeat
【原文】

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